変わった買い主
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「待てよ」
「え…?」
「聞きたい事がある」
今朝に比べマルコは落ち着いた様子だった。
「……なんだい?」
「とりあえず、こっちに座れよ」
向かいの席を指差され頷くと移動する。
椅子に座り恐る恐るマルコを見るとジッと此方を見ていた。
「き、聞きたい事ってなんだい?」
「……白ひげ海賊団におれを返すと言ってたがどうやって返してくれんだよい」
「船長白ひげになんとか連絡をして会ってもらえる事になっている」
「オヤジが簡単に信じる分けないだろ」
「勿論、信じてもらえなかったよ。それでも何度も連絡をして何とか会ってもらえる事になったんだ」
ニコリと笑い、マルコを見た。
「…嵐が来なければ今夜にはマルコ君を帰してあげれたんだけどね」
「…そうか。もう1つ聞きたいんだがこの爆弾どうするんだよ」
「勿論、外すよ」
「どうやって」
「それは…まだ言えない。ごめんね」
ピクリとこめかみが轢くつくマルコにびびったが今は絶対に言えないと口を閉ざした。
「……まあ、いい」
溜め息を吐いて俯くマルコをジッと見ていると、チラリと視線を向けられた。
「なんだよい」
「ううん、何でもないよ」
「そうか…またおれが好きとかわけの解らない事を言うのかと思った」
「え」
マルコに言われた言葉に顔が熱くなる。
「えっと…その…わけの解らない事かも知れないが、私は本気だよ」
そう言うとマルコの顔が赤くなった。
疑心と照れの混じったマルコは何とも言えない表情を浮かべていた。
そっと手を取るとちゅっと口付けた。
「私は前から君を知っていたよ、綺麗な蒼に魅せられて君に惚れて。会場で君が出されたときは何とかして助けたいと思ったよ。結果こんな感じだけれど、ちゃんと海賊団にも帰してあげれるし、ホッとしている」
指先に手の甲に掌に、愛しい気持ちを伝える様に唇で何度触れる。
「欲を言うなら…君を傍に置いておきたいがそれは私の幸せであって君の幸せにはならない。私は好いた人には幸せになってほしいからね」
そう言って手を離すとグッと手を引かれ驚いていると唇に暖かいものが触れた。
「……マルコ…君?」
「…ほんと、これ以上入って来るなよ…」
「え?」
小声で聞こえなかった為聞き返したが答えてくれず再び口を塞がれた。
驚いて固まっていると、ゆっくりと唇が離れた。
「あの…マルコ君?」
混乱してあわあわしていると、顔の赤いマルコに睨まれた。
「お前は…言ってる事もやってることもむちゃくちゃで解らない事だらけなのに、ずかずかと人の中に入ってくるしくそっ…」
目を反らすマルコにキュンとしてそっと顔を近付けた。
「マルコ君にとっては確かに私の言動や行動は解らないかも知れないね。だけど信じて」
ニコリと笑うと頬に唇を落とした。
翌日、嵐は去り快晴が広がっていた。
(ああ、いい天気)
今日には予定の場所に着くだろうと思っていたが追い風等により順調に航路を進み既に着いていた。
海のど真ん中での待ち合わせはあまり無いことなのでドキドキする。
しかも相手は白ひげなのだ、緊張するなと言う方が難しい。
深呼吸していると、ぽんと肩を叩かれた。
「…マルコ君か、おはよう」
「おはよう」
ニッと笑うマルコに微笑み返すと、海へ視線を向けた。
「そろそろ…かな」
「予定の時間がか?」
「うん。小舟の用意を頼む」
船員に伝えると皆は一斉に動き出す。
「なんの為の小舟だ?」
「白ひげ海賊団の船には私がマルコ君を連れて1人で向かう。他の皆はここで待機してもらう」
「危険を考えないのか?」
「……大丈夫だよ」
笑みを浮かべた時、轟音と共に海上に船が現れた。
「!!…オヤジ」
「来られましたか」
白ひげ海賊団の乗るモビー・ディック号、数日離れただけで随分と懐かしく感じマルコは目を細めた。
「行きましょうか、マルコ君」
テイトは笑ってマルコの手を引いた。
「………」
「………」
場はピリピリとした空気に包まれていた。
白ひげの船に移動してきた直後、マルコが帰ってきた事に皆は喜びで騒いだが、テイトの姿を見るなり沈黙と殺気が辺りを包んだ。
今は皆が見守る中、白ひげとテイトが対峙していた。
「……事情は手紙で把握した。マルコを連れてきた事にも感謝はする…が、その首のモンはどうするつもりだ」
「勿論、外します」
「鍵はあるのか」
「ありません、が大丈夫です」
テイトは深呼吸をすると、マルコを見た。
「彼は絶対に傷付けませんし、死なせませんよ」
「どうやるってんだ?」
訝しげに見る白ひげの言葉を背に受けながらマルコに近づく。
「まず…私達の乗ってきた小舟をこの船から離してください」
「なんの為にだよ」
ギッと睨んできた青年に良いからお願いしますと言うと、白ひげの指示で小舟を結んでいたロープは切り離され波に乗って流れていった。
「マルコ君、少し失礼します」
首に付いた輪に触れると、意識を集中した。
テイトの手が一瞬光った後、小舟が爆発した。
「!!?」
「なんだ!?」
「爆弾でもつんでいたのか!お前!!」
次々と武器に手をかけだした船員に慌てながらもマルコの首から輪を外した。
「なっ!?」
「おい!爆発するぞ!!」
外れたことにも驚いたが爆発すると思い慌ててテイトの手を掴んだが首を振られた。
「よく見て」
「ん…?ただの輪?」
手にある首輪には爆弾も何も付いてなかった。
その言葉に船員はハテナを浮かべた。
「……私は悪魔の実の能力者です。食べたのはカエカエの実、目に映るものと触れたものの場所を入れ替える能力。首輪が外れた原理は小舟に乗せていたただの首輪とマルコ君の首にあったものを入れ替えたのです」
「能力者…」
頷き微笑むと白ひげを見た。
「マルコ君を無事に届ける事が出来たので、私は失礼します」
「グラララ…まだ礼をしてねえ、ゆっくりしていけ」
敵意はもう無いと笑う白ひげだったが、テイトは首を振った。
「これ以上はここにいると決心が鈍ってしまいますので」
「決心?」
「はい」
もう一度、マルコに向き合うと手を取り唇を落とした。
「なっ!?」
「マルコ君、好きですよ。お元気で」
顔を赤くするマルコに微笑むと、ポンと自分に触れた。
すると一瞬でテイトの姿は消え、現れたのは一輪の蒼い華だった。
ざわめく船員達を無視し、華を拾い上げると、遠ざかっていくテイトの船を見た。
(言い逃げかよ)
そんなの、許さないよい。
マルコはニィイっと笑うと、空に飛び立った。
「おい、マルコ!!」
「グラララララ…好きにさせておけ」
白ひげは大声で笑うとマルコを見てニッと笑った。
END
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