獣達の世界
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教室に戻るとかすがちゃんに再びどこに行っていたのか怒られたが、軽く謝って自席へと戻った。
どうやら知らない間に6限目も自習になっていたそうだ、何があったのだろう。
まあ、別にいいやと本でも読もうかと鞄を漁っていると机に影が出来た。
「………?」
不思議に思い顔を上げると、そこには真田が立っていた。
「……………」
「……………」
「……何?」
「す、すまぬ!」
顰めっ面の真田に声をかけると、ワタワタと慌て出した。
とりあえず、座れば?と自分の前の席を指差すと真田は大人しく座った。(席の主は今は友達の席へとわざわざ話に行っている)
「…で?何用?」
出来れば私は貴方に関わりたくないんだけど、との言葉は飲み込み真田を見る。
「そ、そ、その、だな……」
「うん」
「…………結城殿に、だな………」
「うん」
そこまで言って黙り込む真田に溜息が出そうになる。
(一体何なんだろう)
根気よく待っていると、意を決した様子の真田が口を開く。
「某は、真田源二郎幸村!猫又、重種のベンガル虎である!」
「う、うん。知ってる」
「結城殿!…そ、そそ、某と婚約してほしい!!!」
顔を真っ赤にして言った真田の言葉に、開いた口が塞がらない。
クラスメイト達はこちらを驚いた様子で見ていたが、斑類の会話だ、猿人お得意の聞か猿・言わ猿・見猿で何事もなかったように各々会話の続きを始めた。
だが、かすがはそうもいかない。
「おい、真田!貴様何を言っている!!」
怒った様子で駆け寄ってきたかすがは、真田を睨みつける。
「雅が先祖返りと分かった途端、それか!見損なったぞ!!」
「いや、そういう訳では…「雅!こちらへ来い!」
「あ、ちょっ」
かすがに腕を引かれて自席からかすがの隣の席へと移動させられる。(かすがの隣の席の男の子は睨みに怯んで席を譲っていた)
雅は幸村が他に何を言おうとしていたのか少し気になったが、まあいいかとかすがの機嫌をとる事にした。
守ってくれるなんて、本当にいい友達だ。
嬉しくてニコニコしていると何を笑っていると睨まれたが「何でもないよ」と返事をしておいた。
「…………」
翌日、昨日は行かなかった図書室の前に雅は立っていた。
昨日は何となく避けたが、やはりここでする読書の時間は私にとっては至福の時間なのだ。
深呼吸をすると、図書室の中へと足を踏み入れた。
「おはようございます」
「おお、おはよう」
「…………」
そこにはいつも通り、北条と風魔がいた。
2人とも特に何かを聞いてくることもなく、普段通りだ。
その姿にホッとしながらいつもの定位置に行って読書を開始する。
やはりこの時間は至福だと本を読み進めていると、トントンと机が叩かれる。
もうそんな時間かと思ったが、いつもより早かった。
「……?」
いつもより早めの合図にどうしたのだろうと風魔を見ていると、グッと顔が近付いてきた。
「!?」
驚いて固まっていると、目の前まで迫った風魔の目が見えた。
「………気を付けろよ」
「……………へ?」
その目に気を取られていたが、ボソリと呟かれた言葉にハッとする。
真意はどうあれ、先輩は私の身を案じてくれているようだ。
離れて行った顔を思わず凝視していると、風魔は口角を少し上げて笑った。
「あ、えっと…気をつけます」
雅は頬を赤くしながらそう答えると、本を片付けて図書室を出た。
(あの人喋るんだ)
全く話さないから、喋れないのか敢えて話さないのか疑問だったが1つ解消した。
少し機嫌よく教室に向かっていると、前方に見えたガタイのいい同学年の生徒がこちらに気付いて手を振った。
「よっ!雅じゃねえか。おはよう」
「おはよう、慶次」
声をかけてきたのは別のクラスの前田慶次。
彼は熊樫の重種だが、その性格から何だかんだ仲良くしている。
とはいえ、学校に自分が先祖返りだと広まってから会うのは初めてだ。
内心ドキドキしながら近づくと、ポンっと肩を叩かれた。
「なーんか大変な事になってるけど、困ったら俺に相談しろよ?」
ニッと笑う前田に、雅は微笑む。
「うん、ありがとう」
「なに、惚れた女が困っていたら助けるのが道理だろうよ!」
その言葉に少し罪悪感が湧いたがもう一度礼を言った。
実は過去に彼に告白されたことがあるのだ。
階級を気にしない気さくな彼にドキッとした事もあるが、正直自分の気持ちは恋愛にまで行かなかった。
断った時に「わかった」と言うと同時に「でも諦めない」とも言われているので、あんな言葉を言われると心臓に悪い。
「とりあえず、生徒会の奴らには気を付けろよ。昨日は出遅れたが…秀吉や半兵衛は俺が止める」
生徒会の豊臣先輩と竹中君と慶次は何やら因縁があるそうだ。
止めてくれるなら大変ありがたいとお礼を言うと、「あと…」と周りを見渡した。
「政宗と元親にも気を付けろよ。アイツらと友達の俺が言うのもあれだが…狙ってるみたいだぞ」
もちろん、何を狙っているかは理解しているつもりだ。
雅は難しい顔で頷くと、「情報ありがとう」とお礼を言って教室に急ぐ事にした。
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