サクラノツヅキ
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(まじか…)
桜は目の前にある、薄桜学園を見上げて深いため息を吐いた。
先日、母親から薄桜学園に転入しないかと聞かれた時は何の冗談かと思った。
「何で…?今の学校気に入ってるんだけど…」と言えば、父親が申し訳なさそうに「千鶴ちゃんが入学するみたいなんだが…女子が1人だそうだ」と言った。
まあそれは知ってるけれど、何故それが私が転入することに繋がるのかわからない。
「ご両親がね、女の子1人じゃ不安みたいで……」
母親のその言葉に、桜は頭が痛くなった。
結局、自分はこうして巻き込まれてしまうのかと。
はじめは断ったが、両親や雪村夫妻からの懇願するような目、千鶴と薫に「一緒に通いたい」と言われれば、もう断りきれなかった。
この可愛い2人にノーと言えるだろうか。
そこからあれやこれやで転入手続きが終わり、今日からこの学園に通うことになったのだ。
桜は覚悟を決めて学園へと足を踏み入れる。
周りからの視線を受けながら、職員室へと向かうと扉を叩く。
バッと振り返った男達の視線を受け苦笑いが出そうになるのを我慢しながら「今日から転入してきた雪風です」と伝えると、1人の男性教師が近付いてきた。
「君が雪風か。俺が君の担任の山本だ。よろしくな」
そう言った山本に「よろしくお願いします」と頭を下げると、「じゃあ行くか」との言葉に頷き職員室を後にした……背に痛いくらいの視線を受けながら。
この学園の教師陣の中には元新選組が何人かいる。
視線を向けてきていたのは…彼らだ。
懐かしい顔に本当は笑顔を溢しそうだったのだが…そんな事をしては今までの努力が無駄になるからね、我慢&無視だ。
山本に案内されたどり着いた2年3組。
このクラスには新選組に関わる人物はいないようで、少しホッとした。
教室に入ると少し騒がしかったのがぴたりと静かになった。
「今日から転入してきた雪風だ」
「はじめまして、雪風桜です。今日からよろしくお願いします」
そう言って頭を下げると、クラスが湧き上がった。
え、どうしたどうしたと困っていると、山本が「お前ら黙らないと留年させんぞー」と言ってすぐに皆黙った。
なるほど、この先生は怒らせたらダメなのかと思いつつ、言われた席へと座る。
窓側の席で、心地よい風が感じられてホッと息を吐いた。
さて、これから何事もなければありがたいのだが…と思っていたのも束の間。
休み時間に入った瞬間、クラスの面々に囲まれてしまった。
「前はどこの学校だったんだ?」「何でここに転入したの?」「ねえねえ、彼氏とかいるの?」何てよくある質問攻めを受けていると、教室の入口から「ねえ、転入生ってどこ?」と聞き慣れた声が聞こえてきた。
その声が聞こえた瞬間、あれだけ騒がしかったクラスメイト達は静かになり、「沖田…」と誰かが名前を呼んだ。
「聞こえてる?」
「こ、ここだ!」
沖田がにっこりと笑いながらもう一度問うと、近くにいた男子が慌てて声をかけた。
あいつはこの時代でも黒いのかと思っていると、こちらへ向かってきた沖田は目の前の席に座り、「ふーん…」と言ってジロジロと観察した後にふわりと笑った。
「久しぶり」
「…え?」
久しぶりと言われ、周りは知り合いか?と遠くから見てくる。
「…どこかでお会いしましたか?」
「……それ、なんの冗談?面白くないんだけど」
いやそんなこと言われてもね、私は記憶がない態なのだ。
「久しぶり」なんて言ったらこれまでの私の努力が無駄になるじゃないか。
桜は目の前でこちらを睨む沖田を困惑した様子(のフリ)で見ていると、教室の入口から「沖田!」「沖田さん!」「総司!」と3つの声が聞こえた。
そちらに視線を向けると、薫、千鶴、平助が慌てた様子で立っていた。
「お前、そいつのこと説明したの忘れたのかよ!」
「え?説明って?」
「うわ、そもそも聞いてなかったのかよ…」
薫の言葉にきょとんとした様子の沖田に平助はため息を吐いた。
「お、沖田さんとりあえずこちらに」
「え、ちょっと」
慌てた様子の千鶴を沖田は不思議そうに見ながら、その手を引かれて教室を出た。
「あー、桜。悪いな。あいつちょっと冗談が過ぎたみたいだ」
「ううん、大丈夫」
謝る平助に笑いながらそう言うと、薫と共に2人は教室を出て千鶴と沖田を追った。
(……恐らく、私に記憶が無いって話を総司にしたけど、総司はちゃんと聞いてなかったって感じかな)
一つため息を吐いたとき、チャイムが鳴った。
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