我が家にようこそ
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ガシャン、何かが割れる音がした。
昨日作詞をリビングでしたまま眠ってしまっていた朱雀は目を覚ました。
ソファーから起き上がって音の原因を辿ると、背後にある食事用テーブルで、そこにグラスを割った三成が座り込んでいた。
手を滑らせた、とかその類いではない。
何かに驚いて、悲しんで、ガシャンとやってしまった、そんな様子だった。
「三成…どうした」
声をかけると、ハッとして此方に気付いた三成が慌てて近寄ってきた。
胸元を掴まれたかと思うと、グワッと睨まれた。
「半兵衛様が、半兵衛様が…!!」
「半兵衛がどうした」
落ち着かせる様に自分の腕の中に引き寄せると背中をポンポンと叩く。
「半兵衛様が、消えた」
「…消えた?」
そう言われてみれば、気配がない。
時間はお昼時、皆がリビングに揃う時間だ。
「…光秀もか?」
頷いた三成にもしやと仮説を立てる。
「アイツが向こうに戻したのかもしれない」
「アイツ…?」
「自称神だ」
じゃないとこんな事起きないだろう。
「目の前で消えたのか」
「そう、だ」
「じゃあ確実アイツのせいだな。死んだわけじゃない、落ち着け」
背を撫でてやると、さらにぎゅうぎゅうと服を掴まれる。
「どうした」
雰囲気が変わったことに気づいて顔を覗くと、今度はポロポロと泣き出した。
ぎょっとして思わず手が止まった。
「なんで泣く」
「はんべ、さま、に、おい、ていかれ、た」
嗚咽を混ぜながら泣く三成は幼子に見えた。
朱雀はハァ…と溜め息を吐くと、三成の頭を自分の胸に押し付けた。
「なに、を」
「半兵衛も不可抗力だとは思うが…泣きたいなら泣け」
「ないて、など、いない…!!」
朱雀は何も言わずただ頭を撫で続けた。
三成も段々と落ち着きを取り戻し、そのまま眠ってしまった。
(嘘だろ…?)
朱雀が動けずにいると、テレビが点いた。
「不眠症の三成が泣いたとはいえ、人の前で眠るとは、やれ面白い」
視線を向けると、全身に包帯を巻いて御輿に座り宙に浮く男がこちらを見ていた。
「誰だ」
「われは大谷。三成と同じ軍にいる」
「…そうか。半兵衛や光秀はそっちに?」
「ああ、此方にいる」
「そうか…で、三成だけ置いていった理由は分かるか?」
「それはわれにも解らぬ。先程から小僧の姿も見えぬ」
朱雀はちっと舌打ちをした。
「おお、そう言えば忘れていた。もうすぐ修復が終わる、と言って小僧は消えおったの」
「修復が終わる?」
大谷がニヤリと笑うと、テレビが一瞬砂嵐になり、ついたと思えば例の少年が写っていた。
「ハロー☆ビッグニュースがあるんだ!」
「……」
「うっわ、そんな冷たい目しないでよー」
「今…こいつの仲間から修復が終わるって話を聞いた」
今だ眠る三成を指差し、朱雀は少年を見た。
「うんうんー終わったよ、今」
少年は真剣な表情になると、指を振った。
体の上から重みが無くなると、三成が徐々に消え始めていた。
「順次皆を戻していく予定なんだー朱雀にはいっぱい迷惑かけてごめんね?」
「いや…」
「あ、でもいきなり皆とさよならは寂しいだろうから、少しだけ会わせてあげるね」
少年が此方に向かって手を開くと、眩しい光に包まれた。
「っ…」
光が無くなり目を開くと一面真っ白の空間にいた。
(どこだ…?)
辺りを見渡していると後ろから人の走ってくる音がした。
くるりと振り返ると蒼と紅が見え、瞬時にヤバイと思った。
「DarlingVv」
「政宗殿!朱雀殿は政宗殿のだありんではないでござる!!」
随分前に別れた2人の筈だ。
ヤベェ、吹き飛ぶとぶつかる直前に目を瞑ったが衝撃は来なかった。
「大丈夫?朱雀ちゃん」
「………(主!!)」
声が聞こえて目を開くと両脇に佐助と小太郎がいた。
「2人共…」
「すまねぇな、政宗様が」
苦笑しながらそう言ったのは小十郎だ。
現れた面々に驚いたが、あぁっと納得した。
『少しだけ会わせてあげるね』
そう、これが最後。
「くぉっら!!お前ら俺を巻き込むんじゃねぇ!!!!」
「あ~あ、鬼さん巻き込まれたんだ」
「避けぬあやつが悪い」
元親に慶次に元就。
何だか久しぶりに見た面々にクッと笑った。
「私にも微笑んで下さいよ」
「君は相変わらずだね」
「アイツは豊臣に連れて帰るのだ、貴様は近付くな!!」
光秀に半兵衛にさっきまで一緒だった三成。
皆揃うとなんと騒がしい。
しかし、その騒ぎが今は楽しかった。
「お前ら」
朱雀の言葉に皆の視線が集まる。
「お前らと過ごした時間、それなりに楽しかった。ありがとな」
その言葉に、面々は各々の反応を返した。
「もう会うことはないんだろうが、お前らの事忘れねえ」
「当たり前だろDarling」
「某も忘れぬでござる!!」
「ちゃんとご飯食べなよ?」
「あの冊子、役に立ってるか?」
「……!!(体を大切になさって下さい!!)」
「いやぁ…今の酒美味いけど、程々にな!」
「なんか面白そうなからくりあったら教えろよな!!」
「あの紅茶とやら…向こうに戻ったら探してみるとする」
「その綺麗な手で、音を奏で続けて下さいね」
「体壊さないようにしなよ」
「……世話になったな」
朱雀が微笑むと、再び眩しい光に覆われる。
「お前らの曲作るから」
黄色い歓声や観客の雄叫びが鳴り止まぬ中、朱雀はステージに1人立っていた。
「今日はダブルアンコールがあるけどいいか?」
会場のあちこちから歓声が聞こえてきて笑った。
それを合図にステージに他のメンバーも上がって来る。
「俺の大事な友達たちに、この歌を送る」
瞳を閉じると、アイツ等の笑う顔が浮かんだ。
ゆっくりと瞳を開けると、ベースの弦を弾いた。
END 我が家にようこそ
12/12ページ