原作突入~千鶴外出許可
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(あの男は、馬鹿か!)
手伝うかって…それで私が手伝ったらどうすんだ。
(いや、待てよ…それはそれで面白かったかもしれない)
惜しいことをしたなと考えながら広間へ戻る。
自分がいつも座っている場所に座ると、丁度近藤さんと歳さんが一緒にやって来た。
その後は近藤さんの言葉で食事が始まる。
(……うん、千鶴のお味噌汁は、やっぱり美味しいな)
1人ほっこりしていると、平助のげんなりした声が聞こえた。
「うわ。……あのさ、桜と千鶴、おひたし作ったのって総司?」
「そ、それはね……。半分が沖田さん、かな?」
「味付けは一応僕がしたけど」
そう話して総司を見る。
「とりあえず、野菜を茹でて、しょうゆに浸すところまでは、僕がやったんだけど……。ちょっと味見した一君が、【これじゃ辛すぎて駄目】とか言って全部水洗いしちゃって」
「俺は当然の処置をしたまで。塩分の取りすぎは健康を損ねる」
「で、その後は僕が味付けし直したんだけど」
そう言うと、平助は驚いた様に目を見開く。
「いや、これ、桜が味付けした後に総司か一君がなんかしただろ‼」
「え?」
まさか、そんな事ないよねと祈りながらおひたしを口に含む。
「‼‼⁉辛っ!」
「やっぱり、味薄いかなって。僕が味付けにしょうゆを足したんだよ」
ニヤリと笑う総司を睨む。
「てめえ、二度と飯を作ってやらねえぞ」
「やだなー、そんなに怒る事?」
「そりゃ、桜も怒るだろーよ!徹夜して料理作ったらこんなに辛く味付けし直されてよー」
平助が慌てた様にフォローに入るが、桜はただただ総司を睨んでいた。
「わかった。僕はもう二度と飯は作らん」
「総司!謝れ!今すぐ!」
「そうだぞ総司」
桜の言葉が広間に響き、幹部メンバーは顔を青くした。
口々に皆沖田に謝れと促す。
「………もーわかったよ。ごめんね桜」
「………」
「雪風君、総司を許してやってくれないか?俺の方からもよく言っておく」
近藤さんの言葉に息を吐く。
「近藤さんがそう言うなら、許してやらんことも無いです。総司、味付けが気に入らないならちゃんと言ってくれ。なるべく口に合う様にするから」
「……わかったよ」
バツが悪そうな総司に息を吐くと、食事を続けた。
「……では、失礼します」
朝食が終わり片付け終わった広間に千鶴の声が響く。
「雪村君。申し訳ありませんが、少し残っていただけませんか?」
広間を出ようとする千鶴を引き止めたのは、山南さんだった。
「え?でも……」
「ええ。君も知っての通り、朝食後は私たち新選組の幹部がこの広間で会議を行います」
「そんな場所に私がいたら、迷惑じゃありませんか……?」
「そんなことはありません。今日の会議はまさに君のことを話し合おうという場ですから」
「……ええっ⁉」
山南の言葉に、千鶴は驚く。
「昨日の会議で決まったんだが、監察方に配属された隊士の一部に君の事情を話すことになってね」
「監察方、ですか……?」
「ああ。監察方は綱道さん探しの実働隊となってくれる部署だ。大がかりな捜索を始める前に、君のことを紹介しておかんとな」
「は、はいっ!ありがとうございます!」
千鶴は嬉しそうな表情を浮かべた。
「僕は反対なんだけどなあ。監察方まで話を広めちゃうの。例えばあの【薬】の件とか、隊士たちにも伏せていることまで、一から説明しないといけないし」
総司の言葉に、思わずため息が出る。
「一幹部として、意見を言わせてもらっていいかな?」
その言葉に、桜に視線が集まる。
「総司の懸念もわかる。昨日も言ってたけど、新八さんの、いつ始末するかもわからない様な子に事情を伏せておきたいのもわかる」
桜の言葉に、千鶴は複雑そうな表情を浮かべた。
「でも、綱道さん探しは困難な状況。千鶴がここに来てから三ヶ月、なんの進展もないのは事実。だから監察方の力を借りようって話は昨日決めた事じゃん」
「まあね。僕も根っこではちゃんと納得してるんだけど、やっぱり不満は不満で…」
沖田の言葉に、千鶴は等々顔を伏せてしまった。
