お嫁さんになりたい
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「野郎どもー!かかれー!」
「返り討ちにしてやれー!」
とある日、白ひげ海賊団は命知らずな名も無き海賊団からの襲撃を受けていた。
襲撃といっても力量の差は一目瞭然で、あっという間に片付いた。
さて、と白ひげ海賊団1番隊隊長のマルコは念のために被害が無いか船を見渡す。
怪我人なし、船の損害もなし、問題なさそうだねいと笑った時、背後が騒がしい事に気付いた。
「おい!どこに行ったんだ!?」
「わかんねえ!」
「とりあえず、ナミュール隊長を呼んでこい!」
「おい、どうした」
慌てている船員に声をかけると、全員揃ってくるっと振り返り口を開いた。
「エース隊長が海に落ちたがどこに落ちたかわからない!」と。
落ちた、というのはたまにあるが落ちた場所が分からないのはかなり厄介だ。
既に何人かが飛び込んで探しているが、見つからないようだった。
「さっさとナミュールを連れてこい!」
そう言ってマルコは舌打ちをすると、その手を翼に変えて海面ギリギリを飛ぶ。
「エース!どこだ、エース!!」
声をかけても返事はないかもしれないが、それでも声をかけずにはいられない。
「マルコ、待たせた!」
ナミュールが海へと飛び込み、エース捜索に合流する。
「くそっ、どこに落ちやがった…」
「あのー……」
苛立つマルコが再度舌打ちした時、後ろから女の声が聞こえた。
バッと振り返ると、そこには太陽に照らされてキラキラと輝く長い金髪にサーモンピンクの目をした女が、気を失ったエースを抱き締めて海から顔を出していた。
「お探しはこの人?マルコさん」
「お前は……ヒスイじゃねえか!ああ、探してんのはソイツだ!ナミュール、来てくれ!」
「なら良かった。かなり深いところで溺れてたから、びっくりしちゃった」
ヒスイと呼ばれた女は微笑むと、エースをチラリと見る。
「ソイツも能力者でな」
なるほど、とヒスイが頷いた時、ナミュールが近付いてきた。
「マルコ!エース!それに……ヒスイ!?なんでここに」
「お久しぶりだね、ナミュールさん。とりあえず、先にこの人を上げちゃわないと」
ヒスイからエースを受け取ると、ナミュールは急いで船へと戻っていった。
「ヒスイ、礼をさせてくれ。少し船に上がらねえか?」
「んー、わかった。それじゃあお邪魔しようかな」
ニコリと笑ったヒスイを見てマルコは笑うと、周りを見る。
「お前ら!船に戻れ。後、オヤジとジェシーにヒスイが来たと伝えろ。名前を言えば分かる」
「はい、隊長!」
マルコの言葉に従い、エース捜索のために海に入っていた船員達は船に戻っていく。
「おれ達も行くよい」
「よいよい〜」
ヒスイはマルコの口癖を真似して返事をすると、スィーっと泳ぎ出す。
船に着くと小舟が降ろされており、そこへヒスイは乗った。
「引き上げてくれ!」
マルコの声を合図に小舟はモビー・ディック号へと引き上げられる。
甲板に着くと、マルコはヒョイっとヒスイを抱き上げて小舟を降りた。
「ヒスイちゃん!お久しぶゲフッ…」
「邪魔だよい」
話を聞きつけて待っていたサッチが抱きついてこようとするのをマルコが蹴り倒すと、甲板に出てきていた白ひげの元へと向かう。
「久しぶりだなァ、ヒスイ」
「白ひげのおじ様!お久しぶりですー!」
白ひげはヒスイを見てニッと笑った。
そして大きな手を差し出すと、ヒスイはその手にピョンっと飛びつく。
白ひげはヒスイが落ちないように抱き寄せると、ぐりぐりとその頭を撫でた。
「息子が迷惑かけたな」
「新しい息子さん?前はいなかった気がする」
「ああ。最後にヒスイと会った後に乗ったんだ」
へぇ〜っとヒスイは頷き、甲板に転がされているエースを見た。
「大丈夫なの?」
「飲んじまった海水は全部吐いたし、処置も済んでる。そのうち目を覚ますだろうよ」
「ならよかった〜」
ニコニコとヒスイは笑う。
「お、おい…知り合いなのか?」
「さ、さあ…」
そんなやりとりを見ていた一部の船員は、やけに親しげな白ひげとヒスイを見て頭にハテナを浮かべていた。
「ああ…ここ2〜3年に入ってきた奴らは知らねえか」
「ヒスイは昔からの知り合いだ。たまに遊びに来るから、その時はしっかりともてなせ」
近くにいた古株がそう言うと、話していた船員達は「はい!」っと返事をした。
