天下は彼のモノ
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一先ず織田には寄らず、中国、四国地方へ来た。
戦をしている…には随分と穏やかだった。
四国には海を渡らないといけないので中国地方へいるのだが、もしかしたらこちらでは戦をしていないのかもしれない。
水上、若しくは四国で。
悩みながらも一先ず海を目指した。
馬とゆっくり歩きながら海を目指していると、何やら騒がしい。
「アニキ!!」
やら、
「元就様!!」
やら。
なんだなんだと海岸が見渡せる少し高い場所までくると、少数ながらも毛利の軍旗を背負う兵と長曽我部の軍旗を背負う野郎共、それらに囲まれ一騎討ちをする2人の男がいた。
(ん~オクラと半裸?)
とりあえず観察をする。
全身緑のオクラ兜が毛利、銀髪で全体的に紫の族みたいな奴が長曽我部で間違いなさそうだ。
(…この世界に来てから変な奴多いけど、俺はなんも言わへんで)
全身機械の奴もおったし。
深呼吸して、ゆっくり集まりに近付いた。
わーわー騒ぐ連中は桜に気付かず、あっさりと近付けてしまった。
「我の領土で何をしている」
「漆黒の風をお前が狙ってるって聞いてな、それは止めねぇといけねえと思ってな」
(ほうほう…狙いは俺か)
しっかし…なんでそんなに狙われるんだろうな。
ん~と考えてても解らない。
「すみません」
「あ?」
ニコリと微笑みながら2人へと声をかけた。
「誰だ貴様は」
驚く兵達の一番前に立ち、スッと細められた目から放たれる鋭い視線を見つめ返し、ゆっくり口を開いた。
「漆黒の風…とでも申しましょうか」
「なんだと?」
驚く兵達の視線、鋭い2人の視線を浴びながら、少し首を傾けて微笑んだ。
戦いを止められた事にか、それとも怪しい桜に対してか、はたまた長曽我部にかは解らないが少し苛立った様子の毛利は輪刀を桜の首に突きつけた。
「貴様が漆黒の風と証明する物でもあるのか」
「無いですね」
「ならば信じるに値しないな」
毛利は輪刀を振ろうとしたが、それは叶わなかった。
「突然…危ないですね」
「!?」
ガチガチと金属音を鳴らしながら輪刀と鉄扇はせめぎあっていた。
「ほう…受け止めるか」
「毛利殿は不要な者は直ぐに斬るとお伺いしておりましたので」
警戒したに越したはないかと。
妖しく笑った桜を面白そうに元親は見た。
「毛利の刀を受け止めるとは、なかなかやるじゃねぇか」
「わっ…!」
腕を引かれて元親の腕の中に引き込まれた。
「俺はお前の言った事信じんぜ?偽者が態々名乗り出るわけねぇしな。それに…忍にお前の事は調べさせてるからな」
ニカッと笑った元親に桜は目をぱちくりさせた後、フッと微笑んだ。
「そうですか」
「ただよ、見目麗しい屈強な女の情報だけは入ってこねぇんだ。なんかしらねぇか?」
「ふん…ソイツが本当に漆黒の風ならば屈強な女とは其奴のことではないのか」
嘲笑を浮かべながら毛利は元親を見た。
「テメェには聞いてねえよ毛利」
「ふん…」
バチバチと火花を散らし始めた2人を桜は見ながら吐きそうになった溜め息を飲み込んだ。
(犬猿の仲なんはええけど挟まんといてくれへんかなぁ…)
ん~と考えていると、毛利と視線があった。
「漆黒の風よ、我の所にくるといい」
「え?」
「我が効率よく使ってやろう」
「テメー!!何言ってやがる!?」
「貴様に話しておらぬ」
互いの武器を今にも振りだしそうな2人の間から抜け出し、兵達の方へ避難した。
「いつもあのような感じで?」
「へぇ…」
「顔を合わせれば大体…」
「……仲の宜しい事で」
桜の声が聞こえたのか、2人に睨まれた。
(おー、恐い恐い)
「ちっ…」
舌打ちをしてガシガシと頭を掻いた様子を見る限り、以前にも言われた事があるようだ。
「ところでよ」
「はい?」
「オメー名前なんだ?漆黒の風はただの
その質問に何も答えず笑みを浮かべるだけだった。
「教えるつもりはないと申すか」
「はい」
毛利はぴくりと眉を動かした後、輪刀を再び振るった。
「まあ良い、城に連れ帰ってから吐かすとしよう」
「おいおい、コイツを連れて帰るのはこの俺だ!!」
また争いを始めた2人にふぅと溜め息を吐くと近くの兵を見た。
「尾張にご用がありますので、私はこれにて失礼いたします」
「あ、ちょっと!!」
止める兵達の声を無視し、浜の上に待機させていた馬へ向かって歩き始めた。
END 拾壱