天下は彼のモノ
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「おい、聞いたか」
「あぁ、小田原に強い輩がまた現れたんだってな」
「最強の忍だけで手がかかるのに…」
あっちこっちで流れはじめた噂。
小田原はもとから敵が攻めて来る回数が多かったが、最近になって倍の数増えた。
しかし、落ちないのだ。
どれだけの敵が一斉にやってきても、落ちない。
栄光門や風の悪魔がいるにしろ、落ちなさすぎる。
そこで流れ出したのが、もう1人の人物の噂。
忍の様に黒装束に身を包み、戦場に繰り出す人物。
‘漆黒の風’と呼ばれ出したその人物はもちろん桜。
はじめに流れていた女としての噂より、今はこちらの噂の方が有名だ。
「無慈悲で負けなしで奴に目をつけられたら命はない」
そんな噂により、小心者だったり弱い国は攻めいって来る事はなくなったが…
噂に興味のある伊達や、屈強な女の噂を聞いてやって来ていた真田の所属する武田。
他にも第六天魔王と言われる織田などは未だに小田原へと来る。
「面倒やなぁ…」
「ん?なにがじゃ?」
氏政の肩を叩きながら、桜はポツリと呟いた。
氏政はその呟きに振り返る。
「強い奴がいる、彼処には敵わん!!!って噂流したら攻めてくる国無くなるおもてんけど…やっぱり有名どころはそれぐらいでは怯まんなぁ思って」
「そうじゃのう…じゃが、桜のおかげで攻めてくる国が少なくなっただけで、儂は大分感謝しとるがのう」
微笑む氏政にギュッと抱きつく。
(ほんま、のほほんとしてたら普通にかわええお爺ちゃんやのに…)
戦の時のテンパりよう…
桜は心の中で溜め息を吐いた。
その時、風と共に小太郎が現れた。
「どうしたのじゃ、風魔」
氏政の問いに、小太郎はいくつかの書状を出した。
「これは?」
「…………」
「なんじゃと!?」
慌てて立ち上がる氏政。
小太郎の口を見てなかった桜にはどんな会話が成されていたのかわからないが、勝手に開いた書状を見て口を開いた。
「なるほど、俺に会いたいと」
どの書状にも要約すると、戦を仕掛けるとの事が書いてあった。
戦を仕掛ける=俺が出てくる。
序でに領地も手に入れよう、きっとそう思っての事だろう。
「桜や、この時代の文字が読めるのか?」
「読めるだけじゃなくて、書けたりすんで」
ニッと笑い、立ち上がった。
「じっちゃん、筆と紙ちょっと貸してな」
「何をするのじゃ?」
「この手紙をわざわざ寄越してくれた国の方々にお返事送るんや」
どこか悪戯に笑いながら、すらすらと手紙を書いていく。
「出来た。小太郎、悪いねんけどこれ、送りつけてきて欲しいねん」
渡された数枚の書状を受け取り、小太郎はシュっと消えた。
「何を書いたのじゃ?」
「近々そちらにお伺いするので、小田原に来ないで下さいって、攻め行ったって話を聞いたら貴方達の目の前に姿を現しません…って」
(織田が言うこと聞くかどうかはわからんけど)
笑って襖へ近づく桜をジッと見る氏政。
「何処に行くのじゃ?」
「ちょっと、お出掛けしてくるわ」
勝手な事してごめんなぁ。
そう言いながら桜は部屋を出た。
(北から南に下るか…)
馬小屋に向かうと、そこにいる馬達に目を向ける。
どれも良い馬だ。
桜はジッと馬達を見た後、手をパンパンと叩いた。
その音にいち早く反応した馬の顔を撫でた。
「俺の旅に付いてきてくれんか?」
もちろん、とでも言うように顔を寄せてくる馬に飛び乗った。
一応女の着物だから横向きに乗ると、馬はゆっくり走り出した。
桜は既に装着されていた手綱を握ると、ニッと笑った。
「先ずは独眼竜にでも挨拶行こか!!!」
桜の言葉に返事するかの様に、馬は走る速度をあげた。
END 陸