皆のその後…
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私がやってきたのは山南さんの家。
戸の前まで来たが家の中に人の気配を感じられず、桜は家の裏に周り微笑んだ。
家の裏で、山南は墓標に手を合わせていた。
大きなその墓標には、今まで共に戦いそして羅刹として散ってしまった皆の名前が刻まれていた。
これを作ったのは、山南さんだ。
誰よりも優しい彼は、自分たちの実験という名の罪で散ってしまった皆の名をしっかり記憶に刻み、ずっと生きてきた。
そして全てが終わった今、こうして墓標を作り、毎日手を合わせているのだ。
弔うために。
そんな山南の姿を眺めていると、こちらに気付いたようでゆっくり立ち上がった。
「これは桜君…どうしましたか?」
「私も手を合わせようと思って」
そうでしたか、と微笑む山南の隣に行くとその場にしゃがむ。
桜は墓標を撫でた後、手を合わせた。
皆が安らかに眠れますように、と。
手を合わせた後に立ちあがろうとすると、横からスッと手を差し出された。
見上げると優しく微笑む山南が手を差し伸べてくれていたのでありがたく手を掴み、立ち上がるのを手伝ってもらう。
「いつも手を合わせに来てくれてありがとうございます」
「お礼言われる事じゃない気がしますけど…私も、皆のことは忘れたくないし」
桜はそう言って墓標を見て微笑んだ。
「…桜君は、相変わらず優しいですね」
「…それ、山南さんが言います?私、山南さんほど優しくないと思いますよ」
桜がそう言うと、山南は目を丸くした。
「…私が、優しいですか?」
「優しくない人は、こうやって皆の為に手を合わせないですよ」
そう言ってにっこりと笑うと、山南も笑みを溢す。
「君にそう言われると、嬉しいものですね」
その柔らかい笑みに少し照れながら、桜は1つ息を吐くと山南の手を取った。
「あのね、山南さん。実は話があって来たの」
「話、ですか?」
「山南さん…私と夫婦になってもらえないですか。私…敬助さんとこの先一緒に生きていきたいんです」
意地悪なところもあるけれど、本当はとても優しい貴方に心惹かれていました。
桜からそう告げられ、山南は暫く固まっていた。
反応がないことに桜が不思議に思い「敬助さん…?」と尋ねると、ハッとした山南は繋がれていた手に視線を落とし、ぎゅっと握りしめた。
「すみません、少し思考が止まっていました」
「えっと…大丈夫ですか?」
「…ええ、大丈夫ですよ」
山南は微笑むと、ぐいっと桜を引き寄せ力強く抱きしめた。
「……君は、誰に対しても分け隔てなく優しくて、私の事など気にもかけていなかったかと思いました」
「そんなこと…ないですよ。そこそこ掻き乱されてました」
笑いながら顔を上げると、優しく微笑む山南と目があって頬が熱くなる。
「本当に私でいいのですか?」
「敬助さんがいいです」
そう答えると、顎を掴まれる。
「覚悟はいいですか?」
(こ、この台詞って…)
若干メタな思考に走りそうになったが、その考えは振り切って山南の首へと手を回す。
「出来てますよ」
そう答えると山南は笑い、そっと顔を近付けた。
目を閉じると唇が重なり、抱きしめられる力が強くなったのを感じる。
それに負けじと腕に力を入れてグイッと山南を引き寄せると、くすりと笑いながら唇が離れた。
「随分と情熱的ですね」
「敬助さんが、それ言います?」
そう言って笑い合うと、もう一度唇を重ねた。
(敬助さん、外ってわかってます?)
(…ええ、わかってますよ)
(ちょっと…長すぎです)
(桜に対する気持ちが溢れたと思ってください)
(…ここで名前呼びは卑怯!)