君を思う
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「くっそ…どこ行きやがった…」
街中を探し回ったが、ムナカは見付からなかった。
(もしかして…)
もうこの島から…?
いや、ムナカが船を降りると言ったのは今朝の筈だ。
船を手に入れたとしても、まだ出る準備が出来てない筈だ。
ならどこに…?
考えてみるも、見当も付かない。
(まだ探してない場所は…)
自分達の船を停めてある海岸とは反対の海岸辺りだろう。
サンジは地を蹴ると、反対の海岸を目指して走りだした。
「………」
風が吹き、服が靡く。
脱げそうになるフードを手で抑えると、一つ溜め息を吐いた。
(………行こうか)
どこになんて決めてない。
ただ今までの様に、彼らに出会う前の生活に戻るだけだ。
島から島へ、街から街へ。
たまに賞金首捕まえては海軍に差し出す。
(あ、もう無理か)
今じゃ自分も海賊として手配書が出回っている。
珍しい能力故に賞金も高く、我ながら苦笑した記憶もある。
平和には過ごせないなあ…
苦笑し、目の前の海岸へとゆっくり歩き出す。
別に死ぬ訳ではない。
船を調達する事が出来ないから、海を渡ろうとしているのだ。
水を足元で固めて道を作る、ムナカだから出来る芸当だ。
砂浜を踏み締めると、海の上に足を踏み入れた。
「さようなら、幸せに」
誰に言うでもなく、そっと言葉を吐く。
その時、突風が吹いて思わず目を閉じた。
風が止み、目を開けると頭上には影が出来ていた。
「なっ!?」
「見つけたぞテメェ!!!」
影を追って空を見上げると、空中歩行で宙に舞うサンジがいてそれに驚き、足元の道が崩れて海へ尻餅着いた。
まだ全然浅瀬で命に別状はないが、手や尻が濡れただけでもう力が出ない。
クターっと倒れそうなのを踏ん張っていると、サンジが降りてきた。
「海、辛くねえのかよ」
「かなり辛いかな」
苦笑するムナカを担ぎ上げると、砂浜に移動した。
「ごめんね」
「いや、こっちこそいきなり脅かして悪かった」
サンジは視線を反らしながら、謝った。
その様子に苦笑した。
「サンジ君、僕に用かい?」
「用かいって…お前なっ…!!!」
怒るサンジにムナカは頭を捻る。
「サンジ君…?ああ、ちゃんと伝えてなかったもんね」
ムナカはぶつぶつ言った後、サンジを見た。
何か決めた様子のムナカに嫌な予感がしたサンジは思わず手を伸ばして口を掌で覆った。
「なにも言うな…言わないでくれ」
きょとんとした様子のムナカをじっと見つめた後、サンジは手を離した。
「ムナカ…悪かった」
「え?」
「…ここ数日間の事だよ」
ばつが悪そうに頭を掻くサンジに「なんの事?」と惚けて見せると、肩を掴まれた。
「もう、おれの事は…」
「え?」
「その…す、す、す…」
顔を赤くしてきょろきょろと世話しなく視線を動かすサンジ。
ムナカは何かに気付き、肩に置かれた手に触れた。
「サンジ君、無理しなくていいよ。僕は大丈夫だから」
「大丈夫って…」
「別れよう。君にはナミさんの様な強気な女性が似合うと思うよ」
肩からサンジの手を離し、微笑みながらそう言った。
何を言われたのか直ぐに理解出来ないサンジは、固まった。
その間に立ち上がったムナカは、サンジの隣を通り過ぎ、海へ向かう。
(これで、いいよね)
自分がいなくなる事でサンジは幸せになれる。
そう思い込んでムナカは別れを告げた。
「お前な!!!」
だから、何故サンジがこんなに怒ってるのか、理解出来ない。
「お前、勝手に別れ告げんなよ!確かに、おれが全面的に悪い。ムナカが愛想尽かすのも解る。でも、おれの気持ちを聞かずに、強気な女性が似合うとか、なんだよ!!!!」
海へ向かうつもりだったのに、サンジに足を掴まれ、倒され、馬乗りになった彼に襟を掴まれ、怒鳴られる。
「おれは…おれは…お前の事、まだ…まだ…」
悔し涙をぽろぽろと流し始めたサンジにムナカは慌てて起き上がった。
「ごめっ、サンジ君、泣かないで」
一瞬触れる事に戸惑ったが、サンジの背中に触れるとゆっくりと撫でる。
「ごめんね、サンジ、ごめん」
ぎゅうっと抱き付いてくるサンジをそっと抱き締める。
「サンジ、まだ、僕の事好きでいてくれるのかい?」
「僕は女じゃないけどいいのかい?」
「きっと、サンジの事手離さないよ?」
ムナカの質問に全て頷くサンジ。
ムナカはポケットからチェーンの通った指輪を取り出した。
「サンジ」
少し体を離すと、その首へネックレスを付けた。
「サンジ、ごめん、大好きだ。愛してるよ」
耳元で囁かれる言葉にサンジの顔は赤く染まる。
「おれも…愛してる。悪かった…今度、もしおれの悪い癖でムナカを傷付ける事があったら…自己解決する前に言ってくれ」
「そうするよ」
ふふっと笑うと、サンジからキスを受けた。
ムナカは驚いたが、フッと微笑んだ。
「おー!!!アイツら戻ってきたぞ」
ルフィは大声で皆に告げた。
「上手く仲直りしたみたいね」
ニコリと笑うロビンの横でナミはニヤリと笑った。
「ウソップ、フランキー、直ぐにでも出航出来るようにしといてね!!」
「任せな!!」
チョッパーやブルック、ゾロも動き出し船内が慌ただしくなる。
「ルフィ君」
そんな中、やっと船に上がってきたムナカはルフィに声をかける。
「勝手な事言ってるとは解ってるんだけど…一緒に行っていいかな?」
その問い掛けにルフィはニッと笑った。
「あったりまえだろー!!!よーし、野郎共!!出航だー!!!!」
ルフィの号令を合図に船が動き出す。
ムナカはその光景を見て微笑み、隣にいるサンジを見た。
「サンジ」
「ん?」
「僕、これから君の側を離れる事はないと思う」
「おう」
「キス以上の事も求めると思う。いいのかい?」
「…………ムナカ相手なら、上等だ」
ニッと笑うサンジの口から煙草を奪うと、キスをした。
「これからもよろしくね」
そう言って微笑むと、サンジは真っ赤な顔で嬉しそうに笑った。
END
5/5ページ