我が家にようこそ
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昨日のプチ騒動の後、普通に起きた朱雀と少し雰囲気が柔らかい元就に目を丸くしながら、皆は思い思いに過ごした。
そんな日、朱雀がある事を言った。
「外、見て回りたくないか」
朱雀の声は決して大きくなかったが、皆の耳には届いた。
「え?」
「外?」
「うん。俺がいない間も買物で出掛けたと思うけど、それ以外の場所」
朱雀は珈琲の入ったマグカップを置き、彼等を見た。
「スーパーとデパート以外に行きたい所、思い思いにあるだろ?」
コクコクと頷く面々に少し笑い、1つ袋を取り出した。
「皆の電話。使い方はもう分かるだろ」
1人1人に渡し、元親に釘を刺すと佐助が申し訳なさそうに朱雀を見た。
「電話、タダじゃないんでしょ?こんなに一杯大丈夫なの?」
「ん、大丈夫」
朱雀は笑った。
「金もあるから、行ってこい」
「おい、金まで貰うわけには…」
「大丈夫、どうやらあんたら用に金はあのバカ神様が送ってくれてるみたいだから」
夢でなんか言ってた。
「ふん…奴もたまには役に立つな…」
元就はそう言いながら携帯を懐に入れる。
「んーアンタが大丈夫って言うなら、俺はブラっとしてくるぜ」
元親はニカッと笑った。
「darlingはどうすんだ?」
「darlingじゃ…ふぅ、俺は家で仕事だ」
「某、手伝いますぞ!!」
「旦那、俺達にはきっと手伝えないよ」
意気込む幸村に佐助はすかさずツッコミを入れる。
「そうゆう事」
「しかし、お前が仕事をしているのに遊ぶのは…」
「気にするな。俺は好きでやってんだよ」
渋る小十郎にフッと微笑んだ。
「1人1人に鍵渡しとくから、気をつけてな」
手を降ると、そわそわとしながら出ていった面々に笑みが零れた。
(さて…)
1つ伸びをすると、アコギ(アコースティックギター)を持って来て、庭に繋がる縁側に腰かける。
暖かく眩しい日差しに少し目を細めた後、ポロロ…とギターを鳴らした。
(ん?)
耳を済ませると聴こえてくる、優しくも不思議な音色が、小太郎の耳に入った。
(なんだ…?主が奏でているのか?)
先程、他の人物は出掛けたばかりで、この家には朱雀と屋根の上に立つ小太郎しかいない。
という事は、この音色は朱雀が発している…と小太郎は考え付いた。
(心地よい…)
優しい優しいその音色に聴き惚れていると、小鳥達が集まり出したのに気が付く。
(主の音色に惹かれて寄って来ているのか)
小太郎はフッと笑った時、音色が止んだ。
「……?」
不思議に思い、屋根の上から降りる。
庭の方に向かうと、そこには指に停まる小鳥に微笑む朱雀がいた。
「ギターに停まったら弾けないだろ」
そう言って木の方へ小鳥を飛ばす。
そんな一部始終を見ていた小太郎に気付いた。
「小太郎?何してるんだ?」
出掛けたんじゃ…と言う朱雀に、小太郎はメモ帳を向ける。
『此処等一帯は調査済です』
「……そう」
朱雀は苦笑した後、何か思いついた様に小太郎を手招いた。
「…?」
「横、座って」
言われた通りに朱雀の横に座る小太郎。
「今から2種類の音楽奏でるから、どっちがスッと耳に入ってくるか教えてくれないか?」
参考にしたいんだ。
そう言った朱雀に頷くと、嬉しそうに笑ってギターを弾き出した。
(主に頼られた)
それが嬉しくて、笑いそうになる。
しかし、今は笑うタイミングではない為、冷静を保ち耳を傾ける。
短めのメロディーを聴かされ、どう?と訊ねる朱雀に『はじめの方が己はよいかと』と書いたメモ帳を見せた。
「やっぱりか…ん、ありがと」
ポンポンと頭を撫でられ、小太郎はその手に擦り寄った。
「撫でられるの、好きなのか?」
問い掛けられ、何故?と視線を向ける。
「ここに来てから笑ってるの、初めてだから」
もっと笑えば?
