変わった買い主
名前変更
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「初めまして、私はテイトと申します。単刀直入ですが貴方達は私が買いました」
「言われなくても解ってるんだよ!!」
悪態を吐いたのは一緒に買われてきた男だった。
「ははっ、それは申し訳ないです。それより聞きたいことがあるのですがこの中に海賊は?ああもちろん彼以外でですが」
チラリとマルコを見た後他の面々に視線を移した。
ここにいるのは今声を上げた男、人魚、足長族の男、小さな少女だった。
皆何も答えないのでまあ海賊はいないだろうと判断したのかテイトはニコリと笑った。
「それでは、家に行きましょうか」
お風呂に入って新しい服を着てもらってご飯にしましょう。
そう言って笑ったテイトに呆気にとられたのはおれだけじゃ無かったようだ。
「は?あんた何言ってんだ?」
「何、と言いますと?」
「おれ達を奴隷として買ったんだろ?!なのになんで!!」
「私は貴方達を買いました。なので私が貴方達をどう扱おうと私の勝手」
ニコリと笑うと少女に近付き抱き上げた。
短い悲鳴を上げた少女に不快な顔をするでもなく、頬の汚れを拭った。
「レディなのだから綺麗に着飾らないとだね、君は。ああそうそう、他の男性諸君はそちらのレディを家までエスコートして下さいね?」
チラリと人魚を見て歩き出した。
残されたおれ達は目を見合わせると人魚の水槽へ近付いた。
「ありがとう、ご苦労様」
着いたのはかなり大きな屋敷だった。
回りは森に囲まれており、薄気味悪い雰囲気を醸し出していた。
「さあ、中に入ろうか」
大きな扉を叩くと内側から扉が開かれた。
「お帰りなさいませ」
「ただいま」
執事らしき男に出迎えられニコリと笑みを浮かべる。
屋敷の中にはメイドもたくさん並んでおり、見たことない光景に目が眩んだ。
「この少女を風呂に入れて着飾ってあげてくれ。人魚のレディは広い水槽へ。そこの男性と足長の彼も風呂に案内を頼むよ」
出される指示にテキパキとメイドと執事は動く。
それを満足そうに見つめるテイトはくるりと振り返った。
「不死鳥君はどうされます?お風呂」
笑顔で言われてイラッとしたがあまりにも体から女の香水の匂いがして気持ち悪かったので風呂に入る事にした。
(なんだコイツは)
ニコニコと笑いながら少女へと食事を与える男を訝しげに見た。
風呂から上がると衣装部屋のようなところに通され好きな服を選ばされた、その後に待っていたのは豪華な食事。
至れり尽くせりの行動に困惑しているのはおれだけじゃなかった。
隣に座る男も足長の男も人魚も直に食事を与えられている少女も、ニコニコと笑う男が何を考えているのか解らなくて困惑していた。
「なあ…」
そんな中隣の男が口を開いた。
「ん?なにかな?」
「なんでおれ達にこんな良くするんだ?奴隷として買われたんだろ?なんか扱い可笑しくないか?」
「ふむ…」
テイトは頬杖をついてニコリと笑った。
「貴方は酷い扱いがお望みかい?ならば望み通りしてあげてもいいが…もう一度言っておこう」
持っているフォークをピッと男に向ける。
「私は貴方達を買いました。なので私が貴方達をどう扱おうと私の勝手」
貼り付けられたような薄い笑みを浮かべたテイトに身震いした。
(この男…)
喰えない。
他の面々は恐怖を覚えていたが、自分は武者震いにも似たモノを感じていた。
「さて、食事中に野暮な質問はしない事ですよ。このお話は終わりです」
ニコリと笑うと小さな一口サイズに切った肉を少女の口に運んだ。
あの後食事を終えると夜も遅いからと部屋を与えられてそこを自室として使うようにと告げられた。
絢爛豪華な装飾にふわふわのベッド、少女の部屋には天蓋付ベッドがあるらしいまるでお姫様だ。
人魚は屋敷の中にあるプールに案内されたそうだ、ちゃんと水中にはベッドもあるらしい。
ベッドに座るとあまりの用意の良さを不思議に思い頭を捻ったが直ぐに解決した、アイツは人間オークションの常連のようだった、何回も競り落としてこうして丁寧に扱ったのだろう。
「薄気味悪い奴だ…」
奴隷を買い、客人の様に扱い。
いやしかしそれは今だけかも知れない、明日からは酷い目に合わされるかもしれない。
一つ舌打ちをするとベッドに身を投げた。
(早く…)
逃げ出して、オヤジのもとへ戻らないと。
首に付けられた忌々しい輪を触り、目を閉じた。
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