「そう…まあ、許可がもらえたら僕一人でも千鶴を連れて動くんだけどね」
「おい、それは認めねえって昨日も言っただろうが」
桜の言葉に千鶴は驚き、土方は眉間に皺を寄せる。
「はいはい。飯炊きがいなくなったら困りますもんねー」
「………桜、どうしてそんなに機嫌が悪いんだ?」
桜の態度が気になったのか、原田が困った様に尋ねる。
「……夜の巡察が終わって少しでも休みたかったのに飯を作れと引っ張りだされて、これって完璧に飯炊きですよね?いやまあ、僕が率先して皆の健康を気にして調理してるから良いんですけど。更には千鶴の事を斬るとか斬らないとか最近ずっと聞かされて、流石に僕も苛立ちますよ」
にっこり笑った桜の額には青筋が浮かんでいる様にも見えた。
流石の沖田もこれはやばいと困った様子だった。
「失礼します」
そんな空気の中、不意に襖の向こう側から声が聞こえて来た。
「島田、山崎、両名参りました」
「よ、よし、入れ」
土方は桜を気にしながらも2人を中に入る様に促した。
「監察方所属、島田魁と申します。以後、お見知りおきください」
「監察方所属、山崎烝」
大柄な男、島田とお馴染み山崎は千鶴に挨拶をした。
「すでに聞いているとは思うが、君たち監察方には雪村綱道という蘭方医の捜索をお願いしたい」
近藤はあくまでも穏やかな口調で告げる。
「しかし綱道さんの行方は、我々があちこち手を尽くしてもさっぱりわからないままだ。情報の隠蔽にはなんらかの組織的な力が働いている可能性が高いのではないかと思う……」
「では、綱道さんに関する情報を集めるのも骨が折れそうですな」
近藤の言葉に島田は冷や汗を流した。
「ああ、誘拐されちまったのか、綱道さん本人の意思かは知らねえが、しばらく身を潜めてるんだろう。綱道さんの動きが見えるまで、ヤブをつついて蛇を出さねえよう、警戒しながら調査を行ってくれ」
土方の言葉に、監察方の2人は大きく頷いた。
(あー、土佐や長州の方を探しに行けばいるのになー)
言ってあげたいけど、まだ言えない。
原作の流れを大幅に変えてしまう可能性があるからだ。
それだけは避けたい、私は皆を助けたいけれど、大幅に変えた結果の後に予定外のことが起きた時の対処ができない。
そんな事を考えていると、監察方の2人に千鶴が紹介されていた。
千鶴の事を2人が話しているのを見て、そうだ!と手をあげる。
「あ?なんだ桜」
「千鶴の兄として、2人によろしく言うのと、僕の話をしても良いんじゃないのかなって」
「あ、兄だと…?」
驚く山崎に桜は頷く。
「うん、そうそう、兄です。まあ、正確には兄というよりはあ「ちょっと待った!」え?」
突然言葉を遮って来た平助に驚いて視線を向ける。
「桜よ、自分の話って…その、昔試衛館でオレ達が聞いた話だよな?」
「うん、まあ」
「それは…まだ良いんじゃねえか?」
ん?なんで左之さんまで止めてくんの?なんかあるの?
頭にハテナが浮かぶが、まあいいや。
「近藤さん、山崎さんは今でもだいぶお世話になってるし、島田さんにもお世話になってるから、別に秘密を告げてもいいかなって思うんですけど。千鶴の事もありますし」
「うむ。俺は構わないぞ。信じているからな」
微笑む近藤に頷くと、桜は山崎と島田を見た。
「僕、雪風桜は実は…」
女であり、千鶴とは家族ぐるみの付き合いで家族も当然だと告げると、2人は口をぽかんと開けていた、面白い。
周りの面々がため息を吐いていた気もするが、理由はわからん。
「……とにかく会議は終わりだ。おまえらはとっとと解散しろ!監察方のふたりは残れよ。幕府の密命について説明する」
土方のその言葉を皮切りに、皆それぞれ挨拶をして広間を出る。
(……限界)
仮眠取らなきゃ死んじゃうーやばーい。
なんて、呑気なことを考えていると、着物を引かれた。
「ん?」
「あー…桜よ。ちょっと寝てこいよ。顔色悪すぎ」
「………そんなに?」
いやまあ、寝るつもりではあったけど、着物を引っ張った本人である平助に言われて自分の頬に触れる。
(まあ、この後は猫の騒動があるけど、放っておいても大丈夫だろう)
