変わった買い主
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(おや?マルコ君か)
久しぶりに見たマルコは相変わらず元気そうでホッとした。
声をかけようか少し悩んだが、避けられているのを思い出して声をかけるのをやめた。
隣を通り過ぎて屋敷に入ろうとした時、ガシッと手を捕まれた。
「……無視かよ」
「!?いや…何か考えてるのかと思ってね」
ニコリと笑うとマルコはふんと鼻を鳴らした。
(今なら話しかけても大丈夫かな?)
そう思い向き直る。
「マルコ君、明日から数日私は屋敷を離れる」
「!?…そうかよい」
「マルコ君も一緒に来てもらうよ」
「おれも?」
頷くと訝しげに此方を見つめてくる。
「“帰りたい”でしょう?白ひげ海賊団に」
「なに…?」
ピクリと片眉を動かし、マルコはテイトを見た。
「どういう事だよい」
「どういう事って…言葉の通りですよ。貴方は帰りたいでしょう?白ひげ海賊団に。だから、帰ってもらうのです」
「だから、どうやってだよ!」
怒ったマルコは自分の首に付いた輪を握りしめた。
「これは取れないんだぞ!しかもテイトから一定の距離を離れると爆発する、そんなんで帰ってもらうだと?ふざけんな!!!」
怒るマルコに対し、ニコリと笑った。
「貴方の信用がないのは解ってます。だけど信じてほしい。貴方をいるべき場所へと帰します」
力強く言ったテイトにマルコは少し落ち着きを取り戻した。
「私は好いた人には嘘は言いませんよ。必ず、貴方をいるべき場所へ」
真剣な面持ちでそう伝えると、テイトはくるりと踵を返して屋敷へと入って行った。
残されたマルコは怒りで赤かった顔が今度は羞恥に変わり、その場にしゃがみこんだ。
「なんなんだよ…!!」
ワケわからない事言ったり、恥ずかしい事言ったり。
こんなに掻き乱されるなんて、くそっ…!!!
イライラして地を殴った。
「おはよう、よく眠れたかい?」
「………」
「おっと…ごめんね。さあ行こう」
翌朝、出港の為に屋敷を動き回っているとマルコ君が起きてきていた。
挨拶をしたがとても不機嫌な表情で睨んできた為苦笑して謝った。
大体の用意は終わっていた為船へと直ぐに向かった。
(何もなければ)
今日中には目的の場所へと着く筈だ。
ずーんと気が重くなるがこれは自分が決めて続けてる事なのだから、仕方ない。
少しの間でも一緒に居れた事に感謝だ。
船着き場へと着くと乗り込み、深呼吸をした。
「……行こうか」
「出港だー!!!」
指示を出すと船はゆっくりと動き出す。
「マルコ君、適当に寛いでいてくれ。能力を使っても良いが船から離れすぎないようにね」
未だ不機嫌なマルコにそう告げるとテイトは船内へと入っていった。
残されたマルコはフンと鼻を鳴らすと空を見上げた。
(一体どこに行くってんだ)
聞いてもワケのわからない理由しか言わないし。
(ムカつくよい)
舌打ちをすると海へと視線を向けた。
その日の夕方、天気は急転し嵐に見舞われた。
揺れる船に溜め息を吐くと、目の前の資料に目を通した。
(今頃、嵐に見舞われなければマルコ君を無事に返せていたのにな…)
先方は無事だろうか、まあ無事だとは思うけど多少心配はする。
仕事の資料に目を通す気にもなれず、ぽいっと放り出した。
ウジウジしていても仕方はないと立ち上がると何か飲もうと部屋を出た。
今の時刻は深夜、皆眠っているのだろう随分と静かだ。
食堂へと向かうとそこにはマルコがいた。
「………」
「………」
お互いピシリと固まったが、先に正気に戻ったテイトがニコリと笑って部屋に帰ろうと踵を返した。
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