幼少期~原作直前
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「こんにちはー!」
「おおっ!雪風君!よく来たね」
ニッコリ笑うのは私が今後死なせたくないと思っている人の1人、近藤勇さん。
江戸で迷子になっている時に助けてくれ、その後交流を持つ様になった。
本当に良い人すぎて心配になるが、井上さんがカバーしてるから大丈夫そうだ。
「なんだ、また来たの?」
この憎たらしい笑顔で笑うのは沖田総司。
ただただ憎たらしい為、ついつい喧嘩に発展することが多々ある。
「来たら行けないのかい?」
「別にそんな事は言ってないでしょ?」
「ハハッ、相変わらず2人は仲がいいな」
これ、仲良いの?
相変わらず近藤さんの基準は分からないが、彼が笑っているなら別にいいか。
「近藤さん、お手合わせを願えますか?」
「君が近藤さんに?おこがましいね」
「沖田には聞いてないだろう?」
一々突っかかってくる辺り、本当に近藤さんの事が好きなんだなぁと心が温かくなる。
「まあ、確かにおこがましいかもね。とりあえず準備運動も兼ねて素振りでもするよ」
今日は気分が良いから、反論するのはやめてあげよう。
挨拶もそこそこに荷物を隅に置くと、木刀を手にして素振りをする。
呆気なく引いた自分に沖田はポカンとしているけど、ほっておこう。
「おや?雪風君じゃないかい」
「井上さん!こんにちは!あっ、山南さんもいらっしゃる!こんにちは!」
こんにちはと挨拶を返してくれるのは井上さんと山南さん。
井上さんは優しいし、山南さんは色々な知識を教えてくれるし、好きだ。
「雪風君は、熱心に練習をするのですね」
「そりゃ…勿論ですよ、山南さん!僕、強くなって、大切な子を守れる様になりたいんです」
「大切な子…好きな子ですか?」
「はい!大好きな子達です!可愛い双子の兄妹で、今は離ればなれになってしまってるので、僕が2人を守って平和に過ごせる様にしたいんです!」
ニコニコ笑ってそう答えると、山南さんはおや?と頭を傾けた。
「てっきり、好い人でもいるのかと思いました」
「好い人、ですか?考えた事もなかったです」
正直に言うと沖田が笑ったが、無視だ無視。
その後練習に混ざった2人に稽古をつけてもらう(沖田が恨めしそうにしていたので相手してやった。相変わらず口は憎たらしいけど)
「ふぅ…」
疲れたので休憩していると、外から誰かが歩いてくる音がして視線を向ける。
「あ、歳さん」
「おお、雪風じゃねえか」
ニッと笑うのは土方歳三、薬売りなので背中には薬箱を背負っている。
青年時代から美青年で女子の視線を欲しいがままにしてる彼がちょっぴり羨ましかったりする。
「今から稽古に混ざられるんですか?」
「ああ、そうだ」
薬箱を置いて稽古の準備をする土方にニコニコと笑顔を向ける。
「稽古、付けてください!」
「なんだ?今日は俺で良いのか?」
「俺で、なんて言い方しないでください。歳さんは人に稽古をつけれるほど、お強いじゃないですか!」
「ふっ…お前は人を煽てるのが上手いな」
素直に褒め言葉を受け取ってくれない土方に頬を膨らませてみる(内心すっごく恥ずかしいが、子供らしさを出すために我慢だ、私)
「お世辞じゃないのに…」
ぶつくさ文句を言いつつ、土方の準備が終わるのを待っていると、背後から殺気を感じた。
「…⁉」
「あれ、気づかれちゃった?」
悪びれる様子もない様子でそう言ったのは沖田だ。
手にしている木刀は先程まで自分が座っていた場所に振り下ろされている。
避けていなければ脳天に直撃だ。
「度々、不意打ちで仕掛けてくるのやめてくれる?」
「君、憎たらしいぐらい避けるから別に良いじゃん」
ニヤニヤ笑う沖田に溜息を吐くと、ジッと見つめる。
「総司、危ないからやめてくれるかな?」
「………わかったよ」
そう言うと無表情で離れる沖田。
「………なんで沖田は、名前で呼んだら素直になるんですかね」
「総司は俺に対抗心あるからなぁ。お前が俺のことを名前で呼んで、自分が苗字呼びなのに不満があるんじゃねえか?」
「以外と可愛いところ、あるんですね」
ククッと笑うと、木刀を握る。
「かわいそうなんで、ちょっと相手してきます!」
「怪我しねぇようにしろよ」
そう言って笑う土方に、元気よく返事をした。
「母様、ただいま戻りました」
「お帰りなさい」
試衛館での稽古も終えて帰宅すると、母親が笑顔で出迎えてくれる。
「薫君からお手紙、届いてますよ」
「本当ですか⁉」
嬉々として手紙を受け取ると、そっと開く。
中には薫が如何に優遇されているかと、自分や千鶴を心配する事が書かれていた。
(風間の脅しがだいぶ効いているみたい。よかった)
ホッとしつつ、母親に千鶴の所へ向かうと伝えると家を出た。
「千鶴!」
「あ、姉様!」
服を着替えて女の格好をしている自分を見て、姉様と呼んだ千鶴に微笑み、腕の中に千鶴を抱き入れる。
「 桜さん、こんばんは」
「こんばんは綱道さん。突然お邪魔してすみません」
「いえいえ、私もまだ仕事が終わっておりませんから、助かりますよ」
微笑む綱道に自分も微笑むと、千鶴を連れて部屋の奥へと向かう。
千鶴が与えられている部屋に来ると、綱道が来ていないことを確認し、襖を閉めた。
「お返事、来たよ」
「本当?」
千鶴に頷くと、薫からの手紙を渡した。
パッと笑顔を浮かべて手紙を読んだ後、返事を書き始めた。
そんな千鶴を微笑ましく見つめ、そっと窓から空を見上げる。
(恐らく、黎明録あたりが始まるのが後10~12年後位かなあ…)
確か、自分と沖田は歳が同じくらいだったはず。
その計算で行くと、沖田が20~21位の時に黎明録の時間枠前後だった…筈……多分…自信はないけど。
とりあえず、10年前後で動くのは確かだ。
自分はどう立ち回ろう?隊士?それだけじゃ無理な気がする。
今も男装をして日々を過ごしているが、やはりそのうち隠しきれないと思う。
そうなればどうすればいい?どうすればついていける?
