参ったピヨった
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…………」
エースは掃除をしながら2人の人物を見ていた。
一人は我等が一番隊隊長マルコ様。
もう一人は異世界でのマルコの育ての親太智。
2人はなんだかんだあって離ればなれだったが、再び出会えて今は恋人同士で船に乗っている。
なんというか、見ててホッとする2人だ。
マルコがオヤジ意外で唯一甘えれる存在、甘やかしてあげれる存在の太智。
二人とも男同士だがそんなもの関係ない。
二人はホントに互いが好きだから。
太智が船に乗って一年以上は経つが、2人の熱は冷める所かヒートアップする一方。
いいのだ、別に。
彼等のいちゃつきようを見てたらたまに一人身が淋しくなるが、いいのだ。
だから―
(早く結婚すりゃいいのに)
男同士で結婚…なんて可笑しいかもしれない。
ましてや式なんてもっての他。
しかし、エースはなんとしても式をこの船の上で挙げて欲しかった。
理由は新人ナース。
何故かこの一年は元からいたナースが数人恋に落ちたとかで船を降り新人が数人乗ってきた。
それはいいのだけれど、困った事に彼女達はマルコと太智の関係を認めようとしないのだ。
理由は簡単、彼女達は2人それぞれに惚れてるからだ。
皆が皆ではないが、2~3人の子がマルコを好きだとか太智さん素敵だと話してるのを聞いた。
別に彼等が彼女達に言い寄られたからってそっちに移るような人物達ではないのは知っているが、彼女達にはっきり解ってもらわないと‘おれら’が迷惑をするのだ。
他の隊長やナースからマルコ達の情報を聞き出す彼女達は別に悪い子達でもないからいいのだが、付け入る隙など全くないのだから、変に傷付く前に諦めさせたいのだ。
そう思って結婚式はしないのかと聞くと、二人揃って「しなくても通じ合ってるから大丈夫」なんて言うから黙るしかない。
ん~と考えていると、コロコロと何かが転がってきた。
(……ナット?)
工具であるナットが転がってきたのだ。
拾い上げて空に掲げん~と頭を捻る。
「…………そうか!!!!」
エースはニカッと笑うとモップを投げ出して走り出した。
「なあ太智!!!ちょっと出掛けようぜ!!!」
「ん?急だなあーどした?」
「いいからいいから!!」
「でも、出掛けようって言っても、島はまだまだだろ?」
「平気平気!ストライカーがあるから!」
エースは太智の腕を掴むと船内を走り出した。
「おい!?」
慌てる太智を余所にエースは甲板へ出ると、船の縁に手をかけて――飛んだ。
「なっ…!?」
2人はストライカーに無事着地するとエースは太智に振り返り笑った。
「行くぜっ!!!」
呆然とする太智の肩を叩くと、ストライカーを動かした。
「おい!アイツ太智を連れてドコに行く気だ!!」
「マルコ!!追えよ!」
「チッ…!!今からじゃ間に合わねえよい!!!」
船の上では皆エースの突然の行動に驚いていた。
慌てふためく面々を余所に白ひげは笑っていた。
「グラララ…ほッておけ」
笑う白ひげに皆は面食らったが、オヤジが言うならと皆は心配そうにエース達の後ろ姿を見送った。
「なあエース、何処向かってんだよ」
「ん?次の島だぜ!」
「なんか急ぎの用でも?」
「おう!!」
勢い良く走るストライカーによって段々と次に上陸予定の島が見えてきた。
「なあ、いったいなんの用があるんだ?」
「なあ、マルコに何かプレゼント買わねェ?」
突然言い出したエースに太智は目を丸くする。
「急に、どうしたの」
「ほら、一年以上経つのにお揃いの物とか持ってないだろ?」
「まぁ…」
「安いのでいいからさ、気持ちのこもったものプレゼントしようぜ!指輪とかさ!!!」