「平助、心配してくれてありがとう。昼食の用意は今回は休ませてほしいって、左之さんと新八さんに伝えてくれないか?」
確か、昼食はあの2人が担当の筈だ。
食材がダメになるのはとても不本意だが、千鶴のことを考えると致し方無い。
そして何より、私がもうダメだ。
「おう!任せろ」
ニカッと笑った平助に微笑むと、今度こそ広間を後にした。
「………⁉」
仮眠を取っていると、大きな音が響いた。
(………始まったか)
体を起こすと、襖をそっと開ける。
「うわっ⁉」
小さな塊が部屋に飛び込んできた。
小さな猫だ。
「…………」
襖をそっと閉めると、猫を抱き上げて布団へ戻る。
「お前が勝手場を荒らした犯人かな?」
にゃーと小さく鳴いた猫に苦笑する。
「まあ、食べ物は生きてるなら等しく欲しいものだもんね。それにしても…男達に追いかけられて怖かったろ?」
頭を撫でていると、落ち着いてきたのか一つあくびをした。
「お前も一緒に寝よう」
桜は微笑むと、横になった。
猫は桜に擦り寄ると、一つ鳴いた。
「……………ん~」
欠伸をして起き上がる。
(ん、ちょっとは寝たから体もマシだな)
伸びをする桜の横で、動いた気配を感じたのか猫も起き上がった。
「さて、そろそろ落ち着いてきたかもしれないし、謝りに行こうか」
にゃーと鳴いた猫に手を伸ばすと、自分から腕の中に飛び乗ってくる。
そっと抱き上げると、広間へ向かった。
「そもそも猫一匹を大勢で追いかけるってのがよくねえ」
(おっ?歳さんのルート的なあれかな?)
聞こえてきた言葉に中をひょこっと覗くと、土方、近藤、山南、藤堂、千鶴の5人がいた。
「自分よりでけえ生き物が群れをなして襲ってきたんなら、誰だって怯えちまうだろうがよ」
「そうそう、誰だって怖いもんさ。それにしても、歳さん小動物には優しいんだね」
「ああ?」
怪訝そうに振り返った土方の目に映ったのは、猫を抱いた桜だった。
「てめえ、その猫はどうした」
「いやー仮眠を取ってたら迷い込んできたみたいで」
ニコリと笑うと、千鶴の横に座る。
ほらほら千鶴、触って良いぞ、アニマルセラピーだ。
「千鶴。はい」
「え?あっ…」
千鶴に猫を渡すと、他の面々を見る。
「この猫ちゃんを探してた感じです?」
「ああ、そうなんだよ!」
藤堂は興奮気味に話し始めた。
「うん。なるほどねー」
話を聞き終えて猫を見る。
「まあ、見つかったし、もう良いんじゃ無いです?屯所の外に適当に逃がしておきますよ」
「うむ、そうしてやってくれ」
近藤は嬉しそうに微笑んだ。
「それより、昼食をどうするかですよ?原田君と永倉君が用意をしてくださっているかもしれませんが、量は足りますかね?」
チラリとこちらを見る山南さんに、思わず苦笑する。
「僕が行ってみてきますよ」
「本当ですか?それは助かりますねえ」
桜は伸びをすると、千鶴を見た。
「って事で、千鶴の方から猫ちゃん逃がしておいてくれる?」
「あ、はい!」
「一応、平助がついてあげてね」
「おう!任せろ!」
ああ、ちっこい2人癒される。
頭を撫でると広間を出る。
勝手場に向かうと左之さんと新八さんは随分驚き、喜んでくれた。
奥にいた(鬼のような形相の)井上さんも、微笑んでくれた気がする。
勝手場の状況を確認し、桜は気合を入れると調理を開始した。
完成した料理を広間に運ぶと、皆が喜んでくれてホッとした。
猫も無事に逃がしたみたいだった。
(うん、びみょーに、皆の距離が縮まった気もする)
桜は千鶴と周りを見て、満足そうに微笑んだ。
(うむ、順調だな)
茶店に来ていた桜は、目の前のお茶を飲みながら最近のことを考えていた。
月日が流れる中で、千鶴と各人物のイベントは順調に発生していた。
と言っても、まだ平助と左之さんのイベントくらいだが。
ただ、全体的に見て他の面子とも話しているのを見ることが増えた、良い傾向である。
(千鶴を早く幸せにしてあげたいなぁ…)
皆のことも、必ず救いたい。
ただ、救うことにより必ずズレが生じてくる。
山南さんは羅刹になり、羅刹隊を束ねる人になる筈だった。
しかし私は山南さんが羅刹になる事を阻止した、今は左手は完治しており問題なく以前通りに動かせている。
