皆のその後…
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「一ちゃん」
「桜か…どうした?」
訪れたのは斎藤の家で、いつもと変わらず鍛練をしていた様子の斎藤に微笑む。
「ちょっと話したいことがあったんだけど…出直した方がいいかな?」
「いや、問題ない。して、話したいこととは?」
「うーん、中で話してもいいかな?」
汗を拭いながら問いかけてきた斎藤に、家を指さしながらそう伝えるとコクリと頷いた。
家の中に招かれ「茶を用意する」と言った斎藤の背中をじっと見る。
とても強く、土方からの信頼も厚く、武士の信念も貫き、一途で真摯な想いを持つ。
普段は感情をあまり表に出さず寡黙で真面目だが、ふとした時に天然なところを見せる可愛らしい一面もある。
そんな事を考えていてフッと笑うと、お茶を用意して近付いてきた斎藤が首を傾けた。
「どうした」
「ううん、なんでもないよ。お茶、ありがとうね」
出されたお茶を手に取って一口飲むと、その温かさにホッとする。
同じようにお茶を飲んでいた斎藤だが、こちらを見る視線にはどこか熱っぽさが含まれており、少し恥ずかしくなる。
(…本当に、こうだと決めたら一途な男だ)
その真っ直ぐな気持ちに、自分はいつしか惹かれていて、しっかりと返事をする為にここに来たのだ。
「……あのね、一さん」
「…!?あ、ああ…なんだ」
いつもと少し違う呼び方をすると、斎藤は動揺したのか湯呑みを落としそうになっていたが、何とか平常心を保ち湯呑みを置いた。
「ずっと、私に真っ直ぐに気持ちを伝えてくれて、ぶつけてくれて、ありがとう。凄く、嬉しかった」
桜はそう言うと、湯呑みを横に置き、手を伸ばして斎藤の手に触れる。
ビクッと驚いた様子の斎藤に少し微笑みながら、ギュッとその手を握りしめた。
「だからね、私も…ちゃんと一さんにお返事しないといけないなと思って。今までずっと、はぐらかしてきてごめんね」
「いや…桜にはこうと決めた信念があったのだ。それを曲げる訳にはいかなかったのだから、気にするな」
「ありがとう」
手を握り返しながらそう言ってくれた斎藤に、桜はにこりと笑う。
そして、小さく深呼吸をすると斎藤の目を見つめる。
「一さん。私に豆腐たっぷりのお味噌汁を、毎日作らせて貰えますか?」
いつか言われた言葉を、その言葉に込められた気持ちを思い出し、応える。
桜が言った言葉に斎藤は目を見開いた後、グイッと桜の手を引いて自分へと倒れ込んできた体を抱きしめた。
「…無論だ。桜に、毎日作ってもらいたい」
その返事に、桜は安堵の息を吐いた。
「嬉しい…」
背中に手を回し、斎藤の体を抱きしめ返す。
少しして、斎藤が動いたのを感じて体を離すと、静かにこちらを見つめる目が合った。
「……あんたに触れても良いだろうか」
その言葉に、桜は微笑むと「勿論」と言って目を閉じた。
頬に斎藤の髪が触れたのを感じ、少しくすぐったいなと思っていると、唇に柔らかいものが触れた。
優しく、そして熱い想いが籠った唇に、桜は胸がいっぱいになって斎藤の服をぎゅっと握りしめた。
離れていくのを名残惜しく思いながら目を開くと、同じように名残惜しいと表情を浮かべる斎藤に、思わず笑ってしまった。
「な、何故笑う」
「ううん。一さんも…私と同じ気持ちなんだなって思っただけ」
笑いながら唇に指で触れると、斎藤の顔が赤くなった。
相変わらず、可愛いところもあるなとニコニコして見ていると、前触れもなく唇を再び塞がれた。
「ちょ、一ちゃん!」
「呼び方が戻っているぞ。それに…同じ気持ちなんだろう?ならばもう少しだけ…」
フッと笑って何度も唇を重ねてくる斎藤に、桜は仕方ないなと微笑んで首に腕を回した。
「ねえ、一さん。いつまでそうしてるの?」
「むっ…もう少し」
そう言って、先ほどから自分と桜の愛刀を見つめる斎藤。
かれこれ、一時間はそうしているだろう。
「でも、早く寝ないと…明日は早いんだよ?」
「わかっている。わかっているのだが…その、落ち着かないのだ」
そわそわとする斎藤に、桜は息を吐く。
明日は私達の婚儀が行われるのだ。
斎藤は婚儀に対して緊張しており、ずっとそわそわしていて、気持ちを落ち着ける為にずっと刀を見ているのだ。
自分だって緊張していて落ち着かないけれど、朝が早いと言われたのだからとりあえず眠りにつかなければいけないのに、斎藤がああしていては眠れない。
桜は少し考えた後、布団へと横になると斎藤を見て腕を伸ばした。
「一さん。私も緊張してるのは同じだから…落ち着く為にも、その…抱きしめて欲しい、かな…そしたらきっと眠れるし」
少し照れながらもそう伝えると、斎藤は固まった。
変な事を言ってしまったなと後悔していると、動き出した斎藤は桜の隣に来ると、ギュッと抱きしめた。
「…すまない。落ち着きがなかったな」
「そこは一緒だから、気にしないで。ほら、寝よ」
桜の言葉に斎藤は頷くと、灯りを消した。
「おやすみなさい」
「ああ…おやすみ」
お互いに声を掛け合うと、ゆっくりと目を閉じた。
(一さん、起きて。準備しなきゃ)
(…刀を暫し見つめた後でもいいだろうか)
(時間がなくなるから、駄目!)