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「~♪」
黙々と仕事をする霞槻の背後にはやちるがご機嫌でへばり付いていた。
何時もは剣八と共にいるのに、霞槻が戻ってきてからは彼に引っ付きっぱなっしだ。
仕事に支障は無いため、やちるの好きな様にさせている。
「ねーねーかっちゃん」
「どうした?」
「皆いないねー」
やちるは霞槻の髪をクルクルと弄りながら回りを見る。
「そりゃ…隊長が皆を引き連れて鍛練所に行ってますからね」
「かっちゃんは行かないの?」
「俺まで行ったら書類で溢れ返りますよ」
笑ってやちるを見ると、やちるはんーと首を傾けた。
「ダメなの?」
「俺がいない間に文句言われたりしませんでした?」
「ん~言われたかも」
口に指を当てて首を傾けるやちるの頭を撫でた。
「だろ?だからなるべくしないとダメなんだ」
「でも、かっちゃんも鍛練所行きたくないの?」
「行きたいですよ?」
やちるは霞槻に尋ねるが、ほんとは自分が行きたいのだ。
だけど霞槻と離れるのも嫌なのだ。
「じゃあ、行こうよ!!」
「副隊長」
服を引っ張るやちるを抱き上げ、膝に乗せる。
「俺は副隊長と遊びたいと思ってます。しかし仕事をしないと副隊長と遊ぶ時間が減るんです。俺は一角に弓親に…隊長にも仕事をして欲しいとは言ってるんですけどね…」
はぁ…と溜め息を吐き、ギュッと抱き締める。
(子供…癒される)
霞槻が癒されていると、やちるに頭を撫でられた。
「やちるちゃん?」
「あたしが剣ちゃんもつるりんもちかも怒って来てあげる!!!」
にこーと笑うやちるに一瞬驚いたが直ぐに笑った。
「頼みました」
「うん!!」
笑顔で執務室から出ていったやちるを見送った後、再び書類と睨み合いをする。
すらすらと筆を動かす霞槻の横から山が無くなっていき、反対側に新たな山が出来ていく。
(これは一角…これは隊長、これは弓親、これはやちるちゃんのお使い…これは適当)
一枚一枚の書類を仕上げながら、渡す相手も分別していく。
それを繰り返して早数時間…
(……もう4時か)
終業時間も刻々と迫っている。
「………」
隊長達が鍛練所に行ったのは確か昼前。
「………ククッ」
霞槻は笑って持っていた筆を折った。
「あの~すみません…」
恐る恐る扉を開けて此方を覗く人物に視線を向ける。
「四番隊の者です…しょ、書類を持ってきました~」
顔を覗かせたのは山田花太郎だった。
「花」
「あれ?霞槻さんだけですか?」
声をかけると、中には霞槻しかいないのに気づいて花太郎は笑顔を浮かべた。
「そうだぜ。それより書類」
「あ、はい。上位席官の方のサインがいるので霞槻さんがいて良かったです」
嬉しそうに笑う花太郎に、霞槻は思わず抱き着いた。
「花太郎…お前は癒しだ」
「え?え?//」
顔を赤くしてわたわたと花太郎がしていると、執務室の扉が再び開いた。
「いい運動だったぜ…」
「しかし、隊長は相変わらず強いね」
話しながら入ってきたのは我が隊の隊長更木剣八を筆頭にその他の隊員諸々。
「あ?何してんだ?」
「ひぃっ!?」
剣八の睨みと霊圧に花太郎は震える。
「花、大丈夫だよ」
ぽんぽんと背中を撫で、自分の霊圧で花太郎を守る。
「花太郎は書類を持ってきてくれただけです」
ヒラヒラと書類を見せると、剣八はふんと鼻を鳴らした。
「おい…霞槻。隊長が聞いたのはそれじゃねえと思うぞ」
「え?何?」
「何でその子に抱き付いてるか、じゃないかな?」
弓親は冷たい笑みを花太郎に向ける。
「あぁ…理由、聞きたいんスか?」
「………」
目が‘話せ’と促す。
座っていた霞槻は花太郎を抱き抱えながら立ち上がった。
「昼前に鍛練所に消えた皆様の分の有り得ない程溜められた書類を処理し終えたところに偶々書類を持ってきた花太郎が癒しのオーラを放ってたので抱き付いてました何か問題でも?」
一気に捲し立てた霞槻の回りからは黒いオーラが放たれている。
流石の剣八もその気迫に一歩後退る。
「俺は今日の分の仕事をきっちり終えたので自由にさせて頂きます。各々がするべき書類はちゃんと分別してますので残り少ない時間で全て終えて下さいね。ではお疲れさまでした」
笑顔に敬語で話す霞槻に隊員達はヒィィ!!!と悲鳴を上げた。
それを満足気に見た後、花太郎を抱いたまま部屋を出るため歩き出す。
「あ、そうそう」
忘れてた、と言って一度振り返る。
「隊長と一角が一番書類多いので、頑張って下さいね~出来てなかったら俺は他隊に異動願い出しますので」
「なっ!?」
驚く隊員達に手を振り、今度こそ部屋を出た。
「………おい一角」
「……はい、隊長」
「死ぬ気でやるぞ」
「…はい」
冷や汗を流しながら、皆はバタバタと動き出した。
「あ~マジ癒される」
四番隊でお茶を飲みながら、霞槻は呟いた。
「大分お疲れのようですね」
「もー、むっちゃ疲れましたよー」
卯ノ花にそう返事し、今だ腕の中の花太郎をギュッと抱き締める。
「あ、あの…」
「ん?」
「そろそろ離してもらっても「やだ」
「まぁまぁ、良いではないですか。花太郎も嫌ではないのでしょう?」
卯ノ花の言葉にウッと口を詰まらす。
そんな花太郎の頭を撫でていると、扉が開いた。
「失礼します。隊長、書類を持ってきました…巳山さん!?」
入ってきたのは勇音で、驚く彼女に手を振る。
「よっ、勇音さん。いいタイミング」
「え?どうゆう、きゃっ」
勇音が卯ノ花に書類を渡したタイミングで勇音の手を引く。
「やべ…両手に花」
幸せそうな表情を浮かべる霞槻に対し、抱き締められている2人は顔を真っ赤にしている。
その光景をフフッと笑って見ていた卯ノ花だが、何かに気づいて扉を見た。
「霞槻、お迎えが来たようですよ」
「…みたいですね」
霞槻は2人から手を離すと、ゆっくり立ち上がった。
「たっぷり癒していただいてありがとうございました」
「…どういたしまして?」
霞槻のセリフに花太郎は首を傾ける。
霞槻は微笑むと、部屋を出た。
「………」
四番隊隊舎を出ると、扉に背を向けて何かを考える人物がいた。
「何してんスか?隊長」
「!?………全部、終わらせたぞ」
剣八は振り返りながらそう言った。
「そうですか」
「帰るぞ」
霞槻は笑った。
「了解ッス。お疲れさんです、隊長」
「ふんっ!!」
ドスドスと歩きだした剣八の後を小走りで追い掛けた。
END 十一番隊