変わった買い主
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あれから数日、マルコ君の態度は相変わらずだ。
極力私に会わないようにとマルコ君は辺りをかなり警戒している。
傷付く態度ではあるが無理矢理な事をさせるつもりはない。
もうすぐ彼とは離れるのだ、今のうちに不死鳥マルコに対する気持ちを落ち着かせるのには丁度いいだろう。
息を吐くと外を見た。
少し、外の空気でも吸おう。
片手に本を持つと、ゆっくり立ち上がった。
(いい天気)
いつも少女に本を読み聞かせしていた木のもとへ向かうと、静かに座る。
頬を撫でる風に小さく笑みを浮かべ本を開いた。
(……寂しいものだな)
いつも少女を膝に乗せていたからか、随分寂しいなと感じて苦笑した。
この生活をするようになって軽く10年は経つがまあ慣れないものだ。
(マルコ君がいなくなったらきっと死んでしまうのだろうな)
寂しさで死ぬなんてタマでもないが。
パラパラと本を捲るとパタリと閉じた。
(明日、いや明後日かな)
彼と別れるのはきっと直ぐだ。
ぼーっと空を見上げていると、一羽の鳥が飛んできた。
手を伸ばすと降り立つ鳥に微笑んだ。
「ご苦労様」
足に付いていた文書を外し内容を確認するとくしゃりと紙を握り潰した。
「明日、か…」
いよいよかと息を吐き、目を閉じた。
(ん…?)
屋敷の廊下を歩きながら何気なく窓の外を見た
何時も少女と本を読んでいた木の根本にテイトが座っているのが目に入った。
テイトを避けはじめて数日、アイツは何も言わなかったしワザワザ姿を現そうともしなかった。
数日ぶりに見たテイトはどこか寂しげだった。
(何を寂しがってるんだか)
フンと鼻を鳴らすと、少しの気まぐれで外に出た。
わざと足音を発てて歩くが、テイトは気付いていないのかこちらを見ない。
随分な態度だなと思いながら目の前まで近付いてなんだと息を吐いた。
(寝ていたのか)
寝息をたてるテイトの目の前にしゃがむとジッと顔を見た。
(この数日ちゃんと寝てないのか?隈が出来てんな。それに心なしか疲れてんな)
ジーッと観察しているとテイトが身動いだ。
「ん…?」
目を開いたテイトはぱちぱちと瞬きした後、ふにゃりと笑った。
「!?」
「これは夢かな?起きたらマルコ君がいるなんて」
笑ったまま頬に手を伸ばしそっと触れる。
「こんな幸せな夢なら、ずっと見ていたいね」
ニコニコと笑うテイトに動揺して動けないマルコ。
ハッとして離れようとしたが、するりと手は下ろされた。
チラリと目を向けるとテイトは再び居眠りしていた。
「……なんなんだよい」
幸せって、おれがいるのが幸せってなんなんだよ。
今顔が確実に赤いのが分かる、物凄く熱い。
(…調子狂う)
やめてくれ、もう俺の中に入って来ないでくれ。
(……入って来ないでくれ?)
ああ、手遅れだと頭を抱えた。
恐らく自分はこの数日でテイトという甘い沼にどっぷりと浸かってしまっている。
もう戻れないところまで来てしまったのかと頭を抱え、屋敷に戻った。
「ん…」
肌寒くて目が覚める。
眠ってしまってたのかと苦笑すると立ち上がった。
屋敷に戻り熱めのシャワーでも浴びよう。
とろとろと歩いて屋敷に向かっていると、誰かが立っているのに気付いた。
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