サクラノツヅキ
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「行ってきまーす」
「気をつけて行ってくるのよ」
「変な奴が寄ってきたらすぐに叫ぶんだぞ」
「もー二人とも、わかってるってば」
背に、心配性な両親の声を受けながら家を出る。
新選組として駆け抜けた後、派生の学園作品の世界へと私は生まれ変わった。
両親は前世の記憶を持ち、勿論私も持っているがそれを悟らせないように必死に隠して生きている。
両親はただ今を一緒に生きれる事が嬉しいのか何も言わなかったし表情や態度にも出さなかった。
ただ…雪村家と今世でも縁のある我が家に初めて遊びに来た千鶴と薫が嬉しそうに「姉様!」「桜!」と飛びついてきた時には本当に困った。
二人のことを知らないふりをしなければいけなかったからだ。
「えっと…?」と困ったように両親に視線を向けると、二人は雪村夫妻に「桜は我々のように記憶が無いみたいなんだ」と話した。
それを聞いていた千鶴と薫はかなり衝撃を受けた後、悲しそうに表情を曇らせた。
その表情に怯んだがここでボロを出すわけにはいかなかった。
「その…初めまして。雪風桜だよ」と自己紹介すると、二人は目を潤ませながら「雪村千鶴です」「雪村薫」と名乗ってくれた。
ごめんね、ごめんねと心の中で何度も謝りながら「よろしくね」と微笑んだ。
そしてここからが大変な日々の始まりでもあった。
二人は事あるごとに記憶が戻って無いかを確認するために昔の話を織り交ぜて会話をしてくるのだ。
なのでボロを出さないように二人と話す時は必要以上に頭をフル回転させて会話をする必要がある。
それだけでなく二人の幼馴染である藤堂平助も途中から加わったのだからもうそれは大変。
同じく記憶のある平助は昔の話を織り交ぜてくるだけでなく、前世の好意が今世もありますよとばかりに距離が近い。
前世と違い男装する必要のない私にアプローチがしやすくなったのだろう。
事あるごとに距離が近いのでその距離を離すことにも力を注いでいるのだ。
いやほんと勘弁して欲しい、君たちのヒロインは千鶴なんだから!
なので、彼らから距離を取る方法として取ったのは、入学する高校を遠くの学校にすることだ。
これがまあ、効果覿面!
千鶴や薫は家族ぐるみの付き合いなので完全に付き合いが無くなることはないけれど、平助は受験勉強もあり遭遇することはほぼ無くなった。
そう、このまま平和にすぎていけば他の皆に会うことも無いのだから、千鶴がヒロインとして輝く世界が始まるに決まっている。
そう、思っていたのに……
「……お母さん、もう一度言ってくれない?」
「薄桜学園に転入しない?」
ニコニコと目の前で笑う両親に、桜は頭を抱えるのだった。
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