(………私には、医学の知識がある。)
隠しきれなくなった時、追い出されないように医者的な立場でいればいい、それならきっと、そこまで邪険にはされない筈。
よし、と気合を入れた時、服を引く感覚に視線を下に向けた。
「姉様、書けました」
「ん、しっかり預かるね」
笑顔の千鶴から手紙を受け取ると、一度抱きしめ、今日はそろそろ帰るねと告げ、雪村家を後にした。
「あー、そこの少年!少し聞きたいことがある」
「………僕ですか?」
とある日、試衛館へ向かう途中、こちらに向かって手を振る青年がいた。
自分を指差して首をかしげると、そうそうと彼は頷いた。
警戒しながらも近づくと、その隣にもう1人青年が立っていた。
(赤髪に隠しきれない色気。一見筋肉馬鹿に見えそうな外見。原田左之助と永倉新八だったり…する?)
若干の疑惑を抱えつつ2人を見ていると、それぞれ名前を永倉新八、原田左之助と告げた。
(まさかここで会うとは…それにしても、原田の色気は子供の頃からなの?怖い男だ)
若干失礼なことを考えてるなと思っていると、永倉がニカッと笑った。
「突然呼び止めて悪かったな!俺たち、道場を探してんだけどよ」
「道場?」
「おう!試衛館っていうんだがよ」
久しぶりに来たから迷ってよーと言う永倉に、ニコリと笑う。
「僕、今から試衛館に向かうところなんです。一緒にどうですか?」
「おっ、本当か!」
「すまないが、よろしく頼む」
そう言った2人に頷くと、試衛館への道を歩き出した。
「坊主、名前はなんていうんだ?」
「僕、あんまりお二人と歳変わらない気がするんですけど…まあ、いいや。雪風桜です」
「桜か、よろしくな!」
ニカッと笑う永倉につられて思わず笑みがこぼれる。
「そういや、試衛館に行くって言ってたけど、門弟なのか?」
「いえ、門弟っていうほどしっかりしたものではないのですが…たまに稽古をつけていただいてます」
原田の質問にそう答え、前方を見ると道場が見えていた。
「あ、彼処が試衛館ですよ」
「お、ほんとか!」
ウキウキした様子の永倉に微笑むと、道場へ着いた。
「こんにちはー!」
「おっ、雪風君じゃないか!ん?後ろの2人は?見たこともあるような…」
「ここを探されていたので、近藤さんに会いに来られたのかと思います」
道場の入り口にいた井上さんに2人のことを話すと、井上さんは2人を連れて奥の家へ向かった。
自分はいそいそと道場へ入ると、奥に土方と山南を見つけた。
「歳さん!山南さん!こんにちは!」
「おお、雪風じゃねえか」
「こんにちは」
2人に微笑んで稽古をつけて欲しいと告げようとした時、気配を感じて立ってた場所から飛び退いた。
「あーもう少しだったのに。残念」
「全く…いい加減に後ろから木刀振り落としてくるの、やめてくれるかな?沖田」
ニヤニヤと笑って立っていた沖田にそう告げ、ため息を吐いた。
「なんのことかな?」
「………もういいや」
頭を抱えそうになったが、気持ちを切り替えて土方と山南の方へ振り返る。
「お稽古、つけてください!」
「相変わらず、熱心な野郎だな」
「僕は、強くならないといけませんから!」
後ろで沖田がなんか言ってるけど、無視だ無視。
2人にぺこりと頭を下げると、木刀をぎゅっと握った。
「ふぅ…」
稽古が終わり、静けさを取り戻した道場の縁に腰掛け空を眺める。
永倉と原田は近藤と話が終わった後に稽古に混ざっていた。
すっかり皆と打ち解けていた2人に凄いなと思いつつ休憩を取っていると、隣に誰かが来た。
「お疲れさん」
「お疲れ様です、原田さん」
ニッと笑う原田に微笑み返すと、再び空を見る。
「試衛館の稽古、どうでした?」
「相変わらず最高だ」
「なら、良かったです」
原田の言葉に胸が暖かくなる。
近藤さんが褒められているのと同じだから、嬉しい。
「そういや、やたら稽古に熱心だったが、なんか目標でもあんのか?」
「目標…ですか」
(もちろん、あるよ)
「大切な人を守れる力が欲しいです。母様とか」
そう言うと、頭をポンと撫でられた。
「いい心がけだな」
「ありがとうございます」
原田さん、がっつり親しくない人にも兄貴分な所は見せるんだなぁ…流石だ。
「お?何話してんだ?」
「永倉さん、お疲れ様です」
ドタドタと近づいて来た永倉にそう告げ、3人で話し始めた。
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