皆のその後…
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私が来たのは歳さんの家。
鬼副長と呼ばれるほど厳しく怖い男と思われているが、本当はとても心根が優しい。
一度決めたら曲げない、こうと決めたら貫き通す、信念の強さを持つ。
お酒に弱いくせに弱くないなんて言ってしまう様な可愛い部分も持ち合わせる、そんな男。
いつの間にか愛しいと思われ、自分自身も土方に対して愛しいという気持ちを持ち合わせていたが、戦いの為ずっと目を逸らしていた。
でも、戦いは終わったんだから…
(もう、いいよね?)
桜は深呼吸をすると、口を開いた。
「歳さーん、いるー?」
声を掛けながら戸を開くと、着替えの途中だった土方と目が合った。
こんなこと随分前にもあったなと昔のことを思い出していると、土方は溜息を吐きながら頭を抱えた。
「お前は…いつになったら返事をしてから入るってことを覚えやがるんだ」
「歳さんだからいいかなって」
そう言ってニコリと笑うと、土方は再び溜息を吐いた。
「見ての通り着替え中だ。手伝いなら歓迎するが…違うなら外に出ろ」
そう言って脱ぎ掛けていた着物を着直した土方から視線を逸らしたあと、後ろ手に戸を閉めた。
「ったく、あいつは…」
出て行ったと思ったのか、少し頬を緩めながら呟いた土方の背後に近付くと、そっと腕に触れた。
「なっ、お前…!」
バッと振り返った土方の顔はとても驚いており、目をこれでもかと見開いていた。
「歳さん、すっごい顔になってる」
「いや、おまっ…出て行ったと思ったからよ」
そう言った後、土方は自分の腕に触れる桜の手を取りながら体の向きを変える。
向かい合う事になって少し恥ずかしくて、桜は目を逸らした。
「何で外に出なかった?お前…俺が抱えてるもん、わかってんだろ?」
空いている手で頬に触れられ、肩を揺らす。
「警戒もせずにそんなに近付いてきたら…手を出されるかもって、思わねえのか?」
ぐいっと顎を持ち上げられ、熱を帯びた瞳と視線が合って、胸がいっぱいになる。
「…思うよ。ちゃんとわかってる。でも…歳三さんだったら、良いと思ったから…出なかったの」
「……なに?」
桜の言葉に、どういった意味が含められているのかと探る土方の様子に笑うと、頬にある土方の手に自分の手を重ねて頬を寄せた。
「歳三さん。ずっと気持ちに向き合うのから目を逸らしててごめんなさい。私、あなたのことをお慕いしています」
そう告げて微笑むと、土方はピシリと固まった。
「………」
「………」
「………歳三さん?」
手から頬を離すと、固まる土方の顔の前で手を振る。
それにハッとした土方は目の前の手を捕まえ、桜を抱きしめた。
「わ、ちょ、なに」
「いいな、その呼び方…もっと呼んでくれ」
「そう言われると恥ずかしいんだけど…」
桜はもごもご言いながら土方の背に腕を回し、その胸元にすりっと頬を寄せる。
「歳三さん」
「桜…」
土方が体を少し離すと、桜は顔を上げる。
「俺と生きてくれるか」
「…うん。一緒に生きたい」
微笑みながらそう答えると、土方は満足そうに笑った後に顔を近づけてきた。
桜が目を閉じると、唇に柔らかな感触が触れた。
少しして、ゆっくりと唇が離れたので目を開けると、至近距離で土方がジッとこちらを見ていた。
「えっと…何?」
「いや……お前がいるのが嬉しくてな」
随分と素直にものを言うようになったもんだと桜が感心していると、再び唇が重ねられた。
(んっ!?)
それだけではなく、ぬるりとした感触がしたのでドンッと胸を押し返して慌てて距離を取ると、不服そうな土方と目があった。
「歳三さん、何してんの!」
「ちょっと位いいだろうがよ…」
「舌はちょっとの内に入りません!」
こいつ、舌を入れやがってと睨んでいると、土方がふっと笑った。
「そんな怒るんじゃねえよ」
「全く…怒ってるんじゃなくて、呆れてるの」
桜は溜息を吐いた後、土方の腕の中から抜け出した。
「外で待ってるから、早く着替えて下さい。よかったら…母様のところに一緒に行きましょう」
頬を赤くしてそう言った桜に、土方は笑いながら「ああ」と返事をした。
そそくさと家を出る桜の背を見つめた後、自分が持っている中で一番いい服に着替えようと、適当に出していた服を土方は片付けた。
(待たせたな)
(なんか…キメてますね)
(俺の義母になる人に挨拶に行くんだからな。ちゃんとしねえと…)
(…母様も気にいると思いますよ)
(そりゃよかった)