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「っ…太智!!」
「うおっ!?いきなり起きたらサッチ様が驚くだろうが」
ガバッと起きたマルコに笑いながらサッチは言う。
「……サッチ?」
「ん?おれだぜ?」
サッチをジッと見た後、マルコは肩を落とした。
(やっぱり夢か……)
(とか思ってんだろうな~)
マルコの考えている事は解っていたが、サッチは敢えて黙っていた。
もうすぐで戻ってくるだろうから。
ずーんと落ち込んだマルコを内心で笑いながら、指を差す。
「ナースから伝言。『相変わらず驚異の回復力だけど、明日までは様子見で部屋を出ちゃだめよ』だってよ」
ナースのウィンクを再現したサッチに心底嫌そうな顔をした後、ベッドから降りようとした。
「おいマルコ」
「あ?」
「オヤジからも伝言で、たまにはゆっくり休め、だとよ。悪いけど外には見張りがいるから部屋は出さねェぜ?」
ニヤッと笑ったサッチにマルコは溜め息を吐いた。
「なら…今から言うもの取ってこいよい」
「おっ!サッチ様をこき使う気か?」
「暇だから何か本持ってこい」
「無視か!!」
サッチ様傷付いちゃうなぁ~なんて言いながらサッチは部屋を出た。
マルコは溜め息を吐いてチラリと時計を見る。
今は夜中か…戦闘があったのは昼過ぎだから…
(半日は寝てたのか)
海楼石が仕込まれていた弾丸を受けて気絶してから大分経っていたみたいだ。
太智の事でもピリピリしてて、きっと疲れてたんだ。
ボフッとベッドにマルコは沈む。
「太智…」
ポツリと呟いた言葉は誰にも届くことなく、部屋に響いただけだった。
―グラララララ
(ん?)
船内に響き渡る声。
眠っていたマルコは目を覚ました。
(これは…)
オヤジの声なんだが、ここまで大きな声で笑うのは随分と上機嫌の時だ。
時計を見ると、丁度昼過ぎ。
随分と眠っていたようだ。
枕元にはメモ書きが置いてあり、ナースからの外出許可が書いてあった。
とりあえず、身嗜みを整える為に一旦部屋に戻る事にした。
一旦部屋に戻ったのは良いものの、何やら船内の様子は陽気だった。
宴が行われていたのだ。
なにかあったのかと不思議に思いつつ、部屋で着替えをしていると、隣の部屋に誰かが入る気配がした。
(誰だ?)
太智が降りた今、誰もいないはずなのに。
不審に思い自室を出る。
少し開いた扉、マルコは神経を研ぎ澄ませ中にいる気配を探りながらそっと覗いた。
ベッドに横向きに横たわる男の身体には包帯が巻いており、怪我をしているようだ。
「くっ…」
苦しげに吐かれた言葉は聞いた事のある声で、マルコは扉を開いた。
キイッと音を発てて開いた扉に気付き、男は起き上がった。
「誰だ…?」
「…………太智?」
「あぁ、マルコか」
起き上がったのは太智だった。
マルコは驚いて言葉を失った。
降りたと思った太智がいるのだ、驚かない訳がない。
そんなマルコに向かって太智は微笑むと、手招いた。
マルコはハッと正気を取り戻すと、ゆっくり太智に近付いた。
「なん、で…」
「ん?」
「なんで、居るんだよい」
マルコは直ぐにしまった、とバツが悪そうな顔をしたが、太智は笑うだけだった。
「降りたと思ってた?」
「…よい」
「まぁ…降りるつもりだったけど、急にマルコと離れるのが嫌になってな」
「はぁ?」
「マルコも俺と離れたくないんだろ?」
ニィと笑った太智の笑みはからかう時のソレで、マルコは頬が熱くなった。
「どうゆう…ことだい」
「そうだな…マルコが夢だと思ってたのが、実は現実、ってな」
言われて…フと思い出す。
『傍にいてくれ』
『傍にいるよ』
あの会話が現実だったというのか。
なら、なら…
マルコは顔を真っ赤にして、ぷるぷると震え出した。
「マルコ?」
此方を覗く瞳は全て解りきった瞳をしていた。
太智は震えるマルコに手を伸ばすと、後頭部に手を回し自分の肩口に引き寄せた。
「俺も好きだよ、マルコ。傍にいさせて」
‘俺も’の言葉に羞恥が煽られグッと肩口に頭を押し付けた。
「おれ…の事、子供だって」
「そうだな、子供だな。だけどこの数日間で子供以上の感情を抱いた。信じてくれない?」
マルコは顔を見上げ、直ぐに反らした。
太智の言葉が本当なら嬉しい。
嬉しいけど、嬉しいけど…
信じられなくてドギマギするマルコを見て、太智は少し体を離した。
「俺はこの船に残るよ。お前の傍にいる」
そう言いながら体の包帯を外した。
「それ…」
「今日彫った。俺の命はお前の為に」
太智の心臓の上、その場所を羽ばたくように大きな蒼い鳥が彫られていた。
その蒼い鳥の下にあたる横腰の位置には白ひげ海賊団なら皆彫っているだろう誇り。
「まさかこの歳になって彫るとは思わなかったけどな」
苦笑する太智、マルコはその胸に刻まれた蒼い鳥に触れた。
「っ…」
「わ、悪い」
痛がる太智にマルコは慌てて手を引っ込めようとしたが、太智がその手を掴んで自分の胸に押し付けた。
「これはお前をイメージした。不死鳥であるマルコを」
優しく微笑む太智に見つめられ、マルコはその気持ちをやっと信じた。
泣きそうになるマルコの頬を撫でると、額に唇を落とした。
「これから、よろしくな」
その言葉にマルコは力強く頷いた。
(やっと引っ付いたぜ)
(世話のやける奴らだ)
(グララララ!)
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