変わった買い主
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「やっちまった…」
ポロリと出た言葉に隣にいた人魚が此方を見た。
ギロリと睨むと慌てて目を反らす人魚に思わず舌打ちした。
「次、お前の番だぞ。不死鳥マルコ」
ニイッと厭らしい笑みを浮かべる男にも舌打ちをした。
シャボンディ諸島にある人間オークション会場に不死鳥マルコはいた。
彼を知らない人の方が少ないだろう、なんせ白ひげ海賊団の一番隊隊長を勤め実力も折り紙付きだ。
何故そんな彼がこのオークション会場に、更に言うなら商品としているのか。
理由は凄く間抜けなもので金目当てで近付いてきた女の誘いにわざと乗り捕まったためだ。
逃げ出す力はあるし自信もあった。
しかし女は悪魔の実の能力者であるマルコの動きを封じるためにナニの最中に海楼石の手錠を嵌めてきたのだ。
マルコとしては恥ずかしくて死にたい位の失態だった。
ああこのまま海軍に付き出されるのかと思っていたら人間オークションに連れてこられ今に至る。
逃げ出す事は容易ではない、原因は首に付けられた爆破装置付きの首輪だ。
これを爆破させられたらいくら不死鳥マルコと言えど死の確率は高いだろう。
どうしたものかと思考を走らせているといつの間にか自分の売りが終わっていた。
誰に買われたとかは関係ない、ただ逃げ出して仲間達の所に戻ることが重要なのだ。
「ここで待ってな」
連れてこられた会場裏には人が溢れ返っていた、よくよく見ると皆売りに出されたものだらけだ。
そんなに早く終わったのかと思うと同時に自分は長い間考え事をしていたんだなと驚いた。
今日のメインはどうやら自分だったらしく、会場から人がゾロゾロと出てくる。
会場で働く人物達に囲まれ出てきたのは1人の男だった。
パッと見特徴は無くどこにでもいそうな男だ。
「いつもいつもありがとうございますテイト様」
「いや、こちらこそ」
ニコリと笑うテイトと呼ばれた男は周りを見渡し隣にいる引き渡し人に視線を戻した。
「それじゃあ何時も通りお願いします」
「へい!!」
その言葉が合図の様に引き渡し人達が慌ただしく動き出す。
売られた奴一人一人に何かシールを貼ると、貼られた順にその場から去っていく。
よくよく見るとそのシールは全部同じマークで、んん?と頭を捻る。
「何か不思議な事でもあるのかい?不死鳥マルコ君」
目の前に来てニコリと笑う男を睨み付ける。
「そんなに睨まないでくれよ。あ、覇気も無しだよ。私に危害を加えると即座にボカンだ」
首を指差す男に舌打ちをした。
「で?何が気になっていたんだい?」
「……同じシールばかり貼られているのが気になっただけだ」
「ああ、あれは私が買った証拠だよ」
「お前が…!?」
金持ちにも見えないこの男が、今日のオークションに出された者達皆を買ったと言うのか!?
驚愕で目を見開いていると、腕を引かれた。
「後はお前だけだ!早く歩け!」
そう言った引き渡し人を睨みながら立ち上がった。
「おら、降りろ」
「ぐっ…」
船に乗せられ一時間程か、どこかの島に着いたらしく船から降ろされた。
「それじゃあ旦那、お気をつけて!」
「ありがとうございます」
頭を下げて去っていく引き渡し人達をニコニコと笑いながら見送るテイトだったが船が見えなくなるとスッと冷たい表情に変わった。
その表情を見ていたのは自分だけだったらしく他に一緒に運ばれてきた奴らはただ不安そうに背を見つめていた。
「さて、皆さん」
クルリと振り返った時には満面の笑みを浮かべていた。
.
1/8ページ