天下は彼のモノ
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「私は先に行くぞ!!」
「はい、長旅ご苦労様でした」
ニコニコ笑ってかすがを見送る。
(かわええねーちゃんやったな~)
馬から降りると背を撫でた。
「もう少し頑張っておくれ、一旦休憩はとるからね」
応えるように頭を振った馬に微笑んだ。
「お団子とお茶をください。後、馬に水をいただけませんか?」
「はいよ!」
茶屋に寄り、一休みする。
出された団子を頬張りつつ、甲斐の町並みを眺めていた。
(長閑やなぁ…)
ホッと一息ついて微笑む。
桜を見ていた人物達は思わず足を止めて見惚れていた。
「あ、あの!!」
突然声をかけられ桜はそちらを向く。
「なにか?」
声をかけてきた青年に視線を向けると、顔を真っ赤にした青年は桜の手を掴んだ。
「そ、その…よろしければ私とお茶してください!!!」
桜は目を丸くした。
(これは俗に言うナンパか)
フと微笑むと、やんわりと手を離した。
「申し訳ございません、私待ち合わせをしていまして」
「その人が来る間だけでも!!」
「いや、ですから「お待たせ~」
後ろからグイっと腕を引かれる。
振り返るとニコニコと笑う青年がいた。
「何か用?」
「い、いえ…すみませんでした!!!」
走り去る青年を見送った後、チラリと後ろの人物を見た。
「助かりました、猿飛様」
「あれ?バレてた?」
「はい」
手を離してもらい、彼を正面から見る。
以前着ていた忍装束ではなく、深い緑の着物に身を包んでいた。
「何か私用ですか?」
「そんなもんかな。旦那のお使い」
はぁ…と溜め息を吐いた佐助の片手には大量の団子があった。
「これまた…」
「旦那、甘党でさ」
やんなっちゃうと再び彼は溜め息を吐いた。
「で?なんで甲斐にいるの?」
鋭くなる佐助の目を真っ直ぐ見つめ返す。
「ただいま各国へ挨拶をしに周っておりまして。書状も送ったかと」
「へ~」
佐助は顎に手を当てて桜をじろじろと見る。
「まぁ…かすがからも聞いてるし、今回は見逃してやるよ」
「はぁ…」
かすがはもう城に行ってたのか。
そっちに驚いていると腕を掴まれた。
「あの…」
「お館様…武田信玄に会いに来たんでしょ?あんたの書状信じて城で首を長くして待ってるんだから、早く行くよ」
歩き出した佐助の後ろでクスリと笑い、自分も歩き出した。
城に着くと兵に指示を出して佐助は消えた。
女中に案内されて来たのは大きな部屋だった。
上座には腕を組んで座る男性と傍らに幸村がいた。
「失礼致します」
声をかけて足を踏み入れ、男性の前に座る。
「お初にお目にかかります。相模は北条より参りました漆黒の風で御座います」
挨拶をして頭を下げる。
「ふむ…そう堅苦しくなくてもよい、儂は武田信玄じゃ」
頭を上げて彼を見る。
ニッと笑う彼に微笑んだ。
「しかし、本当に女子じゃったとはの…」
「どのようなご想像を?」
「驚くぐらいに筋肉質で屈強な男じゃと思ってたわい!!」
「期待外れですみません」
フフッと笑い、信玄を見た。
彼は凄く面白そうに笑っていた。
「して…幸村よ」
「な、ななな何で御座いましょうか!!!」
やたらと噛む幸村に信玄は視線を向けた。
「なぜそんなに固まっておるのじゃ?」
「そそそ、それは…」
チラリと視線を向けられ、あぁ…と思う。
彼は女が苦手で、自分は今女の姿だった。
「真田様がお困りのようですし、私は本当に挨拶に来ただけですので…お暇致します」
「某!別に困ってなどいないでござる!!!」
何時かの様に手を握られる。
真っ赤な顔はやたらと可愛く見えた。
「真田様は…可愛らしいお方ですね」
「か、可愛いなど…!!」
「ですがお忘れなく」
桜は厳しい表情で幸村を見た。
「今日の私に戦う気はありませんが…私達は敵同士ですよ…?」
ハッとして幸村は手を離した。
「ふむ…」
その様子を見ていた信玄は顎に手を当てた。
「気に入った!!」
「え?」
「佐助の殺気をモノとせず、儂の睨みにも怯まず、幸村へのその面白き態度!!儂は気に入ったぞ!!」
ガハハハと笑い出す信玄にぽかんとする。
(気に入られてもなぁ…)
桜は苦笑した。
「どうじゃ、武田に来ぬか?」
「え?」
「ちょ、お館様!!」
しゅたっと天井から佐助は慌てて降りてきた。
「む?どうした佐助」
「どうしたじゃ無くて、敵軍の人間を誘うなんて…」
「なに、こ奴は良い目をしてるではないか」
「いや、そうじゃなくてね…」
いつか見た光景のようだ。
そう、彼はまるでおかんだ。
「武田のお母様を困らせては可哀想ですので、本当にお暇致しますね」
桜は立ち上がった。
「ねぇ、一応聞くけどお母様って…?」
「さあ?」
桜はただ笑うだけだった。
END 玖