君を思う
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「…はぁ」
(まただ…)
ウソップはちらりと横目でサンジを見た。
ここ数日、サンジは常にため息を吐いている。
鈍感なルフィやチョッパーにも分かるくらいだ。
ブルックやフランキーは「恋だな」なんて言っている、おれもそうだとは思うが少し気になる事がある。
ナミやロビンの含み笑いだ。
何なんだと聞いても笑うだけでなにも教えてはくれない。
(ん~まあ、サンジにも春が来たって事か)
ウソップは気楽に考え、釣りに専念する事にした。
「はぁ…」
(やべ、また溜め息が)
サンジは自分で自覚するほど溜め息を吐いていた。
原因は勿論、ムナカだ。
サンジは認めてしまった、ムナカが好きだと。
(大丈夫、男は好きじゃねえ、ムナカが好きなだけだ、たまたまムナカが男だっただけだ)
呪文の様に心の中で唱えながら、口に煙草をくわえると、ぼーっと空を見上げる。
(………顔、見てえな)
サンジはムナカを頭に思い浮かべ、直ぐに頭を振った。
(なに乙女みたいな事考えてんだ気持ち悪い)
苦虫を噛み潰した様な表情のサンジが煙を吐き出すと、下からクスクスと笑い声が聞こえてきた。
「あ?」
不審に思い下を見ると、そこにはムナカがいた。
「なっ!?」
「やあ、サンジ君、久しぶりだね」
暢気に手を振るムナカにサンジは驚いて反応出来なかった。
「おー!!ムナカじゃねェか!!」
サンジの後ろからひょこっと顔を出したのはルフィだった。
「やあルフィ君」
「久しぶりだなー!!上がってけよ!」
「ん?そうかい?じゃあお邪魔しようかな」
伸ばされたルフィの腕を掴み、船へ上がると、皆が笑顔で迎え入れてくれた。
まだ固まっていたサンジは正気に戻ると同時に顔が熱くなり、皆にバレぬ様食堂へ逃げた。
(なに逃げてんだおれ、あんなに会いたかったムナカじゃねえか)
平常心、平常心と言い聞かすが先程の笑顔を思い出すとまた顔が熱くなる。
「くっそ…」
その場にしゃがみこむと、くしゃりと髪を掻き上げた。
その日は結局ムナカとはろくに話せなかった。
夜になり、皆が寝静まったころ、サンジは見張りの為、外に出た。
「…………はぁ」
溜め息ばかり出る。
色々話したかったのに、おれはこんなにヘタレだったか。
手摺に凭れぼーっと海を眺めていると、誰かが船の中から出てきた。
「今日も見張りかい?サンジ君」
そう言って笑うのはムナカだ。
「!!あ、ああ」
「そう、体壊さない様に気をつけるんだよ?」
凄く心配そうに声をかけてくる様子に、胸がくすぐったくなる。
「ああ、もう壊さねえよ」
「それなら良かった」
ムナカは笑うと、手摺へ近付き上ろうとする。
「何してんだ」
「ん?ああ、いつものようにお暇しようかと思ってね」
そう言って笑うムナカに近付くと、サンジはマントを掴んだ。
「サンジ君?」
掴んだのはいいが、サンジの頭の中はパニックに陥っていた。
(どうするどうするどうするどうする)
色々考えるが何も言葉が出てこない。
ムナカもどうしたらいいのか分からず、苦笑した。
「どうしたんだい、サンジ君」
「あ、えと…だー!!!」
サンジは頭をわしゃわしゃと掻いた後、ムナカをギッと見た。
「行くな、ここにいろ」
「え?」
「ムナカが一味に魅力を感じようが感じまいがどっちでもいい、この船にいろ」
そう言ったサンジにムナカは困惑していた。
「サンジ君、よく意味が解らないんだけど…」
「っ…!!」
サンジは意を決めたようにムナカを見ると、その頬を掴んだ。
「え?」
驚くムナカに構わず、サンジは唇を合わせた。
「!!?」
ムナカは目を見開き、思わずサンジの肩を掴んだ。
サンジはそれに気付き、唇を離すと逃げようとしたが、叶わなかった。
「サンジ君、これは…その、そういう意味で受け取って良いのかい?」
顔を真っ赤にして視線を泳がすサンジの様子を肯定と受け取り、ムナカは笑った。
「サンジ、上向いて」
「!?」
呼び捨てにドキリとし、ゆっくり上を向くと、優しく笑うムナカと目が合い、思わず背ける。
「サンジ」
頬を両手で包まれ、目を合わせられる。
「サンジ、僕が何でこんなに頻繁に君達の前に現れるか、分かるかい?」
「い…や」
「君達一味に興味を持って、君に惹かれ始めていたからだよ」
顔が近付いて来たので思わず目を瞑ると、額に柔らかな感触が落ちる。
「君の料理に、がっつり胃袋を掴まれたちゃった感じかな。そこから凄く君の事が気になってさ」
至近距離で囁かれ、サンジは段々と目眩がしてきた。
「知らない内に、サンジが好きになってたみたいだ」
唇に柔らかな感触が触れたと同時、サンジのキャパシティが限界を越え、フと意識が途切れた。
「っ…」
サンジが驚いて目を覚ますと、ベッドに眠っていた。
昨晩の事は夢だったのか、よく解らない。
夢だったとしても、随分と自分に都合のいい夢を見たものだ。
いつもの様に煙草をくわえ、甲板へ出るといつもより騒がしかった。
「おー!!サンジ!!やっと起きたか!!」
やたらテンションの高いルフィに呼ばれそちらを見ると、目を見開いた。
「ムナカが船に乗るそうだー!!!!!」
はしゃぐルフィやチョッパーに囲まれムナカは笑っていた。
驚きで固まるサンジをムナカは見ると、優しく微笑んだ。
「よろしくね」
サンジは夢と思っていたことが現実だとわかり、再び意識を飛ばした。
END その四