伍
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ゆさゆさと肩を揺さぶられ、意識が浮上する。
ハッと飛び起きると、そこには小太郎がいた。
「あれ…俺…寝てたん?」
「ぐっすりとな」
普段はこんなに寝やんねんけどな~、と言いながら伸びをすると、小太郎が何かを持ってるのに気付いた。
「なにそれ」
「手拭いと着替えだ。さっさと顔を洗ってこい」
井戸のある場所を教えると、小太郎は消えた。
「さて、準備しますか」
しゅるりと着ていた着物の帯を解き、するりと服を滑らした…
「んっ…久々にはよ起きたら気持ちええなぁ」
顔も洗って着替えも済まして(何故か女性物の服)部屋に戻る為に呑気に歩く。
「おおっ!!ここにいたのか」
「あ、じっちゃん。おはよう」
「ああ、おはよう」
桜を探してたらしい氏政は腰を抑えながら近づいてきた。
「じっちゃん、俺を探してたん?」
「そうじゃ、朝餉を一緒に食べようと思ってのぅ」
その言葉に桜は微笑み、氏政と歩き出した。
「ふぅ…おいしかった。ごちそうさん♪」
桜は手を合わせると、食器を片付けに来てくれた女中に微笑んだ。
顔を赤くしてそそくさと去る女中を不思議に思いながら、氏政を見た。
「さてと…なぁじっちゃん、何したらええんかなぁ?」
「そうじゃのう…城下を回ってみるのもよいじゃろう」
「え?行っていいの?」
「もちろんじゃよ」
桜は笑顔を浮かべて立ち上がった。
「じゃあ、さっそく行ってもええか?」
「行くとええ。そうじゃ、何か買うのも良かろう」
どれどれ、と言いながら氏政は後ろの戸棚を漁ると、小さな巾着を取り出した。
「これで何か買ってくるとよいぞ」
「でも…いいんか?それに結構入ってるみたいやけど…」
手に乗る重みのある巾着を見た後、氏政を見た。
「気にするでない」
微笑む氏政に桜も微笑み返し、頭を下げて部屋を出た。
「こ、こりゃ!!…行ってもうたか…これ!!風魔や!!」
呼びかけに小太郎はシュっと氏政の前に現れた。
「風魔や、桜の共をするのじゃ」
「………」
小太郎は頷くと、シュっと消えた。
「さて…勢いよく城は出たものの…」
右も左もわからんわ、俺。
困ったなぁ…と頬を掻いたとき、背後に気配を感じて振り返った。
「……小太郎か」
「……」
「あんな、城下町行きたいんやけど」
小太郎は溜め息を吐くと、シュっと一瞬煙に包まれ、現れた時には変装した姿で現れた。
「行くぞ」
「一緒に行ってくれるんや、おおきに♪」
桜はニコリと笑うと、小太郎の手をとった。
「なにを…!?」
「あかん?」
ジッと見つめると、小太郎は溜息を吐いて歩き出した。
桜は笑顔でその後に続いた。
「おー、賑わっとるなぁ」
町に着き、桜は笑顔を浮かべた。
「ありがとうな小太郎。俺1人やったら迷子やったわ~」
あははと笑いながら小太郎の手を離した。
一瞬表情が変わったのを桜は見逃さなかったが、何もなかったように歩き出した。
「ほんまありがとう、後は大丈夫やからじっちゃん所に戻っても大丈夫やで」
「………」
「ほな」
桜はヒラヒラと手を振ると歩き出した。
小太郎はその後ろ姿を見送ると、シュっと消えた。
「お嬢さん、こっち見ていき~」
「このお菓子美味しいわよ~」
「ありがとうございます」
四方八方から飛んでくる声を躱しながら町中を歩く。
(城下町ってこんなんなんやなぁ~)
未来では味わえない華やかさ。
桜は満足感を感じながら散歩していると、ふと泣き声が聞こえた。
(何だ…?)
声の聞こえた方へ進んで行くと、少年が泣いていた。
泣いている少年に近づくと、どうやら怪我をしていたようだった。
「大丈夫?」
近づいて少年の前にしゃがみこむと、怪我をしている足を見た。
「ほら、大した怪我じゃないんだからいつまでも泣いてるんじゃない!男だろ?」
そう言いながら、自分の着物の袖を破り、足に巻いてあげた。
突然現れた桜にきょとんとしていた少年だが、桜が微笑むと少年も笑った。
「ありがとう、お姉ちゃん!!」
「どういたしまして」
頭を撫で、走り去っていく少年を見届けた後、背後へと視線を向けた。
「盗み見ですか?」
桜はそう言ってゆっくりと歩き出す。
髪を払い、振り返ると同時に鉄扇を振り払った。
カラン―
金属のぶつかる音がし、何かが落ちた。
(クナイ…)
桜は目を細めた。
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