「………エース、やけに今日は饒舌だな」
「え?ジョウゼツ?」
「よく話すなって事。何企んでる?ん?」
子供の悪戯を見抜いた大人の様に優しい声で言われ、エースの口端がひきつった。
「大人しく言ってみな?」
後ろでニヤッと笑った太智に観念し、エースは口を開いた。
エースからナース達の現状、そして考えを聞いていると島に着いた。
すぐ近くに町があり、そちらを見つめた後エースを見た。
「………エース、宿とっといて」
「え?」
「俺…買物してくるから」
微笑んだ太智にエースは満面の笑みを浮かべた。
「じゃ!!宿探してくるな!!」
「任せた」
走って行くエースを見送ると、歩き出した。
(さて…)
ゆっくり歩き出すと、町へ向かった。
(ん~)
エースは指輪を買えと言ってたけど、どうしようか。
(指輪…指輪なぁ…)
指輪なんて買ったことないしどうするかなー
町のアクセサリー屋のショーウィンドウを眺めながら歩く。
なんと言うか、しっくり来るものがない。
町の広場へ着くと、そこには噴水があり、それを囲むように露店があった。
なんとなく見て回っていたが、フと足を止めた。
(これ…)
ある露店の前で止まると、しゃがんだ。
「いらっしゃい」
露店のお姉さんの明るい声に微笑み、商品を手にした。
「これ、男物でいいんだよね?」
「ええ、そうよ」
自分の指に嵌めてみて、指先でも触ってみる。
(こんぐらいかな…)
太智はフッと微笑むと顔を上げた。
「お姉さん、これもらうわ」
「ありがとう」
露店のお姉さんは笑った。
2日後、白ひげ海賊団は島に着いた。
エースと太智がいる島だ。
「よっしゃ!!!行くぜっ!!!」
船員達が嬉々として船を降りていく。
マルコもそれに混ざり、鳥に変身すると空へ舞った。
(おー、着いたか)
町にいる船員達を見て、白ひげの到着を悟る。
「あっ!!エース!太智!!」
こちらを見つけた面々は駆け寄ってきて二人を囲む。
騒ぐ面々の中には勿論マルコの姿は無く、空へと視線を向けるとよく見知った鳥が飛んでいた。
太智は笑ってその場を抜け出すと、町外れへ足を進める。
その後を追い掛けてくる鳥が可愛くて笑みが深くなる。
鳥を見上げながら歩いていると、町外れの森へ着いた。
鳥がゆっくりと降下して来るのを見て腕を広げると、鳥から人へ変わった彼が腕の中に舞い降りた。
「よっ!」
「………」
「怒ってるの?」
「…いや、太智は悪くないから、怒ってない」
そうは言ったものの、ムッとした様子のマルコに笑うと、近くの木へそっと押し付けた。
「エースに嫉妬したのか?」
「なっ!ちげェよ!!」
「顔赤いぜ?可愛いなぁ…オジサンのヒヨコちゃん」
キスをすると、マルコの顔はさらに赤くなる。
優しいキスを受け入れ、酔いしれるマルコの左手をとると、指を絡める。
その瞬間、ん…?とマルコの動きは止まり口が離れた。
「……これ、なんだよい」
「プレゼント」
左手薬指に嵌まった指輪を見て、マルコは不思議そうに言った。
「…プレゼント?」
「うん。俺はマルコに色々貰ってるのに、俺は何もあげれてないからな」
マルコは指輪をマジマジと見つめた。
蒼い石の嵌まった指輪。
まるでマルコのような蒼。
派手すぎずシンプルすぎず、戦闘でも邪魔にはならない。
(これって…)
「結婚指輪」
「!?」
「そのつもりなんだけど、どう?」
思考を読まれたのかと焦るマルコだったが、すぐに落ち着いて太智を見た。
「結婚指輪…ねぇ…」
「うん」
「最近の船の恋愛事情を聞いて、これを買ったのか?」
ジッとマルコは見つめる。
「なんだ、マルコは知ってたのか」
知らなかったのは俺だけか~と溜め息を吐く太智にマルコは頭を抱えた。
(全く、相変わらず鈍い)
そう思って溜め息を吐いたが、不意に手を握られた。
