君を思う
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「ルフィ!ちょっとこれ見てみなさいよ」
「ん?お!ムナカじゃねぇか!!」
ムナカの名前を聞いてドキリとした。
久々に聞く名前だ。
「あら、あの旅人さん、海軍にでもなったのかしら」
「海軍に?」
ロビンの言葉に皆の視線が新聞を読むナミ達に集まる。
「海軍と一緒に写ってるのよ、一緒に討伐したとも書いてるし」
ナミが皆に見せた記事には海軍大将と微笑むムナカが写っている。
「ムナカ、海軍になっちゃったのかー」
「いや、そうでもないみたいですよ」
ブルックは新聞の一行を指差す。
「ここには『ムナカは海軍の誘いを断り、旅芸人を続けるそうだ』と書かれてますよ」
「アイツらしいな」
ブルックの言葉に何故かホッとした。
何故だ?
(ムナカが敵にならなかっからだ)
それだけ?
(それだけ)
「コックさん、どうしたの?」
「え、あぁなんでもないよ」
ロビンにサンジは笑い、タバコを口にくわえた。
(わからない)
最近ムナカの名を聞くと妙に胸がざわつきそわそわする。
フと頭に浮かぶ事も多々あり困る。
「サンジ君」
「ん?どうしましたナミすわぁん!!」
目をハートにさせながら振り返ると苦笑されたが、その後に満面の笑みを浮かべられた。
「少しお話しない?」
もちろん断る理由はない、返事はYESだ。
ナミに連れられキッチンへ向かうとテーブルにはロビンが座っていた。
「ロビンちゃんも一緒かい?」
「ええそうよ」
座って座ってと急かすナミに背中を押され椅子に座る。
女の子と話をするのは嬉しいが急にどうしたのだろう。
不思議に思っていると、ロビンが口を開いた。
「ねえコックさん。貴方今恋してるでしょ」
「恋…?」
「最近のサンジ君、恋に悩む青年って感じだもの」
どこの島で会った子?などと聞いてくるナミ。
ああ、恋バナがしたかったのかと気付いたがサンジは直ぐに頭を捻る事になる。
(恋?おれが?)
「おれが恋してるのはもちろん女の「そうじゃなくて」
ナミがサンジの前にビシッと指を出す。
「特定の誰かって事よ」
「特定の…?」
「そう。フッとした時に頭に思い浮かんだり、その人の事を考えるとドキドキソワソワしたり」
にこりと笑うロビンに言われ、ある人物が浮かんだが首を振る。
(ありえねェありえねェそんなはずねェ)
顔を真っ青にするサンジに女性2人は不思議そうにする。
(嘘だろ、それ、当てはまるのって…)
ムナカだ…
先日、自分でも気付かなかった事に気づかされた衝撃の事実にサンジは頭を悩ませていた。
戦闘も料理も手に付かず、挙げ句に発熱まで。
チョッパーや他の女性人に看病されるのは天国だが、こうなった原因を考えると更に体調を悪化させる。
(おれは女が好きだおれが好きなのは女だおれは女が好きだおれが好きなのは女だ)
何度も自分に言い聞かせるが、最後に頭に浮かぶのはムナカ。
何故だわからんいつムナカに惹かれたのかわからん。
おれは女性が好きで男なんかクソくらえだ何故だわからん。
考えても考えても答えは出ない。
そういえば先日見舞いに来てくれたロビンに「熱が出ちゃう程好きなのね」と言われた。
好きな理由が解らないと言うと「好きという気持ちに理由はいらないわ」と言われた。
ああ、それではおれがムナカを好きという事が決定してしまう。
何とか避けたい事実だったが、ナミやロビンが言う相手を好きかどうかの話には全て当てはまる。
気持ちは向いているかも知れないが、身の毛もよだつその気持ちをサンジは認める訳にもいかなかった。
なんせサンジは生粋の女好きだ。
なのに隣に立つのが男だなんて、気味が悪い。
(認めない、絶対に認めないぞ)
意地でも認めないと気持ちを固めていると、突然船が揺れた。
敵襲のようだ。
ルフィの楽しそうな声やチョッパーやナミの慌てる声が聞こえる。
(ああ、ナミさんとロビンちゃんをお守りしないと)
まだダルい体を奮い立たせると、医務室を出た。
甲板は既に敵味方入り乱れた戦場になっていた。
慌ててナミとロビンを探し、戦闘に加勢する。
「サンジ君!?」
驚くナミに笑って見せるが、足はふらつき目の前も霞んで見える。
(やべぇな)
早々にケリをつけなければ。
次々と敵海賊を蹴り飛ばし、蹴散らす。
「サンジ君!寝てないと!!」
「大丈夫、ありがとうナミさん」
ニカッと笑ってまた蹴りを繰り出す。
(くっ…)
格好つけたもののかなり限界まできている。
(ヤベッ…!!)
