花魁少年
名前変更
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「随分とお久しぶりですね」
「あぁ…京都の葵屋にいたんだ」
「葵屋ですか。操さんはお元気で?」
「ああ、驚くぐらい元気だ」
穏やかな表情を浮かべる蒼紫につられ、杏も微笑んだ。
「また色々なお話聞かしてください」
「…何が聞きたい」
「四乃森様のお話なら、なんでも」
甘えるように擦りよると、蒼紫は優しく包み込む。
笑わない彼も、杏の前では頬が緩む。
「そうだ、今日は葵屋の皆さんの話が聞きたいです」
「葵屋の?」
「はい。…駄目ですか?」
下から覗き込まれ、蒼紫は柄にもなくドキリとした。
「…仕方ない」
そう呟くのは蒼紫が杏の甘えに負けた時だ、もちろん蒼紫が勝った試しはない。
杏は用意した茶を蒼紫に渡し、話が始まるのを待った。
つらつらと言葉が溢れでる。
普段喋らない俺しか知らない奴が見たら、絶句ものだろう。
だが、何故かコイツの前では言葉が次々と紡がれる。
コイツが聞き上手なのもあるかもしれないが、それだけではない。
(単純に杏と話したいだけ)
時折茶を飲んでは喉を潤し、言葉を紡ぐ。
空になった湯飲みに杏は茶を注ぐと、また楽しそうに蒼紫を見る。
(いい顔をする)
俺の話を聞いてる時のコイツの表情は見ていて飽きない。
髪を撫でながら、ゆったりした時間を満喫する。
(こんな俺を誰が想像するだろう)
あの般若でさえ、知らない一面。
口で話しながら違う事を考えていたら、杏が蒼紫の服を掴んだ。
「四乃森様」
「なんだ」
「お話、ありがとうございます」
蒼紫の話に満足した杏は、ニッコリと笑った。
「構わん」
蒼紫は杏の髪を撫でると、口付けを落とした。
触れるだけの口付けをした後、蒼紫はすぐに離れる。
いつもそう、先の事を蒼紫は中々しようとしないのだ。
(魅力がないのか、抱くのがただ単に嫌なのか)
その考えは両方外れていて、蒼紫は体だけの関係のように感じてしまうから中々抱かないだけなのだが。
「四乃森様」
「なんだ」
「…いえ、何でもないです」
にこりと笑い、暖かい体に身を寄せた。
ゆったりとした空気に目を閉じると、蒼紫はフッと笑った。
END 客その弐、御頭