「白ひげのおじ様、彼の様子を少し見たいわ」
「ああ、構わねえ」
白ひげはそう言うと、エースの横にヒスイを下す。
まだ目を覚さないエースを心配そうに見ていると、パチっと目が開いた。
「あ、起きた?」
「………え?誰?」
「お前の命の恩人だ。アホンダラァ」
ニコリと笑ったヒスイにエースが問いかけると、白ひげが笑いながらそう言った。
声に弾かれるようにエースは起き上がると、周りを見た。
「おれ、吹っ飛ばされて確か海に…」
「ったく。探すのが大変だったよ。ヒスイがいなかったらどうなってたか」
「ヒスイ?」
マルコの言葉にエースが首を傾げると、ちょんちょんと腕をつつかれる。
「はじめまして、ヒスイです」
「あ、はじめまして……ってことは、アンタが助けてくれたのか?」
ヒスイが頷くと、エースは満面の笑みを浮かべた。
「すまねェ、助かった!ありがとうな」
「はうっ……!!」
エースの感謝の言葉を受け取ったヒスイは、バッと胸を押さえて俯いた。
どうしたんだとエースが顔を覗き込もうとすると、ヒスイはバッと顔を上げてエースの手を握った。
「私、今あなたの笑顔に心を奪われました」
「えっ……?」
「あなたのお嫁さんにしてください!!!」
突然の言葉に、船の上には驚きの声と白ひげの笑い声が響き渡った。
「おいおいおいおい!!!」
「嫁って、ヒスイちゃん、正気か!?」
「むっ!私はいつでも正気だよ!」
頬を膨らますヒスイにサッチやラクヨウが問い詰める。
一方、突然嫁にしてくれと言われたエースは固まっていたが、ハッとしてヒスイを指さした。
「いやいやいやいや、急に嫁にって…アンタ、人魚じゃないか!」
エースが指さした先、ヒスイの下半身は魚の尾になっていた。
「人間と人魚でも結婚出来ますよ?」
「いや、そりゃ出来るけどよ…そもそも、アンタのことよく知らないし、いきなりそんなこと言われても…」
「これから是非、知ってほしいわ!」
「知ってくれって言われても、人魚の女は30歳になるまで海の中で生活するんだろ?おれは海の中には行けねえしよ…」
「陸の上なら大丈夫?」
「え?ああ…まあ……多分?え?アンタもうそんな歳なの?」
「この前20歳になったばかりだよ」
じゃあまだまだダメじゃねえかとエースが痛む頭に手を当てた時、ヒスイがにっこりと笑った。
「私、他の皆とちょっと違うので安心して!」
「違う?」
ヒスイは頷くと、すっかり乾いた尾を撫でる。
「ちょ、ヒスイ、待つよい!」
「ジェシー!早くしろー!」
慌てるマルコとサッチ。
他の面々も慌て出し、更には白ひげがその大きな手でヒスイの尾を周りから隠すように手を翳す。
それを不思議そうに見ていると、パタパタとナースのジェシーが走ってきた。
「ごめんなさい、お待たせ!ほら、ヒスイ。手を上げて!」
「はーい」
大人しく手を上げたヒスイは、ジェシーにボフッと何かを被せられる。
それは白いワンピースのようで、ヒスイが服を纏ったことに面々は安堵のため息を吐いた。
「ソレをするのは、ちゃんと服着てからって言ったでしょ?」
「ご、ごめんなさい…」
ヒスイはジェシーに謝った後、満面の笑みでエースを見た。
「エース君、これならいい?ちゃんと陸の上にいれるよ?」
「えっ?」
ぽふっと、軽い衝撃を感じて下を見ると、自分の足の上に細く白い誰かの足が乗っていた。
持ち主を辿ると、それはヒスイの足だった。
「あれ……足?」
「うん。私の足!」
ニコニコと笑うヒスイに、エースは頭を捻る。
「あれ?お前…人魚だよな?」
「うん」
「20歳になったばかりで……?」
うんうんと頷くヒスイに、エースの頭の中は更に混乱する。
それを見かねたマルコが溜息を吐くと、ヒスイの頭をポンっと撫でた。
「ヒスイ、エースの頭がこんがらがってる。少し休憩させてやれ」
「そうなの?ごめんね、エース君」
申し訳なさそうにするヒスイにエースが片手で大丈夫だと示すと、流れを見守っていた白ひげが笑った。
「ヒスイ、暫く泊まっていけ。それに今日は久しぶりに宴でもしようじゃねェか」
「わぁ!いいの?ありがとう、白ひげのおじ様」
ヒスイは満面の笑みを浮かべると、白ひげに駆け寄り抱きついた。
白ひげはその様子を見て、グラララ…と上機嫌に笑った。
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