足が縺れ倒れ込む。
「くらいやがれ!」
目の前で剣が振り上げられる。
体が上手く動かなくて、避けれない。
振り落とされる瞬間、目を見開いたが急に後ろに引かれた。
「危ない危ない」
背後に人の気配を感じ、頭上で聞こえた声に上を見る。
「僕がお相手しよう」
ムナカが厳しい表情で立っていた。
スッと前に出したムナカの手が水になる。
「
バシュっと音と共に指先から水の弾が打ち出される。
広範囲且つ複数攻撃に近くの敵は一掃される。
「
次に手の形状が変わり、しなやかな鞭へとなる。
ムナカは鞭を振るい、襲いかかる敵を次々と薙ぎ倒す。
「ん~数が多いね…あんまりしたくなかったけど、仕方ないか」
ムナカは苦笑した後、敵船に狙いを定めると走り出す。
「先ずは増援を断とうか」
敵船へ飛び移ると敵を見据えて両腕を付き出す。
「知ってるかい?海軍大将の中に瞬時に辺りを凍らせる事の出来るヒエヒエの実の能力者がいるんだ」
話し出すムナカに敵は「はぁ?」と口を開く。
「僕も似たような事が出来るんだ…例えば、空気中に含まれている水蒸気を一気に液体化させたり」
そう言ったと同時に、空中に大きな水の槍が出来る。
「
槍は船を貫き、真っ二つへ折り曲げる。
ムナカは脱出すると、一味の船へ飛び移った。
「うっひょー!!スッゲーな!!」
「ありがとう。後は君達に任せるよ、ルフィ君」
「おう!」
ニッと笑うルフィに笑い返すと、先ほど助けたサンジのもとへ来る。
「大丈夫かい?体調があまり良くなさそうだけど」
心配そうにムナカが額へ触れてくる。
他の男に触られたら嫌悪感しかないのにムナカには嫌悪感が沸かなくて、サンジは認めたくない事実を認める事になり、気を失った。
「っ…」
「ああ、目が覚めたかい?」
目を開いた先には女の子…ではなく、ムナカがいた。
「……!!」
「ああ、驚かしてごめんね?」
チョッパー君が食事でいないんだ。
ニコリと笑ったムナカはサンジへ手を伸ばす。
サンジは驚いて目を瞑った。
「……うん、熱は下がったみたいだね」
額に触れたヒヤリとした感覚にサンジは目を開く。
「覚えてるかい?あの戦闘の後、サンジ君は気を失ったんだよ。それから2日程眠っていたんだよ」
ムナカは額から手を引くと、傍らの机に手を伸ばす。
「水は飲めるかい?」
「ああ」
サンジは差し出されたグラスを受け取り、水を飲み干した。
「あの時、たまたま通りかかって良かったよ。サンジ君を救えたし」
目の前で知り合いに死なれちゃあ後味悪いし。
「さて、君が目覚めた事を皆に伝えてくるよ」
立ち上がるムナカを思わず引き留めそうになり、サンジはグッと唇を噛んだ。
(おれは女が好きだおれは女が好きだおれは女が好きだ)
心の中で呪文の様に言葉を繰り返す。
そうこうしてるうちにチョッパーがやって来て、体調チェックが始まった。
異常なしだが今日一日は安静。
チョッパーに言われ、サンジは大人しくベッドにいるが気になる事がある。
食事はどうしてるのか。
ここ数日間サンジは倒れていた。