「…?」
「まあ、エースに言われてとかもあるけど…俺はマルコがいいなら、この指に嵌めた意思を汲み取って欲しい」
真剣な目で見詰められ、一瞬思考回路が止まる。
再び回路が動き出した時、恥ずかしいような嬉しいような泣きたいような。
色々な感情が混ざりあって太智に抱き付いた。
「おっと」
首に回した腕にギュッと力を入れると、背中に腕を回された。
「なあ、マルコ。オジサンと夫婦ってやつ、してみない?今までと関係は変わらないかもしれないけど」
優しい声色に、マルコは太智の首に頬を擦り寄せた。
目に溜まった涙が触れて少し泣いている事に気付いている筈なのに、太智は何も言わずに頭を撫でただけだった。
「そろそろ戻ろっか」
「ああ」
笑う太智はスッとマルコの手をとると、ゆっくり歩き出す。
やけに緊張した様子の太智を不思議に思って見詰めると、視線が合った。
「なに?どうした?」
「おれの台詞だ。なんでそんな緊張してるんだよい」
「…わかる?」
「バレバレ」
太智は困った様に笑うと、キュッと繋いだ手に力を込めた。
「オヤジさんに報告するの緊張するなーって」
「報告?」
「マルコを嫁にいただきますって」
マルコはポカンとしたがすぐに顔を真っ赤にさせた。
(可愛いなあ)
太智はニコッと笑うと歩く速度を上げた。
船には殆ど誰もいなかった。
甲板には白ひげとナースがいて楽しげに会話をしていた。
「丁度いいね」
「え?」
「オヤジさんもいるし、ナースさんもいるし」
目の前で話をすれば解決するだろう。
手を離そうとしたマルコの手を強く握る。
「!?」
「オヤジさーん」
手をぶんぶん振りながら近づいて行く。
マルコは戸惑ったがそうこうしてる間に白ひげのもとへ着いた。
「ん?いってェーどうした」
「マルコを俺の嫁に下さい」
「太智!?」
突然切り出した太智に面々は驚く。
「………急に、なんだ」
「マルコと夫婦になりたいんです。男同士だけど、そんなの関係ない」
太智は微笑みを浮かべると握った手を持ち上げ白ひげに見せた。
「オヤジさん、マルコ、この指輪、モビー・ディック号、船員、全てに誓う。必ず幸せにするって」
白ひげは鋭い目付きのまま太智を見つめる。
次の瞬間、薙刀を握っていた。
「オヤジ!?」
マルコは慌てて太智の前に立とうとしたが、太智はそれを制した。
風を切る音がして切っ先は太智の目の前で止まる。
「…本当だな」
「当たり前だ」
その返事に白ひげはニヤリと笑うと、大声で笑いだした。
「グララララ!!!!………息子を、頼むぞ」
「勿論」
太智は笑い、マルコは2人を交互に見たあと微笑み、2人を狙っていたナース達は諦めた。
「イヨッシャー!!!!!」
「やったなマルコ!!!」
どこに隠れていたのか、次々と船員達が現れた。
あっという間に取り囲まれると、肩を組まれたり髪をぐしゃぐしゃにされたり、とにかく揉みくちゃにされた。
「野郎どもォ!!宴だ!!!!」
白ひげは再び大声で笑った。
「んんっアーアー」
サッチは喉の調子を確認すると、太智とマルコに近寄った。
「なんだよ」
「気持ち悪いよサッチ」
「おまっ、気持ち悪いってどうゆうことだよ!!!!」
サッチは叫んだが、すぐに咳払いをした。
「改めて、おめでとう」
笑うサッチの頭を太智は撫でた。
「ありがと、サッチ」
「うちの長男、泣かすなよ!」
「当たり前、オジサンはサッチと違って大事な人は泣かせないよ」
「どういう事だ!!!」
喚きだしたサッチにククッと笑う。
「そういう事」
デコピンをすると、隣に座るマルコの手を握った。
途端顔を赤くするマルコに微笑むと、頬に口付けた。
(マルコ)
(ん?)
(俺で良かったのか?)
(お前がいい)
END 参ったピヨった
15/15ページ