花魁少年
名前変更
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「お待たせいたしました」
部屋に戻ると、思った通り、酒を飲む斎藤。
何も言わずに酒を飲み干した彼に近づき、隣に座り、徳利を手に取る。
「………」
無言で差し出された杯に酒を注ぎ、それを口にする彼をジッと見つめた。
「……何だったんだ?」
「ここで働いてる1人に用があったようです。今は仕事中なので、一度お引きとりしてもらいました」
さっきの騒ぎのことを聞いてきた斎藤にそう告げた。
彼は興味なさげに視線を逸らすと、杏を引き寄せた。
大人しくされるがままにしていると、斎藤は徳利を奪い机に置いた。
「斎藤様?」
杏は彼の名を呼びながら、優しく手を重ねた。
(甘えてくるなんて、珍しい)
自分の肩に頭を乗せる彼に、笑みがこぼれた。
「何かありましたか?」
「……」
少し首を捻り、彼の顔を覗く。
「………なんでもない」
フイと視線を逸らす斎藤だが、杏は彼が拗ねる理由がわかった。
来て早々ほったらかしにされたのが、気に食わなかったのだ。
「斎藤様、今夜のお客様は斎藤様以外はお断りしました」
「ほう…」
「なので…機嫌をなおしていただけませんか?」
彼の腕の中で向きを変え、ジッと彼を見上げる。
「お前にしては上出来だな」
ニヤっと笑った斎藤は、杏の後頭部に手を回すと、そのまま口付けた。
「ん…斎藤様…」
名を呼べば、彼の細い目はさらに細められた。
(ああ…これは)
「一さん」
「それでいい」
口を離してそう言われ、杏は笑った。
「一さんは私の前では甘えん坊になりますね」
「黙れ阿呆が」
「酷いですねぇ」
クスクスと笑う杏。
それを不快な目で斎藤は見るが、内心は穏やかだった。
あの冷徹な彼からは想像出来ないほど、穏やかな表情も浮かべていた。
「一さん」
「なん…」
だ。と続く最後の言葉は口付けで飲み込まれた。
斎藤は杏からの口付けを受けながら、手は帯を解くために動いていた。
シュルリと帯が解けると、彼の着物はするすると肩を滑り落ちる。
「あっ…」
少し戸惑って、服を掴んだ。
「手をどけろ」
「はい…」
言われた通りに服を掴んだ手をどける。
斎藤の手によって、打掛は剥ぎ取られ、間着だけになる。
「はじ、めさん」
間着の上から手を這わされ、くすぐったくて身を捻る。
「なんだ」
「私ばかり脱がせるなんて、酷いですよ」
「なら、お前が俺を脱がせばいいだろう」
意地悪く言う彼のこの発言は、今に始まったわけではない。
初めて彼と体を重ねた時から、ずっとこの調子だ。
それに慣れた様子の杏は、彼の上着を脱がせ、シャツに手をかけた。
(この脱がせる行為、ちょっと照れるんだよなぁ)
一瞬戸惑ったが、勢いよく彼のシャツを脱がした。
「これでいいですか?ん…!!」
言葉を言い終わるや否や、間着の隙間から手を入れられ、ピクリと体は反応した。
「はじ…めさ、ん」
いつの間にか前は完璧にはだけており、斎藤は杏の胸の飾りを弄んでいた。
「ん、あっ…」
「相変わらず、感度がいいな」
意地悪く笑う斎藤をジッと睨むが、潤んだ瞳ではなんの効果もない。
それがわかっているため、睨む事は直ぐにやめた。
「ん、あぁ…」
体に与えられる刺激に反応しながら、杏は斎藤の首に腕を回した。
(ほんとにコイツは、いくら抱いても飽きない)
自分の愛撫に声を上げる彼に、斎藤はほくそ笑む。
抱いても、抱いても、返ってくるのは生娘のような初々しい反応。
(コイツは男だが)
普段過ごしている時も、とても面白い奴。
そんなコイツに、情けない話、溺れているのも事実で、こうしてコイツに会うためにこの遊廓にも来ている。
「一さん…あっ!!」
彼の声が心地よくて、揺すっていた腰を止める。
「一さん…?」
名を呼んだ杏の額に口付け、再び腰を揺する。
「んんっ…!!」
ぎゅっと目を瞑った彼に笑い、髪をそっと撫でてやった。
誇り高き壬生狼をここまで手懐けたのは、彼が初めてかもしれない。
END 客その壱、狼