新生活・3日目
名前変更
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トントン、と誰かが肩を叩く。
「ん…」
その感覚を鬱陶しく思いながら、目を開ける。
「お、おはようございます…」
そこにはビクビクとしながら此方の様子を窺う幸村がいた。
「………」
「なっ!?」
寝ぼけている朱雀は腕を伸ばすと幸村を抱きしめた。
「朱雀殿!//」
幸村は慌てるが、大声を出してまた怒られるのが嫌なので、小声で名前を呼ぶ。
が、そんな事で彼が起きる筈もなく、幸村はただ抱きしめられるしかなかった。
(ど、どうしたもので御座ろうか…)
幸村は考えてみるが、何も思いつかなかった。
佐助は朱雀殿の為にと片倉殿と一緒に朝餉を作っておるし、政宗殿と前田殿はまだ眠っておられるし…
幸村は朱雀の肩を再び揺らしてみるが、彼の眉が潜められただけだった。
(起きぬで御座るか…)
幸村は諦めてジッと朱雀の顔を見つめた。
(それにしても、綺麗な御仁でござるな)
初めて見た時も思った事だが、着飾り方によっては女性に見える。
(女性…女人…おなご…)
幸村の目には朱雀が女性に見えてきていた。
勿論、ただの錯覚だが、そう思い込んだ幸村の思考はショートしていた。
「は、は、破廉恥でござるぅぁぁ!!!!!」
幸村はそう、腹の底から思い切り叫んだ。
「あのなぁ…幸村、俺の言った事、覚えてるか?」
「も、勿論でござる…」
「そうか、覚えてたのか…なら、正座後1時間追加な」
ソファーに座りながら頭を抱える朱雀。
その前に正座する幸村。
それを遠巻きに見る4人。
「ったく…確かに寝ぼけてた俺も悪いとは思う。たが、叫ぶ意味が解らない」
「そ、それは…」
「それは?」
片眉を上げて幸村を見る。
「それは…朱雀殿が女人に見えて…」
「俺が女に?」
「確かに、朱雀は顔が綺麗だもんな~」
慶次が水を片手に近づいて来た。
「見ようによったら眉目秀麗な男。見ようによったら別嬪な女」
慶次はニコニコしながら座った。
「…まぁ、否定はしないが…」
昔から色々言われて来た為、自分でも容姿の事は理解している。
だが…
「叫ぶ事はないだろ…」
「そ、某…女人は苦手で…」
「ふーん」
朱雀はシュンとうなだれる幸村を見た後、立ち上がった。
そのまま移動してテーブルへ座ると、幸村を見た。
「まぁ…叫ばない事も女の事も、少しずつ慣れていけ」
「あいわかった…」
「なら…飯食うぞ」
朱雀がニィっと笑うと、幸村も笑顔になって立ち上がった。
「某!お腹がペコペコでござる!」
テーブルに幸村が座ったのを見て、料理へと視線を移す。
やはり、純和風の美味しそうな料理。
「いただきます」
そう言って、ご飯を食べ始めた。
「さてと…」
今日は何をしようか。
リビングにて各々がゆっくりとした時間を過ごす中、朱雀は考えていた。
(アイツ等が欲しい物でも…聞いてみるか)
「皆に聞きたいんだが…」
「何だ?darling」
朱雀の言葉に反応して政宗が近寄ってくる。
「………ところで、欲しいもの、したい事って…あるか?」
「え?急にどうしたの?」
無視された政宗はしょぼくれたが、気にせずに佐助を見る。
「いや、ずっと家にいても暇だろう?」
「そうかもしれないが…これ以上お前に迷惑かけるのわ…」
小十郎は眉間に皺を寄せた。
「別に、迷惑なんて思ってない。なんか、ない?」
朱雀は再度尋ねる。
「なら…お言葉に甘えようかな♪」
佐助はニッと笑った。
「俺様は地図が欲しいかな。周りの事把握しときたいし」
「……俺は畑があれば…」
「某は、庭にある道場を使いたいでござる!」
朱雀は頷いた。
後の2人は特にないらしく、なにも言わなかった。
「地図なら…書庫にあるから探しておく。畑は庭の空いてる場所にでも耕そう。道場は好きに使ってくれていい」
朱雀はそう言って幸村に鍵を渡した。
「忝ないでござる!!政宗殿!早速手合わせ願いたいでござる!」
「OK。体も鈍ってたところだ」
「おっ、俺もついて行こうかね~」
体を動かせるのが嬉しいのか、3人は楽しそうに出て行った。
「俺様も片付けたら混ざろうかな~」
「なら、俺もそうするか」
佐助と小十郎も楽しそうな声色で話しながらキッチンへ向かった。
(なら俺は…)
何をしようかと考え、行き着いた先は…
「曲でも、作るか」
朱雀はコーヒーを片手に、ゆっくりと立ち上がった。
「おーい、朱雀…ありゃ?」
道場から戻ってきた慶次は、朱雀がリビングにいないのに気づいた。
「参ったなぁ…」
ポリポリと頬をかく慶次の髪は、長く垂れていた。
どうやら髪を結んでいた紐が切れたようだ。
「おーい、朱雀ー」
呼んでみても返事はない、髪を結ぶ為の紐がどこにあるかもわからない。
「部屋かな…?」
朱雀を探そうと思い、慶次は踏み出そうとした足を止めた。
「ん…?」
微かに音楽が聴こえるのだ。
(音を辿れば朱雀がいるのかな?)
慶次は微かに聴こえる音を頼りに、テクテクと歩き出す。
だんだんと音が大きくなってくる。
聴こえる音はどこか低くく、腹まで響くような重低音。
(いったい、朱雀は何やってるんだい?)
頭にハテナを浮かべながら、音を辿っていると、リビングを出て奥にある朱雀の仕事部屋からだった。
(何か…変わった仕事するんだな)
そんな事を考えていると、仕事部屋の前に辿り着く。
扉が微かに開いており、そこから音が漏れていたようだ。
慶次は興味本位で覗いてみる。
「朱雀…?」
慶次が見たこともない楽器のような物を、朱雀は楽しそうに奏でていた。
それが凄く綺麗な光景に見えて、慶次は思わず見惚れた。
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