2023〜お正月〜
「お姉ちゃん!こっちですよ」
そう言って笑う千鶴に釣られ、こちらの口角も上がる。
千鶴の隣にいる薫もどこか楽しそうだ。
今日は三人で初詣。
可愛らしい振袖に身を包む千鶴はいつもよりもうんと可愛い。
千鶴にせがまれ自分も振袖を着てみたが……まあ、自分で見慣れていなくてどこがむずむずとする。
(前世でずっと男装していたせいだとは思うが…)
ああ、頼むから今世で再会してしまった“元”新選組や鬼の面々などと遭遇しないようにと祈っていたが、まあそんな願いも叶わず。
「お、奇遇じゃねえか」
「我が妻よ、この俺のために振袖を着てきたのか」
などと言って現れた面々に、頭が痛くなった。
「おい風間、お前は相変わらず頭がおかしいようだな」
「ふん…!貴様らこそ、我が妻に気安く話しかけるんじゃない」
そう言って喧嘩が始まりそうな新選組面々と鬼共に頭を抱えていると、ちょいっと袖を引かれた。
「お姉ちゃん、今のうちに行きましょう」
「あいつらは放っておこう」
そう言った千鶴と薫に頷くと、よしっと抜け出した。
「どこに行くつもり?」
しかしすぐに見つかり、三人で顔を見合わせると小走りで走り出した。
「あ、おい!待てよ!」
「待たねえよ!」
「今日はお姉ちゃんは私達と過ごすんです!」
両手を引く双子に可愛い可愛いと頬を緩めていると、後ろからいくつもの足音が聞こえてきた。
「千鶴、薫、スピードあげるよ!」
「「うん!」」
振袖とはいえ前世はずっと和装で走り回っていたので動きに問題はない。
後ろから聞こえる「待て」の声に三人で声をあげて笑いながら、その場を駆け抜けていった。
(なんて、夢を見た)
(恐ろしいことに、新撰組の面々も、鬼達も、千鶴や薫、八郎達も似た夢を見たらしい)
(これは来世で起きることなの……か?)