お嫁さんになりたい
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モビーへと戻ると、ヒスイは甲板に出て来ていたジェシーの元へと駆けて行った。
ジェシーに楽しそうに話すヒスイを見ていると、ポンっと肩を叩かれた。
「お疲れさん」
横を見るとニヤニヤと笑うサッチがいた。
「な、なんだよその顔…」
「ヒスイちゃんとイチャイチャ出来たか?」
「イチャイチャって…!ストライカーに乗せれる場所がなかったから、仕方なくだろ」
そっぽ向きながら言ったエースに、サッチは更にニヤニヤとする。
「ったく。マルコもいい仕事するよなー」
「マルコ?」
エースがくるっと振り返ると、サッチは白ひげに色々と説明しているマルコを見る。
「あいつが、ストライカーに乗せれる場所がない事に気付いてないわけないだろ?」
その言葉に、エースは口をあんぐりとさせた。
(ってことは……?)
「ワザとおれとヒスイを一緒にさせる為に……?」
エースの呟きに、サッチはいい笑顔で頷いた。
「な、なんでそんな事…!」
「あいつも、妹分には甘いって事だ。本当に嫌ならばハッキリ言えよー」
サッチはそう言ってその場を離れて行った。
エースが溜息を吐くと、トントンと肩を叩かれた。
「ん?」
「エース君、マルコさんが呼んでるよ」
声を掛けて来たのはヒスイで、その言葉に頷くと共にマルコの元へと向かう。
「お疲れエース。ヒスイの事、ありがとよい」
そう言ったマルコをエースはジトっと見つめる。
視線に気付いたマルコはニヤッと笑うと、ヒスイの頭を撫でた。
「ヒスイ、オヤジが呼んでたぞ」
「おじ様が?わかった!」
パタパタとヒスイが離れていくと、エースはマルコに詰め寄る。
「ワザとおれにヒスイを連れて帰るように仕向けたんだってな?」
「ん?なんの事だ?」
シラを切るマルコをエースはギロっと睨む。
「そんな目をするんじゃねえよ。お前が本当に嫌がる事はしないよい」
そう言ったマルコは見た事ないくらい優しい表情で、白ひげと話すヒスイを見た。
「可愛い妹の初めての恋だ。少しくらい応援してもいいだろ?」
「初めてって、そんな大袈裟な…」
エースがそう言うと、マルコは肩を竦めた。
「まあ、機会があればヒスイに聞いてみるといいよい」
マルコはそう言って、笑った。
「さてと…ヒスイの話は一旦終わりにして、宝の山分けと行こうじゃねェか」
オヤジの分はもう確保していると言ったマルコは、宝箱を開ける。
「金も宝石も色々入ってた。随分と海の中で眠っていたから汚れている物も多いが…少し拭いてやれば大丈夫そうだ」
「どうやって分ける?」
いつの間にかやって来ていたハルタが、ヒョコッと宝箱を覗き込んだ。
「とりあえずはいつも通り、隊長陣が幾つかもらった後に、下の奴らに分けさせるか」
「おっと。おれ達よりも先に宝を選ばせてやらないといけない奴がいるんじゃないか?」
そう言ったジョズは、後ろを見ると「ヒスイー!」と大きな声で呼んで手招いた。
「はーい!」
パタパタと走って来たヒスイがジョズの元に来ると、ヒョイっと抱き上げられた後、宝の前に立たされる。
「今回の1番の功労者だ。欲しいもんがあったら選ぶといい」
「…え?私?」
突然の言葉にヒスイがキョトンとすると、周りの面々は頷いた。
「ヒスイがイルカから話を聞いてなかったら、収穫なしだったしな」
「お手柄ってやつだ」
皆の役に立ったとヒスイは嬉しそうに笑った後、首を左右に振った。
「私、お宝はいらないよ?」
「えっ!?いらないのか」
「うん。船に乗せてもらってる身だから、これくらいは働かないと!」
笑顔でそう言ったヒスイ。
昔からヒスイを知っている面々は「いい子に育って…」と目元を腕で擦っていた。
「まあでも、1つくらいは選んでもいいんじゃないか?」
イゾウがそう言うと、ヒスイは「うーん…」と悩んだ後、エースを見た。
「じゃあ、私の分はエース君にあげる」
「えっ?おれ?」
「うん!色々お世話してもらったし、ストライカーで楽しませてもらったし!後…押しかけちゃって迷惑もかけてると思うし」
ヒスイは腕を後ろで組みながらそう言った。
「あ、でもお嫁さんになるのは諦めないからね!」
ヒスイはニコッと笑うと、その場から駆けて行った。
「…………」
エースが少し頬を赤らめてぽかんとしていると、周りの面々がニヤニヤしてることに気付いて咳払いをした。
「ククッ…いつもはおれ達がお前に振り回されてるのに、ヒスイが来てからはお前がずっと振り回されてるな」
「うるせェ!」
肩に腕を回して来たサッチにエースが叫ぶと他の面々は笑った。
「よしエース、仕方ないがヒスイの好意だ。少し多めに選んでもいいぞ」
「え?いいのかよ」
エースが聞き返すと、皆は頷いた。
「じゃあ、遠慮なく!」
エースはそう言って笑うと、宝へと視線を移した。
その夜、モビーでは宴が行われていた。
白ひげも機嫌良く酒を煽り、功労者のヒスイを頭を撫でていた。
ヒスイは嬉しそうに微笑んだあと、白ひげの膝になんとかよじ登りお酌をする。
「ヒスイ…おれにばっかり構ってないで、他の奴らと騒いで来てもいいんだぞ」
「うん、ありがとうおじ様。でもね…今日はおじ様と居たい気分なの」
ダメかな?と見上げてくるヒスイに白ひげは「好きなだけいろ」と笑った。
ヒスイは頷くと、騒ぐ船員達を見た。
(皆、楽しそう…!)
