変わった買い主
名前変更
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テイトという男に買われてから数日、男が2人いなくなった。
足長の奴らはどうしたと問い詰めると家に帰ったよとへらりとアイツは笑った。
(家に帰った?)
そんな筈はない、首輪だって付けられたままだったしましてや買った奴隷を家に返すなんてありえない。
チラリと窓の外に視線を向けテイトを見た。
奴は随分と少女を可愛がっているみたいで健気に世話をしていた。
今も少女に庭で本を読んであげている。
娘を重ねるにはテイトは若すぎるし身内はいないと言っていたので妹を重ねている訳ではない。
気になって理由を尋ねたことがあり返ってきた答えは「可愛いから」というシンプルな理由だった。
可愛いから甘やかす、可愛いから構う、別段不思議じゃない行為だがおれは少しばかり、いやかなり不満だった。
何故かと言うとその理由はおれにも当てはまるといい凄く甘やかそうと構ってくるからだ。
甘やかしてくれるならいいじゃねえかと思う奴もいるだろうがこの男は別だと言いたい。
コイツの“愛情”“甘やかし”を味わえば色々な事に逆らえなくなるからだ。
ほら、今も――
窓の外から手招きするテイトに逆らえず、素直に外に出て歩いてしまう。
勿論、最初は無視した。
しかし、しつこいコイツに呆れてその時だけ爆弾を使って脅され従ってしまった為に奴に逆らえなくなってしまった。
嬉しそうに話し楽しそうに行動し優しく甘やかす。
なんだか心地好くて、それをまた味わいたくて…なんとも言えない気持ちになって、まあ絆されたのだろう。
はぁ…と溜め息を吐くと同時に男の元に着いた。
「何か考え事かい?」
「いや、別に」
「そうかい」
ぽんぽんと隣の地を叩いたので大人しく座る。
「レディは眠ってしまったよ、可愛いね」
テイトの腕の中で眠る少女は安心した表情で目を閉じていた。
「マルコ君は眠くないかい?」
「全く」
「そう。膝枕してあげようと思ったのに」
残念だよとクスクス笑う男に少し胸がざわついた。
恥ずかしかったのだ。
男に言われても嫌悪しか感じない言葉なのに何故か恥ずかしさを感じた―
(これは良くない)
マルコはスッと立ち上がるとその場から離れる。
男は何か言うわけでもなく見送り、微笑んだ。
「そう、わかりました。なら明日早速向かいましょう」
夜、眠れずに屋敷の中を歩いていると静かにそんな声が聞こえた。
声のした方へ向かうと光が扉から漏れている部屋があり、そっと中を覗いた。
中にはテイトと執事、メイドが1人ずついて、何かを決めているようだった。
「数日間…」
「お任せを…」
「衣食の用意を…」
会話はちゃんと聞こえなかったがどうやら数日程テイトはいないみたいだ。
(逃げ出せるか…?)
もしかしたら、と思ったがすぐに首を振った。
忌々しいこの首の輪はテイト無しでこの屋敷から半径100メートル以上離れると爆発する。
ここに来てすぐ脱走を試みた時に捕まえられ爆発の様子を見せられた。
『後1メートルで首が飛んでしまいましたよ』
そう言って微笑んだテイトは凄く不気味だった。
思い出して身震いした時、目の前の扉が開いた。
「どうしました?マルコ君」
ニコリと笑うテイトに頬が引き攣るのを感じた。
「眠れないのですか?」
「そ…んな感じだ」
「なら、少しお話でもしましょうか」
どうぞと中に招かれ恐る恐る部屋に入った。
執事達に下がるように伝え、中央に置かれたテーブルの上の資料を片付け机の引き出しに入れた。
「どうぞ」
ソファに促され大人しく従う。
それを見て向かい合う様に座ったテイトは微笑んだ。
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