そう言って朱雀は立ち上がった。
「中に戻るけど…小太郎は?」
「…………!!」
小太郎は慌てて立ち上がり、後ろに続いた。
キッチンに立つと、マグカップを取り出す朱雀。
「小太郎、甘いのと苦いのどっちがいい?」
マグカップに何かを注ぎながらチラリと此方を見る。
慌てて『甘い方が好きです』てメモ帳に書いて見せる。
「ん…どうぞ。ココアって言うんだ」
テーブルに腰掛けながら小太郎に説明してやる。
(ここあ)
興味津々にマグカップを見つめる小太郎に微笑み、朱雀はコーヒーを飲む。
「飲んでみろよ」
促され、小太郎はマグカップを手にとった。
そして、一口。
「…………」
(気に入ったみたいだな)
周りに花が舞ってる錯覚をおこすくらい、小太郎の雰囲気は柔らかくなった。
「美味いだろ?」
「………!!!!!!!」
凄い勢いで首を降る小太郎の頭を撫でる。
「首、とれんぞ」
フッと微笑んだ後、ソファーに移動して目の前の机に数枚の紙を広げる朱雀を目で追う。
(主…)
小太郎は胸に暖かい何かが広がるのを感じた。
(主!!!)
「…どうした?」
胸に芽生えたモノはよく解らないが、今は無性に朱雀に引っ付いていたい。
ココアを急いで飲み干し、マグカップを洗うと朱雀の足元に座った。
朱雀は不思議そうに見るが、小太郎は少し笑っただけだった。
「………」
「……!?」
朱雀は何も言わず、自分の膝に小太郎の頭を乗せた。
「眠くなったんだろ」
笑いながら言う朱雀に否定しようとしたが、今は甘えていたいので、そのまま目を瞑った。
その後、帰って来た面々が騒ぎだし、それに目を覚ました小太郎は慌ててどこかへと消えるのだった。
先日のお出かけからやたらと皆は出かける様になった。
元から好奇心旺盛な彼らだ、朱雀は特に気にもしていなかったが、あることに気付いた。
ここ最近元親の元気が無いように見える。
今日も皆が出掛けようといそいそと準備している中、元親だけのろのろと準備をしていた。
「行ってくるぜdarling」
「お待ち下さい政宗様!!」
「行ってくるでござる!」
「ちょ、旦那」
「皆元気だね~」
「…煩いだけよ」
「……!!!」
次々と出掛けて行くなか、元親だけはまだ準備をしていた。
「…………はぁ」
大きく溜め息を吐いた後、ゆっくりと玄関へ向かう元親の隣に立つ。
「どうしたんだ?」
「こっちの台詞だ。最近元気ないな」
「んな事ねぇぜ?!!!」
ニカッと笑って見せる元親の頭を朱雀は撫でた。
「元親、海賊って言ってたよな?」
「おぅよ!」
「海が恋しいんだろ」
ズバリと当てて朱雀に元親は目を見開く。
「図星か…」
「バレてたか」
「なんとなくだけどな」
朱雀はそう言うと、元親の手を取って玄関に向かう。
「おい!?何処行くんだよ」
「今の流れからして1つしかないだろ」
朱雀は悪戯に笑った。
「着いたぞ」
「……………」
サングラスをかける朱雀の隣で元親は無言で目の前の景色を眺めていた。
「…ふぅ……来いよ」
「お、おう」
元親の腕を掴み、堤防を降りて行く。
その間も、元親は目の前に広がる‘海’を眺めていた。
「今からは泳げないが、触るくらいは出来る」
波打ち際まで来ると元親の腕を離した。
元親はしゃがむと、恋人に触れるような優しい手付きで水へ手を伸ばしす。
水が皮膚へ触れると元親は身を震わせる。
朱雀はフッと笑った。
「そこまで喜んでもらえて光栄だ」
朱雀の言葉に元親は立ち上がり抱き着いた。
「ありがとな」
「ああ」
背中をぽんぽんと撫でてやると元親は擽ったそうに身を捩った。
照れた元親が慌てだすまで後5秒。
END 海賊