役に立てて皆が喜んでくれて嬉しいなとニコニコしていたが、ある人物が目に入った後、慌てて視線を逸らした。
ある人物というのは勿論エースなのだが、問題はその隣にいる人だった。
(やっぱり、あのナースさんはエース君が好きなんだ)
エースの隣には以前、自分の事をいい風に思っていないと話をしていたナースが座っていた。
ヒスイはナースを一度見た後、視線を逸らして白ひげから貰った酒をちびりと飲み、船へと戻ってきてからの事を思い出す。
無人島から戻ってきた後、ヒスイが一度シャワーを浴びようと自室へと向かっていたところ、とある一室から話し声が聞こえた。
盗み聞きは良くないと思っていたヒスイだったが、自分の名前が出た事で足が止まった。
「なんなのよ、あのヒスイって女…!」
怒りを含んだ声に、ビクリと肩が震える。
「他の隊長に贔屓されてるのは別にいいわ。昔からの知り合いなんだから。でもエース隊長は違うのに、あんなに引っ付いて……!」
「周りに甘やかされてるから、勘違いしてんじゃないの?」
「今日の事も、エース隊長はきっと迷惑だったに違いないわ!あの女をワザと預けていった事を知ったエース隊長が、マルコ隊長を睨んでいたもの」
その言葉にヒスイは目を見開いた後、気付かれないようにその場を急いで離れた。
(……そっか、マルコさんがエース君と2人にしてくれたのか)
自分を可愛がってくれているマルコの気遣いに嬉しく思うと同時に、エースの反応の事も聞いてしまって落ち込んだ。
その事もあって、ヒスイはエースの元に行かずに白ひげと共にいたのだ。
「ヒスイ、どうした」
「えっ!?ううん、なんでもないよ」
白ひげに突然問われ、ヒスイは何でもないと首を振ったが、その反応に白ひげは目を細める。
「何でもない…か。ヒスイはおれに隠し事をするようになったか」
そう言ってやれば、ヒスイは慌て出すものだから白ひげは笑いそうになる。
なんとか我慢していると、ヒスイは口をぱくぱくとさせた後、白ひげに体を預けて口を開いた。
「おじ様…凄く今更なんだけど、エース君……私のこと迷惑に思ってる…よね」
ヒスイの言葉に白ひげは少し驚いた後、そっと頭を撫でた。
「エースに言われたか?」
「ううん、言われてない…」
「なら気にするんじゃァねェ。アイツは本当に迷惑だと思ったら、ハッキリ言いやがる」
ぽんぽんと背を叩かれ、ヒスイは顔を上げる。
「本当に?」
「あァ、本当だ」
そう返事をしてやると、ヒスイは嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、おじ様」
ヒスイは礼を言うと、ぴょんっと白ひげの膝から降りた。
「少し、元気出た!」
「そりゃァいいこった」
「ふふっ…お礼に、おじ様に踊るね。最近覚えたんだけど、健康と繁栄を願う踊りなんだ」
ヒスイ履いていた靴を脱ぐと、深呼吸をする。
「縁起の良い踊りだな」
その言葉にニコリと笑った後、ヒスイはゆっくりと動き出した。
「エース隊長、聞いてます?」
「ん?ああ。聞いてる聞いてる」
エースはそう言って酒を飲んだ。
(つまらねェ)
いつもなら楽しいはずの宴が、いまいちつまらない。
美味い料理もあれば酒もある。
皆とワイワイ話して、いつもと同じ楽しい宴のはずなのに。
そう考えていると、膝に何かが乗るのを感じた。
チラリと見ると、それはいつの間にか隣に来てずっと話しかけてきていたナースの手だった。
「エース隊長、楽しくないですか?」
そう覗き込んで来たナースに、少し笑う。
「いや、楽しいよ」
そう言ってナースの手を退けて立ち上がる。
「え、エース隊長。どこに?」
「ん?別のとこ。他の奴らとも飲まねえとな!」
「だったら、私もご一緒しても?」
「え?いや…お前はここで飲んどけよ」
立ち上がろうとしたナースにそう言うと、エースは離れていく。
その背をナースはギリっと歯を食いしばり見ていたが、別の船員に話しかけられて慌てて笑顔を向けていた。
