変わった買い主
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(…暇だよい)
マルコは本を片手に息を吐いた。
テイトが屋敷を出て数日、外出が出来ないマルコは読書等をして過ごしていたがもう限界であった。
(暇だ)
屋敷の中に(メイド達を抜いたら)1人、誰かと特に話すわけでもなくただ一日が過ぎていく、モビー・ディックが懐かしい。
再度溜め息が溢れた時、ん?と首を捻った。
(1人…?)
あの少女と人魚はどうしたのだろうか、テイトと一緒なのだろうか。
自分だけおいてけぼりかよ!と立ち上がった時、屋敷の入口が騒がしいのに気付いた。
気になって自分も向かうと、テイトが帰ってきていた。
数日会わなかっただけなのに久々に会ったような感覚に陥りドキリとした。
(恋する乙女かよい)
会えない時が長く感じるとはよく聞くが正に自分が今そう感じているのに苦笑した。
執事やメイド達に色々指示を出すテイトを見ていると、パチリと目があった。
嬉しそうに笑うテイトに釣られて笑った時、あることに気付いた。
(あの少女がいない)
テイトの周りに少女はいつもいたのに、今日はいない。
(まさか…?)
ここに来てすぐの事を思い出した。
足長と一般の男がいなくなったのを。
テイトは帰ったと言っていた、今回も…?
(帰ったというのか?)
色々考えながら近付いて来たテイトを凝視していると首を傾けられた。
「ただいまマルコ君。私の顔に何か付いてますか?」
「おかえり……あー…そのー…」
聞くべきか聞かないべきか、少し悩んで…
「チビちゃんは一緒じゃないのか?」
聞いてみる事にした。
「ああ、あの子は帰ったよ」
さらっと答えたテイトに目を丸くした。
「帰ったって…どこに?どうやって!?」
「家にだよ?」
「…だから、どうやって?」
奴隷として買われたら首に爆弾付きの首輪を付けられるのにどうやって帰れるというのだ。
あれは外すことは出来ないしテイトに買われた俺達の首輪には離れすぎると爆発する仕組みも付け加えられているのだ。
帰れる筈がないのだ。
ここに来て直ぐ男達がいなくなった時も思ったがどうやって帰ったというのだ。
「マルコ君?」
不思議そうに見てくるテイトを疑心暗鬼で見ていると、フワリと漂ってきた香りに顔を顰た。
(血の匂い…?)
まさか、と思い一歩離れた。
「……怪我、したのか?それとも、返り血か?」
「え?」
「帰ったなんて嘘言うなら血の匂い流してからにするんだな」
キッとテイトを睨むとマルコはその場から去っていった。
突然の事に驚いて固まっていたテイトだったが、やっぱりかと困ったように笑った。
「仕方ないね、怪我無しには会えない人だから」
そして怪我をした事により血の匂いがして同時に少女達がいなくなって。
幾らか仲良くはなれた気はしたが信用されてる訳ではなく基本疑われてて。
(殺した…とか思われてるんでしょうね)
予想も覚悟もしていたが少しばかりの落胆と多大な寂しさが襲ってきた。
(好きな人にああ睨まれてはかなり堪えますね)
はぁぁあと溜め息を吐くと、用意された風呂へ向かった。
(なんでだ)
何故アイツから血の匂いがしたんだ裏で何をしているか掴ませない奴だったからやはり良くない事をしていたのか。
ぐるぐるグルグルと回る思考に深く溜め息を吐いた。
(何をこんなに気にしているんだか)
自分はもともとあいつに買われて連れてこられ脅迫され死ぬわけにはいかないから渋々暮らしてただけで別にあいつが何をどうしようが自分には関係無いこと。
(そう、関係ないんだ)
なんとか首輪を外す手段を探して、逃げ出して、オヤジ達のもとへ戻らないと。
1つ舌打ちをすると、窓の外を見た。
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