獣達の世界
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(ああああ、行きたくない)
いつもは早めに家を出るが、今日はギリギリまで家にいる事にした。
昨日の事を猿人の両親にもなんとか理解出来るように説明したかったが勿論伝わるはずもなく。
ただ、とにかくやばい事になった事はどうにか理解してもらえるように努力した。
私の焦りように休んでもいいと言われたが、流石にそれは断った。
元はと言えばバレてしまった元凶は鶴姫にあると思われるのだが、彼女の目には悪意は微塵もなかった。
そんな彼女を責める気にはなれず、やはり怒りは大谷へと向かう。
(いやもう本当にアイツはないわー)
ゆっくりと道を歩きながら昨日の事を思い出していると、沸々と怒りが再び湧いて来た。
(いきなり人のこと壁に投げる?ってか相変わらずアイツの得体の知れない力怖すぎるんだけど!!)
マジでありえないとプリプリしながら道を歩いていると、前方に見知った顔があった。
「……………」
「……………」
「……………」
「な、なぜ何も言わないのだ!」
焦ったように頬を赤くしてそう言ったのはかすがだった。
「あ、ごめん。おはようかすがちゃん」
「………おはよう」
まだ少しジト目だが、気にせず挨拶をする。
挨拶を返してくれたかすがと共に、学校へと向かい歩き出した。
「かすがちゃん、今日はどうしたの?」
「…どうしたとは、なんだ」
「だって、家はこっち方面じゃないでしょ?」
そう言うと、かすがはそっぽを向いた。
「………昨日の事を聞いたのだ。そ、そのだな……」
頬の赤いかすがの様子を見て、雅は笑みを浮かべてその腕に自分の腕を絡めた。
「心配して迎えに来てくれたの?」
「ち、ちがう!いや、違わないのだが…」
あーもー!と照れるかすがに益々嬉しくなる。
珍しい翼主であり、先祖返りである自分を心配して近くに来てくれたのだ。
「隠してた事、怒ってないの?」
「……怒ってはいない。ただ…少し寂しかったが。しかし、仕方のない事だろう?」
そう言ったかすがの言葉に、胸が暖かくなる。
「ありがとう、かすがちゃん」
「ふん!……さっさと行くぞ」
笑みを浮かべたかすがの言葉に頷き、学校へと歩みを進める。
(話回るのは早すぎー)
学校に着くと、斑類、特に重種からの視線が突き刺さる。
きっと大谷がすぐに話をばら撒いたに違いない。
あの野郎と心の中で悪態を吐き教室へと到着すると自席へと座る。
真田がチラチラと見てる気もしなくも無いが、知らん!
雅は無視を決め込むと、授業が始まるのを待った。
昼休みになり、お昼ご飯をどこで食べようかと考えていると教室の扉付近が騒がしくなった。
我関せずでいると、クラスメイトに呼ばれた。
「おーい、結城。お前に客だぞー」
「え?」
その言葉に視線を向けると、雅は口元を引攣らせた。
そこにいたのは……
「竹中…君」
「やあ、結城君。お昼でも一緒にどうかな?」
爽やかな笑顔で言った竹中に他のクラスメイトはキャアキャアと騒いでいる。
あの人顔は良いもんな。
でもな、猿人の君達にはわからないかもしれないがソイツは今の私にとって相当やばい。
ソイツは蛟の重種なんだ。
雅は引き攣った笑みのまま、口を開く。
「一応聞くけど…拒否権は?」
「……さあ?」
そう言った竹中の顔には「あると思う?」と書かれている様に見えた。
雅は逃げる事を諦めると、渋々彼について行った。
竹中に連れられてやって来たのは生徒会室で、そこには役員達がいた。
3年で会長の豊臣先輩、熊樫の重種。
同じく3年の黒田先輩、熊樫の中間種。
1年で役員の石田三成、蛇の目の重種。
同じく1年の島左近、犬神人の中間種。
私の悪夢の原因である2年の大谷君、蛟の中間種。
そしてこの竹中君、蛟の重種。
この部屋には関わりたく無いと思っていた斑類の人間で溢れていた。
「秀吉、待たせてすまないね。結城君も、まあ座りなよ」
「…………」
竹中の言葉に、雅は入口に一番近い場所へと腰を下ろした。
興味深々な感じで此方を見る島くんは石田君に頭を叩かれていた。痛そう。
「やれ、昨日ぶりだな」
此方を見る大谷は至極面白そうに笑っていた。許さん。
「半兵衛様、この者が…?」
「例の先祖返りってか」
黒田はそう言うと、雅をジッと見る。
「………なんですか」
「いや、これは随分と上手く隠してるな」
「去年、同じクラスだったのに全く気付かなかったよ」
始まった会話の内容に、眉間に皺が寄るのを感じた。
「一応聞くけど、なんで私はここに連れてこられたの」
「そりゃ…先祖返りなんてプレミア種。生きてるうちに会えるなんて奇跡だからね」
その竹中の言葉の裏にある意味を読み取り、更に皺が深くなるのを感じた。
要するに、こいつらは先祖返りで重種との繁殖率が高い私を囲おうと考えてるのだ。
(………うざっ)
大方考え付いたのは竹中君だろうが、遅かれ早かれ重種の面々とは顔を合わせることになっていただろう。
雅は素早く立ち上がると、生徒会室の扉へ駆け寄る。
「え!?どこ行くんすか!」
「帰るに決まってるでしょ。どう考えても竹中君の言葉は私には気持ちの悪いものだ」
扉を開けると、生徒会室を出る。
「おい、貴様!秀吉様と半兵衛様に失礼だぞ!」
その言葉に、雅は振り返る。
「竹中君の言葉は私に失礼だ」
睨んでくる石田に少しビビりながらそう答えると、足早に生徒会室を離れた。
「おいおい半兵衛、さっきの言葉は…」
「なんだい、官兵衛君」
にっこりと笑う竹中に黒田は慌てて口を閉ざした。
年下なのに怖いやつだ。
竹中は黒田が黙ったのを見ると、豊臣を見る。
「秀吉、どうだい彼女は」
「…先祖返りと言うだけあって、強い力を感じた。お前達の家も納得する様な相手だろう」
豊臣自身には既に決まった相手がいるが、竹中や石田達にはいない。
そして特に重種は繁殖力が低いことから繁殖力の高い相手を求めている。
お家のためにも子を成す必要がある。
「ふふ、結城君…必ず手に入れないとね」
竹中はそう言って笑った。
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