(なーんで、いまいちつまんねェんだろうな)
うーんと頭を捻りながら、マルコやサッチと飲もうと探していると、白ひげの周りがやたらと静かなことに気付いた。
別に人がいないわけではない。
なんなら探していたマルコやサッチはそこにいて、集まれば騒ぎそうな面々もそこにいたが、ジッと静かにして何かを見ている様子だった。
興味が湧いて白ひげの方へ向かうと、目に入った光景にエースは思わず目を奪われた。
踊るヒスイがいたのだ。
月に照らされた髪は太陽に照らされている時とはまた違う輝きを見せ、着ている白いワンピースも相まってどこか神秘さを感じる。
「ふぅ…どうだった、おじ様?」
「グラララ……綺麗だったよ」
「き、綺麗!?えっと…ありがとう」
踊り終えたヒスイが白ひげに尋ねると、笑いながら白ひげはヒスイの額に浮かんだ汗を拭ってやった。
綺麗だと言われて照れるヒスイは、えへへと笑った後に周りを見て目を見開いていた。
「わっ!いつの間にか人がいっぱい」
「ヒスイの踊りをツマミに飲む酒はよかったよ!」
そう言ってハルタが笑うと、ヒスイも嬉しそうに笑った。
「ほれ、少し水分でもとりな」
イゾウが渡した水を受け取ると、ヒスイは一気に飲んで「ぷはー。美味しい」と笑った。
「ところで、そんな踊りどこで覚えたんだい?」
「んーっとね…皆と会う前に寄ってた夏島のお姉さんが教えてくれたの」
頑張って村に寄ったの!とっても良い人だったよと話しているヒスイをエースが見ていると、バチッと目があった。
ヒスイはエースが来ていたことに驚いたのか、目を丸くした後に嬉しそうに笑った。
それにドキッとしていると、誰かに肩を組まれた。
「よおエース、お前はヒスイちゃんに声をかけないのか?」
そう言ってきたサッチにエースは俯く。
「な、なんて声をかけたら良いか…わかんねェ」
「なーんでも良いんだよ。お前からのお褒めの言葉なら、何でも喜ぶと思うぞ」
「おら、行ってこい!」と背中を押されてヒスイの前に飛び出る。
急に目の前に来たエースをヒスイは不思議そうに見つめた。
「どうしたの?エース君」
「あ、いや…」
この野郎とサッチを睨みつけると、サッチはニヤニヤとしていた。
ついでに言うならば他の面々もニヤついており、白ひげまでニヤリとしていた。
その様子にエースはガシガシっと頭を掻いた後、ヒスイを見る。
「その…途中からしか見てないけど、踊り……綺麗だった」
「ほ、本当に…?えへへ……ありがとう」
ふわりと笑ったヒスイに、エースはブワッと体が熱くなるのを感じた。
「わわっ、エース君。体が燃えてる!」
「あーヒスイ、気にするな。大丈夫だよい」
肩の辺りから火を出すエースにヒスイは慌てたが、マルコの言葉に「大丈夫ならよかった」と笑った。
「ほれ、若いもんは2人でちょっと話してきな」
笑うイゾウにそう言われて、輪の中からエースとヒスイは追い出される。
「えっ、ちょ!」
エースが振り返るが、既に皆は白ひげとの会話に夢中になっていた。
エースが頬をポリポリと掻いていると、ヒスイがヒョコッと顔を覗き込む。
「エース君も、おじ様と話したいよね?私、もう部屋に戻るから…行っても大丈夫だよ?」
自分を気遣うようにそう言ったヒスイに、エースは息を吐くと笑った。
「いや、気にしなくていい。後でまた行くからよ。それより…戻る前に少し飲まないか?」
「うん!」
エースが誘うとヒスイは嬉しそうに笑った。
その後はたわいも無い話を2人でしていたが、さっきまでとは打って変わって楽しさをエースは感じていた。
(ヒスイといるからか?)
エースはそう考えたが、自分でもよく分からなかった。
ただ、目の前で楽しそうに話すヒスイを見ているのは気分が良くて、エースは笑った。
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