天下は彼のモノ
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翌朝、桜は早々に奥州を後にした。
越後か甲斐か、どちらに向かおうか考えながら馬の頭を撫でた。
「お前はどっちに行きたい?」
1つ鳴くと、馬はゆっくり歩き出した。
馬の気の向くままにやって来たのは越後だった。
越後の町を馬から降りて歩く。
さてどうやって越後を治める上杉謙信に会いに行くか。
んーと悩みながら歩いていると、少し先が騒がしいのに気付いた。
現代で言う新手の軟派だ。
嫌がる少女の腕を掴む男達を見据えながら近づいて行く。
「ちょっと」
「あ?」
「その汚い手を離していただけるかしら」
「いっつ…!!」
少女の腕を掴む男の腕を力強く(女性の力の範囲で)殴り付けた。
「こっち」
「あ…」
少女を引き寄せると馬に乗せて離れるよう告げた。
「いきなり出てきて…なんだ?俺達と遊びたいのかぁ」
ニヤニヤと笑いながらこちらを見る男達に微笑む。
「冗談は顔だけにしてくださいませんこと?」
「この女…!!」
顔を引き攣らせながら男は桜を睨んだ。
(数は3、余裕やな)
桜は捕まえようと伸びてきた腕を避け、その腕を逆に掴んで捻り上げた。
「いででで!!!」
「コイツ!!」
他の2人も殴りかかってくる。
1人に向かい掴んでた男をぶつけ、もう1人の男の拳を避けるとその首に手刀を落とした。
「ぐっ…」
「チッ…」
気絶した1人を見て残りの2人は脇差しを抜き、笑った。
「悪く思うなよ」
「(今は)女の私に刀とは…」
「うるせぇ!!!」
仕方ない。
懐に手を伸ばすと同時に男が吹き飛んだ。
「おいおい、1人の嬢ちゃん相手に男2人に刀なんて…卑怯じゃねぇか?」
「なんだ貴様!!」
突然現れた男。
背が高く髪を高い位置で言ってる男は笑った。
「俺は「おい!!勝手に動くな!!」
今度は横から綺麗な女性が現れた。
「おう、悪いなかすがちゃん。気を取り直して、俺は前田慶次だ!」
「なに!?」
男達は互いに目を合わせた。
「お前達、その刀はなんだ」
「ひっ…!!」
かすがと呼ばれた女性の睨みに怯んだ。
「なにをしているのです?」
「あ、貴方は!?」
後ろから聞こえてきた声に振り返ると馬に乗った男?がいた。
「謙信様!」
「わたくしのつるぎ、なにごとですか?」
「はっ、どうやら女性を無理矢理連れていこうとし喧嘩に発展して刀を抜いたようです」
「ふむ…」
馬に乗った謙信様とやらを見た男達は悲鳴を上げ、謝りながら逃げていった。
それを見送った後、前田慶次と名乗った男と女性に振り返った。
「助けていただきありがとうございます」
「どうって事ねぇよ!」
「ふん…!」
にこやかに笑う彼と照れ臭そうな彼女に笑った後、馬に乗る彼?に振り返った。
「えっと…上杉謙信様?」
「いかにも」
「お騒がせしてすみません」
頭を下げるとほぼ同時に馬が戻ってきた。
「あの娘は家に帰ったかい?」
返事をするように馬は顔を寄せてきた。
「さてと」
桜は謙信を見てニコリと笑った。
「お初にお目にかかります、相模国から来ました北条軍が1人漆黒の風と申します」
「なっ!?」
かすがは慌てて謙信の前に立った。
「へぇ…女だったのか」
慶次はマジマジと桜を見る。
それに答えず謙信をジッと見る。
「わたくしのつるぎ、おさがりなさい」
「ですが…!!……わかりました」
かすがは桜を睨みながら離れた。
「しっこくのかぜ、なにゆえこのちにまいられた」
「素敵なお手紙(という名の挑戦状)をいただきましたので、ご挨拶にと」
にっこり笑って謙信を見る。
「わざわざりちぎですね」
「いえいえ…私としてみれば、相模に攻め行って欲しくなかったので、戦が起こらぬように挨拶回り…って感じですね」
「そのあいだにせめいられるとは?」
「小国なら有り得ますが風魔が追い払うかと、大国の方達は私にご用があるみたいなので…出歩いていた方が相模は襲われないかと」
「わなとは?」
「考えましたが、風魔がいれば大丈夫かと。それに、もしもの場合に備えて近い場所から回ってます」
笑顔で謙信を見ていると、彼はフッと笑った。
「ほんかくてきにいくさをしかけてくるとすればおわりのまおうぐらいでしょう」
「私もそう考えてます。しかし、私は敵軍の情報をあまり把握していないのでよく解りませんが」
視線を落とすと、肩を叩かれた。
「あんたの考え、強ち間違えじゃねえと思うぞ」
「そうですか?」
「おうよ!俺達も警戒してんのは今のところ織田軍ぐらいだからな」
ニカッと笑う前田慶次につられて笑った。
「ならよかった」
桜は馬の手綱を握ると会釈した。
「それではそろそろ」
「もうゆくのですか?」
「次がありますので」
「次?」
「各軍に挨拶回りをしておりまして…次は甲斐に参ろうかと」
馬に乗り、微笑む。
「ならば…わたくしのつるぎもともに」
「謙信様!?」
桜同様かすがは驚いた様に謙信を見た。
「このふみをとどけておくれ、つるぎ」
「は、はい!!」
頬を染めるかすがに笑い、謙信を見た。
「では、失礼します」
「またな!えっと…」
桜の名前を呼ぼうとした慶次だが、わからずに頬を掻く。
「漆黒でも風でもお好きに」
「本当の名はなんなんだい?」
それには答えず、かすがを抱き上げ自分の前に乗せた。
「なっ!?」
「では失礼いたします」
「お、降ろせ!!」
「先を急ぐので大人しく乗ってください」
桜はそう言って馬を走らせた。
「行っちまった」
「なまえ、きけませんでしたね」
「あぁ…」
「きになりますか?」
「あぁ、こりゃ一目惚れだな!」
楽しそうに笑った慶次に、謙信も笑った。
END 捌