参ったピヨった
名前変更
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「あっれ…?」
肌寒いな~なんて目を覚ましたら海でした。
あれ?あれ?何、え、オジサンどうしちゃったの。
太智はパニクりながらも自分の状況を見てまぁ驚いた。
何もない小舟に1人でぽつーんよ。
「落ち着け俺」
とりあえず深呼吸。
こうなる前の事を思いだそう。
………あれ。
「俺死んだんじゃ…」
〇〇歳になった俺は身内に看取られた気がする。
なのに体は若返って何故かここに。
海に顔写らないかな~なんて思って覗き込む。
奇跡的に海に映し出された顔は30代前半の顔。
「………」
このぐらいの時の顔見たら思い出すな~
ヒヨコちゃんのこと。
1人感傷に浸りかけて慌てる。
今はそんな事してる場合じゃない。
ここがどこか、だ。
とりあえず三途の川では無さそうだ。
カモメが飛んでるから間違いなく海。
何で若返っているのか。
走馬灯の中にいる訳では無さそうだ。
だってこんな海のど真ん中に来たことないし。
考えても考えても分からない。
嫌になってくる。
「ねぇ」
頭を抱えていると後ろから声をかけられた。
驚いて大袈裟に肩を震わせて振り返ると自転車に乗った某俳優にそっくりな人がいた。
(え、自転車!?)
何で海の上で…ってなんか海に氷の道出来てるし!
驚いて視線を忙しなく動かしていると男は笑った。
「あんた、おれの事知らないの?」
「…はい」
某俳優なら知ってるが彼は別人だ。
ジロジロと観察する視線に居心地が悪くなる。
「決めた」
「へ?うおっ!?」
ヒョイっと持ち上げられ、担がれる。
「なななな、なに!?」
「連れて帰る」
「連れて帰るって、何処にですか!」
「海軍」
「海軍…?」
どっかで聞いた事あるな…
いや、海の軍なら日本にもあるしな…
大人しくなった太智に気を良くしたのか、男は自転車を漕ぎ出した。
(えっ?)
海に沈むと思いきや海は凍り、道が出来ていく。
驚いて見ていると男はまた笑った。
「おれは海軍大将青雉、悪魔の実、ヒエヒエの実を食った男だ」
青雉と名乗った男に固まった。
男というか、ある単語に。
(悪魔の実…?)
確実に聞き覚えがある。
(ヒヨコちゃん)
そう、遠い昔彼から聞いた。
自転車を漕ぎ続ける青雉の肩の上で、暢気に考えていた。
連れて来られたのは海軍本部という場所。
大将の地位がどれ位偉いのか解らないが、擦れ違う人擦れ違う人が彼に挨拶をするのだから相当偉い筈だ。
そんな彼に担がれているもんだから、俺は注目の的だ。
好奇の視線を感じながらも大人しくしているとどこかの部屋に着いた。
「よいしょ」
下ろされたのはソファーの上で、彼はその向かい側に腰掛けた。
「でさ」
「はい?」
「君の名前は?」
「えっと…山本太智です」
「太智か。あんなところで何してたの?」
スッと目が細められる。
その視線に背筋がゾクリとした。
「えっと…」
何していたと言われても気付いたら彼処にいた。
「頭可笑しいと思われるかも知れないですけど…」
太智は自分の身に起こった事を素直に話す事にした。
違う世界の人間であること、一度死んだ事、この世界の事が一切解らない事。
信じてくれるわけないだろうな、なんて思いながらも話したが彼は真剣に聞いてくれた。
「ふ~ん…って事は太智ちゃんおれより年上?」
「(太智ちゃん?)年上、ですね」
「それにしてはなんか若々しくない?」
「気付いたら…」
苦笑した太智に対し青雉はふ~んと言った。
「まぁ…グランドラインだしね…」
(グランドライン?)
よく解らないがそのグランドラインでは何が起きるかわからないらしい。
「とりあえず一応あんたの素性を探らせてもらう。それでなんにも出てこなかったらその話信用してあげる」
「はぁ…」
それなら別に連れて来なくても知らんぷりしておけばよかったのに。
そう思ったが何も言わずに彼をチラリと見た。
「調べる間、俺は牢屋かなんかに入れられるんですか…?」
「いや、この部屋にいていいよ」
「え?」
普通は牢屋に入れるもんじゃ…
「実はね~もう素性を調べ始めてるんだよね。優秀な奴等に頼んでるから今日中には解る…けど、念のために手錠はしてね」
「はぁ…」
カチャッと付けられたのは少し変わった手錠だった。
(海の匂いがする)
実際匂いはしてないのかもしれないが、そう感じた。
「………」
(海楼石の手錠では変化なし)
少なくとも能力者では無さそうだ。
不思議そうに手錠を見つめる太智に青雉は口を開いた。
「そんなに手錠が不思議か?」
「手錠というか…この手錠が不思議な感じがするな~って」
「海楼石で出来てるからねェ」
「海楼石?」
首を傾けた太智に青雉は溜め息を吐いた。
「ほんとに、なんも知らないの?」
「全く」
いや、ここがヒヨコちゃんの世界なら少し解る事もあるが解らない事の方が遥かに多い。
「地理も何もかも。貴方の様な人間も初めて見ましたし」
太智は真っ直ぐ彼を見て言った。
青雉は少し考えた後、どこからか地図を取り出した。
「……海ばっか」
「あんたのセカイは違うのか?」
「海の方が多いですけど、陸も多いです」
「ふ~ん。書いて」
「え?」
「あんたのセカイの地図書いて」
紙とペンを渡される。
太智は世界地図を思い出しながら書き出した。
世界地図を書いた後は互いに質問をしあった。
地図を書き上げた時に俺の素性を調べあげた報告書を持った人が来たが成果はなし。
俺からもよくわからない事が話されるので青雉さんは少し俺を信じてくれたみたいだ。
「あの…」
「ん?」
話が一度区切られ、口を開く。
「俺はこれからどうなるんですか?」
殺されるのかとヒヤヒヤする。
「どうしたい?海軍にでも入っちゃう?」
「え?」
軽い口調に驚く。
(軽すぎだろ)
飯行く?ってノリじゃねぇか。
いや、それより…海軍か。
行き先のない俺にはいい案かも知れない、だけどここがヒヨコちゃんの世界なら…
(一度探しに行きたい)
太智はん~と唸った後、青雉を見た。
「海軍には…入りません。この世界を見て回りたいです」
「おれは別に構わないけどさぁ…野垂れ死にするのが目に見えてるよ」
青雉の言葉にグッと喉が詰まる。
「えっと…少しの間でいいです。この世界の事を教えていただきたい。そして俺を鍛えて下さい!」
土下座の勢いで頭を下げる。
「それなら海軍にいたらいいじゃない」
「それは…」
太智は覚悟を決め、ヒヨコちゃん…マルコの事を話した。
名前は出さないが、ある子供を捜してみたいと。
「うん、あんたの気持ちは解った。けどその子供がこの世界にいるとも限らない」
「それでも捜してみたい」
ジッと彼を見ると、盛大な溜め息を吐かれた。
「おれ、こうゆうの柄じゃないんだけどな…」
そういいながらこっちを見た彼は玩具を見つけたようだった。
「おれは厳しいよ?」
「覚悟してます」
太智はニッと笑った。
(いい眼をしやがる)
(俺、頑張れるか自信ねぇや)
END 彼の世界?