新生活
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慶次にあれやこれやと指示を出し、テーブルに食事の準備が出来ると、4人を見た。
「ご飯、どうぞ」
声をかけられ、4人はとりあえずテーブルにつく。
既に座っていた慶次は箸を持ってまだかまだかと待っている。
「俺はすることがあるから。二階の左奥の部屋にいるから食べ終わったら呼んでください」
じゃあ、と朱雀はその場を後にした。
「ふぅ…」
二階の左奥の部屋、軽い物置と化している部屋に朱雀はいた。
押し入れから布団をだし、シーツなどをかけながらある人物に電話をかける。
『は~い』
「颯、悪いけど明日から一週間俺行けねえわ」
『え?どゆこと?』
颯と呼ばれた電話の相手は驚いた声色で聞く。
「ちょっと色々あってさ、居候が5人程きたんだ。ソイツ等がとりあえず落ち着くまで一週間、俺は仕事を休む」
『え~そんな~』
「俺のレコーディングは終わってるからいいだろ?」
『も~仕方ないなぁ…朱雀は滅多に休まないし、ちょうどいい機会だね。ボスには僕から言っとくから』
「サンキュー」
礼を言って電話を切る。
それと共に、何か凄まじい足音が聞こえた。
ついでに雄叫びも。
「神無月殿ぉぉ!!!」
驚いて扉を開けて廊下を見ると、幸村が走ってこっちに向かっていた。
「神無月殿!!」
「うわっ!?」
朱雀を見つけた幸村はそのまま彼に飛びついた。
突然の衝撃に朱雀は立っていれなくて、布団に2人して倒れた。
「さ、真田さん、なにか?」
驚く朱雀とは反対に、幸村は満面の笑みを浮かべた。
「皆食事を終えたので、呼びにきたのでござる!!」
「そっか」
随分と早い食事だったが彼等の事だ、綺麗に平らげたに違いない。
「ところで神無月殿」
「はい?」
「その…某の事は幸村と呼んでほしいでござる」
突然の申し出に驚いて目を丸くする。
「また急になんですか」
「先程の発言を聞いて、某達は世話をしてくれる神無月殿にいつまでも知らず知らずに警戒心を抱いている自分達に気づかされました」
「………」
「神無月殿には迷惑をかけているのに、警戒心をいつまでも持っていた某達を許していただけぬか?そして…どうか仲良くしてほしいのでござる」
真剣な面持ちの幸村に、フッと笑ってその髪に触れた。
「わかったよ、幸村。それに政宗、小十郎、佐助。俺の事も朱雀でいい。これからよろしく」
幸村の後ろに視線を移し、立っていた3人に視線を向けた。
「Great!!!」
「世話になるな」
「俺様は忍だから疑う癖は中々とれないけど…これからよろしくね」
ニィっと笑う政宗、その横で微笑む小十郎、その横で頬を赤くして照れくさそうな佐助。
向こうが信じてくれるなら、俺も信じる。
それが信条の1つでもある朱雀は、皆が警戒をといてくれた事を嬉しく思った。
「さて、皆仲良くは別にいいんだけど…幸村はそろそろ朱雀の上からどいたらどうだい?」
慶次の言葉に幸村はハッとして自分の状態を見た後、顔を真っ赤にして後ずさった。
「そ、某…」
「あー、ヤバいねこれ」
佐助は朱雀のもとに急いで移動すると、その耳を塞いだ。
「破廉恥でござるぅ!!!!!!!」
その直後、幸村の大声が響いた。
「えーっと…大丈夫か?」
「大丈夫じゃねぇ」
「すまないでござる…」
幸村の大声にやられ、政宗は不機嫌だった。
すまなさそうに縮こまる幸村を見て溜息を吐いた後、時計を見た。
既に11時は過ぎているし、彼等の部屋を決めないと。
「えっと、この部屋のすぐ左2つと向かいの部屋とその左2つ、とりあえずこの6つの部屋以外は空き部屋になってるから好きな部屋を使ってもらって構わない。適当に家具が置いてるから、気に入った部屋があったらここの布団を持って行って寝ろ」
朱雀がそう言うと、佐助が手をあげた。
「なに?」
「あのさ、その6つのうち1つの部屋はこことして…他の部屋はなんなの?」
「…俺の部屋、書庫、衣装部屋、筋トレ部屋、仕事部屋。ちなみに一回のリビングを出て右奥にある部屋も仕事部屋だから勝手に入らないように」
「わかった」
じゃあ、解散。
そう言葉を告げると、5人は散って行った。
ふぅ…と溜息を吐くと、自分も部屋を出て一階に向かった。
風呂に入り、ズボンだけ履き、上半身はそのままで肩にタオルをかけたままリビングに戻ってくる。
時計は12時を回っていて、皆は気に入った部屋を見つけたのか、家の中は静まり返っていた。
「…ふぅ」
ソファーにボフッと座り込み、目を瞑って上を向く。
その瞬間、頬に冷たいなにかがつけられ、ゆっくりと目を開ける。
「………」
「ちょっと、何か喋ってよ」
「……ありがとう」
何故か佐助が立っていて、頬につけられたのは水だった。
受け取って水を飲むと、佐助がじーっとこちらを見てくる。
「何?」
「そんな疑いもなく飲んじゃっていいの?」
「まだ利用価値のある俺を佐助は殺さないだろう?それに、俺が今死んだらあんたらもこの世界で生きていけないだろ?」
佐助は苦笑した。
「バレてた?」
「いや、バレるとか以前に俺が佐助だったら、利用価値のある奴はまだ殺さない」
水を飲み干し、机にコップを置く。
「朱雀ちゃんってなんか…うん、適わないなぁ、ほんと」
「なんだよそれ」
朱雀はフッと笑った。
「っ…////」
朱雀の笑った顔を見て、佐助は思わず口元に手を当てて顔を背けた。
「佐助?気分が悪いならもう寝ろよ?」
「だ、大丈夫だよ。それに、忍はそんなに寝ない」
あはーっと佐助は笑った。
そんな佐助を見て、朱雀はムッとして佐助の頭に手を回すと引き寄せ、ボスッと自分の膝に乗せた。
「な、なに!?」
「佐助を否定する訳じゃないが、このご時世に忍は必要ないんだ。だから、佐助もゆっくり休めばいいんだから」
意外と柔らかい橙に指を差し入れ、そっと撫でる。
「忍は眠りが浅いのか?」
「まぁね」
「そっか…」
朱雀は悲しそうに笑った。
それを見て佐助は胸がズキンとした。
「……っ」
唇を噛み締め、佐助は思わず起き上がり、立ち上がった。
「お、俺様ちゃんと部屋で寝るよ。おやすみ」
佐助は黒い煙を残し、シュっと消えた。
「……?」
よく意味がわからなくて朱雀は黒い煙の残存を眺めていた。
「………」
部屋に戻った佐助は頭を抱えていた。
先程痛んだ胸。
忍として殺した感情が、殺した筈の感情が表に出ようとする。
(俺様…忍として崩れそう)
はぁ…っと深い溜息を吐くと、窓の外を見た。
それぞれの思いを胸に、夜は更けていく…
END 新生活