恐らくナミやロビン辺りが料理をしていたと思うが男共(特にルフィ)が食料を食い尽くしたりしていないか。
(………気になる)
チョッパーには寝ている様に言われたが気が気でない。
もう皆が寝静まっただろうと思い、サンジはこっそりベッドを抜け出すと食堂へ向かった。
食堂へ近付くと、食堂には灯りがついており、更には美味しそうな匂いが漂ってくるではないか。
不思議に思いガチャリと扉を開けて中へ入ると目を見開いた。
「なっ!?」
キッチンに立っていたのはムナカだった。
鍋を前に何か煮込んでいるようだ。
まさか彼がいるなんて思っていなかったサンジは目をぱちくりさせていた。
驚きで固まっていると、ムナカが振り返った。
「ん?あれ、サンジ君。起きてきたのかい?」
「あ、ああ…ムナカは一体、何して…」
「ん?ああ、勝手にキッチンに立ってごめんね。サンジ君、お腹空いてるかなって」
ムナカが体をずらすと、そこにはコンロがあり、上には鍋が乗っていた。
「スープを作ってみたんだ。サンジ君のには劣るだろうけどね」
ムナカは苦笑すると、サンジをテーブルへ座らせた。
「お腹の調子はどうかな?スープ、飲む?」
「…そうだな、頂くぜ」
サンジの返事にムナカは優しく笑うと皿へスープを注いだ。
「どうぞ」
サンジの前に皿を置くと向かいの席へ座る。
サンジはスプーンで一口掬うと口へ含んだ。
「…………」
サンジは一瞬止まった後、スプーンを置いた。
「口に合わなかったかな…?」
その様子を見て眉を下げるムナカだったが、それはただの杞憂にすぎなかった。
次にサンジは皿を手にするとスープを勢い良く飲み始めたからだ。
驚いてサンジを凝視するムナカ。
「ぷはっ…」
飲み終えたサンジは恥ずかしそうにちらっとムナカを見る。
「お代わり…あるのかよ」
「!?ああ、勿論だよ」
ムナカはサンジから皿を受け取ると新たにスープを注ぎに鍋へ近付く。
注いだスープをサンジの前に置くと、にっこり笑った。
「お口に合ったみたいで、良かったよ」
ニコニコ笑うムナカ。
その顔を見ていると、だんだんと顔が熱くなって来るのが自分でわかり、サンジは慌ててスープを飲み干す。
「ご、ご馳走さま!!」
「え、サンジ君?」
勢い良く皿を置くと、逃げる様に去っていくサンジ。
その姿をムナカは驚いた表情で見送った。
(なんでもないなんでもない野郎が笑っただけだなんでもない)
医務室のベッドへ戻ったサンジは俯せに布団へ潜り込むと頭から布団を被った。
熱い頬を冷ます様にパタパタと手で扇ぐが、先程のムナカを思い出し、更に頬が熱くなる。
(だー!!!)
サンジはバタバタと暴れていたが、いつの間にか眠っていた。
「あら、おはよう」
朝、サンジが目を覚ますとそこにはナミがいた。
体調を心配して見に来てくれたようだ。
すっかり回復して元気になったサンジは朝食を作ろうとナミと共に食堂へ向かった。
そこには一味が勢揃いしていたが、ムナカの姿は無かった。
「ムナカは?」
「どうやらまた夜に出ていったみたいだぜ」
ウソップの言葉にそうか、と返事をすると、サンジはキッチンへ立つのだった。
END その三