ただ、怪我する運命を曲げたことにより他の人間に皺寄せがくるのでは無いか、同じ人物に別のタイミングで皺寄せがくるのでは無いか、正直気が気でない。
(でも、決めたんだ…守るって)
雪風の里を復興させているのは、散り散りになった皆の故郷を元の姿に戻したいという願いが強かったが、少しだけ…この先の新選組の隠れ蓑になれば良いと思った。
彼らはそれぞれの戦いの最中散って行く、再会したくても彼らはきっと再会できない。
そんな時に、雪風の里が皆の拠り所になってくれればと思う。
願わくば、皆を守り切って、雪風の里で皆と再会できれば嬉しいと思っている。
里の皆には話した、新選組の皆にはその時その時に話そうと思う。
「………ふぅ」
一つ溜息を吐いて一緒に頼んでいた団子を口に含んだ時、目の前に誰かが座った。
「久しぶりだな、雪風桜」
「………久しぶり、風間」
目の前でニヤリと笑う風間に返事をする。
「僕に何か用?」
「ふっ…我が妻に声をかけて何が悪い?」
「…………あ?てめえ頭沸いたのか?」
突然の言葉に思わず暴言が出てしまったのは許してほしい。
そしていつの間にか風間の後ろにいる2人、笑いを隠しきれてないぞ。
「…………貴様、俺をコケにしているのか?」
「風間様があまりにも訳のわからないことを言い出したのでーついついー」
悪びれた様子の無い桜は団子を食べる。
「あっ、そういえば…僕の苗字は何処で仕入れたの?」
「ふっ…あれから貴様の事は調べさせた。母親曰く、雪風家の頭首だそうだな」
(………え?)
いやーお母様?風間に何言ったの?
「僕、そんな話知らないんだけど」
「何……?」
「僕の最後の情報は、父様が無くなった後に母様が頭首として過ごしているって情報だけど」
実際僕がそう頼んだし。
風間はその言葉に暫く考えた後、桜を見る。
「貴様が頭首であろうと無かろうと、我が妻に相応しい事に変わりはない」
「…………馬鹿みたいですね」
「なんだと……?」
桜の言葉に風間の額に青筋が浮かぶ。
「そんな相手の意見を聞いていないような奴の妻に?うわーないわー。風間の妻になるくらいだったら、天霧さんか不知火さんがいいわー」
「貴様…‼」
「相手が望んでもいないのに、無理やり結婚して、相手に幸せはあるの?」
「……ふんっ‼この俺と結婚した時点で幸せに決まっているだろう」
「うわーないわー」
桜は首を振る。
「俺様って、かなり無いですよ?見た目が良くても中身がなぁ…。僕、ある程度の自分勝手は許せますけど、貴方みたいに相手の気持ちを丸っと無視しそうな人、無理だなぁ」
桜の言葉に、風間は天霧に色々と質問を投げる。
(子供か)
そんなに俺は俺様か!って…どう見ても俺様でしょうが。
一つため息を吐くと、不知火を見る。
「不知火さん、質問なんですけど…僕の母様は、本当に僕のことを雪風家の頭首と?」
「あ?ああ、確かに言ってたぜ。てめえの親だけじゃなくて南雲にいたあのガキもな」
なんと、薫もか。
(あの2人が言ってたなら、私が知らない間に頭首にされてるなあ…)
正直、務まるはずがない、そもそも何をするのか知らないし、殆ど里にいないし。
桜が頭を捻って考えていると、風間が立ち上がった。
「帰る」
「はい、さいならー」
ひらひらと手を振ると、ガッと掴まれた。
「…⁉」
「貴様の言い分はわかった。次に会う時には自分から妻にしてくれと言わせてやる」
(学習しねえな…)
てか、本当のことを告げてやりたい、転生してから数十年、精神年齢だけでいけば中年くらいだ。
正直アホなので若者にときめく事はあれど恋愛や結婚など全く考えたことはない。
(まあ、言ったところで私の頭が疑われるだけだから、何も言わないけど)
出そうになるため息を飲み込むと、最後に一言告げる。
「まあ、とりあえず…男装している僕に向かって妻にするとか言ってたら、男色に走ってるようにしか見えないから、気をつけたほうがいいよ?」
にっこり告げると、天霧さんが風間を隠すようにして出て行った、なんかごめんね?
(さて…)
「お姉さん、すみませーん」
茶店の店員さんを呼んで代金を支払うと、桜は屯所へと戻るために歩き出した。
→