花魁少年
名前変更
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「おろ?」
「あ?」
偶々出掛けていると、町でばったり会った2人。
「剣心じゃん」
「今は…紅杏で良かったでござるか?」
「あぁ」
ニッと笑うと、剣心も笑った。
「じゃあ…おいとましようか…「少しお茶でもどうでござるか?」
そそくさと去ろうとしたら剣心に肩を掴まれた。
紅杏はふぅ…と溜息を吐くと、頷いた。
「………」
「………」
互いに言葉を交わさず、時間が過ぎる事早30分。
沈黙を破ったのは剣心だった。
「拙者…」
「ん?」
「やはり紅杏に京で会った気がするのでござる」
剣心の言葉に、一瞬紅杏の目が揺らいだ。
「京で?俺と?」
頷く剣心に紅杏はククッと笑った。
「そう…俺とねぇ…」
紅杏は茶を置くと、剣心の顔を掴んだ。
「!?」
「会った事あるの、俺だけか?」
ギラギラとした眼差しに剣心は身震いした。
「なぁ、緋村さん…会った事あるの、俺だけ?」
紅杏の手の力が強くなる。
息苦しさにヒュッと呼吸音が鳴った時、紅杏は手を離した。
「帰るよ、掴んで悪かった」
お金を置いて立ち上がる彼に剣心は何も言えなかった。
「ちっ…」
つい熱くなってしまった。
(覚えてるわけないだろ…)
あいつらにとってはただの仕事だったんだ。
「兄様…いらっしゃいますか?」
控え目に声をかけてきたのは胡桃だった。
「いるよ」
入っておいで、と声をかけると胡桃はゆっくり襖を開けた。
「どうした?」
「今日1日、杏を買いたいと言う者が」
頭を下げながらそう言った胡桃に目を細めた。
「剣心か」
「はい」
紅杏から杏の表情へ変わった彼は立ち上がり、胡桃を抱き上げた。
「あ、あの」
「緋村はまだ入口にいるかい?」
頷く胡桃の髪を撫で、入口へ向かった。
「私を買いたいとは、いったいどんなご用だい?」
髪をおろした杏が入口へ来ると、爺と話していた男が振り返った。
「拙者、話をしたくて」
「………」
ジッと二人は見つめあった後、杏はクルリと踵を返した。
「ついてきなよ」
その言葉に剣心は後をおいかけた。
普段は誰も使わない客室で、2人は移動した。
「何用?話などないと思いますが」
「拙者、京で紅杏と会ったでござる」
「……その話は終わっ「爺さんもいた」
続いた言葉に杏は驚いた。
「どういう事で?」
「拙者、任務で遊廓に行った事があるでござる」
その言葉を聞いて、杏は剣心がちゃんと思い出したのだとわかった。
「杏が必要以上に拙者と関わりたがらないのは…そのせいでござるか?」
捨てられた子犬のように不安げに見てくる彼に思わず笑ってしまった。
「ふ…ふふ…」
「杏…?」
肩を震わせ暫く笑った後、微笑んだ。
「さっきまではそうだったけど…もういいや」
「おろ?」
「あんた、任務とはいえ、俺の居場所を奪った事に責任は感じてるか?悪いと思っているか?」
紅杏の顔に戻った彼に、剣心は頷いた。
「なら、別にそんな落ち込まなくていいさ。俺は別に怒ってねーし」
今はな、と笑った紅杏につられ、剣心も笑った。
「ふ~俺、幕末の剣客は基本嫌いだ。でも、あんたは嫌いじゃないよ」
微笑む紅杏に思わず剣心は手を伸ばしていた。
紅杏は剣心の手を掴むとグイっと自分のもとへ引き寄せた。
「何?」
「あ、いや…//」
照れて視線をキョロキョロと動かす。
そんな剣心の唇に軽く口づけた。
「な…!?//」
「こうしたかったんだろ」
そう言って笑うと、剣心は真っ赤になった。
(わっかりやす)
「ちが、拙者、その」
「落ち着けって」
笑いながら頭をぽんぽんと撫でると剣心は深呼吸した。
落ち着いたのがわかると、紅杏は剣心を腕から解放した。
「さて、私はこの後客が入ってるから、今日はお別れ」
杏の顔に戻った彼を、剣心は寂しそうに見ていた。
「また会えるさ」
だから今日はお帰り、と彼に言葉をかけた。
剣心は渋々といった形で立ち上がると、名残惜しそうに部屋を出た。
(ほんとにあれで剣客か…?)
だが、彼みたいな剣客がいてもいいかもしれない。
杏はフッと笑みを溢し、立ち上がった。
END 幕末の剣客