参ったピヨった
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「うっ…」
(息苦しい)
胸が押し潰されてる。
目を開けると、目に入った金髪。
(ヒヨコちゃんか)
自分の上に寝そべる彼は寝ている訳ではないみたいだ。
もぞっと動いた頭。
視線がかち合うと彼は慌てて起き上がる。
「?……おはよう」
「お、おはよう!!」
忙しなくキョロキョロ視線を動かすマルコを不思議に思いながらも腕を広げると素直に甘えてくる。
胸にぐりぐりと頭を押し付けてくるマルコの背中をぽんぽんと叩く。
力を抜いたマルコの髪を掻き上げ額に唇を落とす。
「どうした?」
何も言わないマルコに優しく声をかける。
「何でも…ないよい」
「当ててやろうか?」
太智はクッと笑う。
「昨日構ってもらえなかったから寂しいんだろ」
「ち、違うよ!!!」
途端慌て出すもんだから可愛い。
ギューっとマルコを抱き締めた。
「子供は素直に親に甘えなさい」
うりうりと頬を引っ付ける。
マルコは真っ赤な顔でうーと唸った後、太智の首に腕を回した。
「寂し、かった」
「ん、ごめんな」
マルコを抱き締めたまま起き上がり、ベッドを出た。
リビングに行くと、パソコンの横に冊子が一つ置かれていた。
太智はソファーに座るとマルコを膝に乗せて冊子を手にした。
「昨日な、これ作ってたんだ」
「作ってた?」
「ん、マルコにあげるために」
開けていいぞ、と言われマルコは冊子を開く。
「わぁ…!」
それはアルバムだった。
「俺とマルコが出会って1年のプレゼント」
そう、もう1年経っていた。
その間に撮った写真を現像し、アルバムをひたすら作っていたのだ。
「こんなんで悪いな」
「ううん、まる、すっごく嬉しい!!」
太陽のような明るい笑みを浮かべてマルコに太智も微笑んだ。
なぜ太智がアルバムを作ったのか、それは昨日の朝の出来事が原因だった。
いつもの通りに起きた太智は違和感を感じた。
いつもある温もりがない。
布団を捲るとそこにはノイズの入った映像のように掠れゆくマルコ。
驚いて抱き締めると温もりを感じ、掠れも無くなったのだが確信した。
もう帰るんだ。
そう確信した太智は急遽アルバムを作製していたのだ。
そんな事は勿論マルコには言っていない。
言えば泣くに決まっているから。
ただ、帰るその時まで、むちゃくちゃに甘やかしてやる。
アルバムを見るマルコをギュッと抱き締めた。
(漫画かよ)
その日の晩、マルコは消えた。
いや、帰った。
唐突だった。
風呂上がりの一杯を飲もうと冷蔵庫から酒を取り出して振り返るとマルコはいなくなっていた。
「寂しくなるな」
泣き虫なあの子は泣いてないといいけど。
太智はパソコンを開くと、一週間後に仕事に戻るとメールを送った。
目を覚ますと、見たことない部屋にいた。
一瞬でわかった。
‘こっち’に帰ってきたと。
寂しさと心細さで腕の中のアルバムをギュッと抱き締めると部屋の扉が開いた。
「起きたか」
入ってきたのは髭が特徴的な男。
「おれはエドワード・ニューゲート。お前さんは?」
それが白ひげとマルコの出会いだった。
「おい、起きねえか」
肩を叩かれ、目を覚ます。
「オヤジ」
回りを見ると、そこはモビーの上だった。
マルコはフッと笑ってオヤジ、白ひげを見た。
「随分懐かしい夢を見たよい」
「ほう?どんな夢だ」
「オヤジと出会った時、アイツと過ごした日々」
もう、何十年も前の話だ。
「ソレを握って寝てたからじゃねぇか?」
白ひげが顎をしゃくった先にはアルバムがあった。
太智が作ってくれたアルバム。
「かもねい」
開くと、そこには満面の笑みの太智とマルコ。
(太智)
元気にしてるか?
おれは立派に育ったよい。
もう一度…会えるなら会いたい。
大好きだ。
親として、1人の人間として大好きだ。
マルコは愛しそうに写真を撫で、白ひげを見た。
「おれ、どれくらい寝てた?」
「3時間くらいだ」
「マジかよい!?すまないオヤジ!!」
慌てて駆け出すマルコを白ひげは笑って見ていた。
(懐かしい夢を見た)
(大好きなアイツの夢だ)
END 長い夢