参ったピヨった
名前変更
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マルコと再会してから1日。
客人として迎えられた俺はマルコの隣の部屋を与えられた。
そう、隣の部屋。
「……」
お決まりの展開といいますかなんといいますか。
目を覚ましたらマルコがいた。
あっれーと頭を捻る。
別々に寝たはずなのになぁ…
そう思いながらマルコを見てるが起きる気配はまだない。
すやすやと眠るその姿は彼が小さい時を思い出させる。
太智はクッと笑い、マルコを起こさないように起き上がり部屋を出た。
客人と紹介されている事もあり、皆の態度は中々よろしい。
挨拶を交わし、笑い合う。
甲板に行くと皆で掃除をしていた。
「よっ!おはようさん」
「あぁ、おはようサッチ」
肩を組んできた彼に挨拶をして頭を撫でる。
「おい!セットが崩れるだろ!!」
「いいじゃねぇか、年下は基本的に撫でたいんだ」
「年下ってお前…あ、そうか」
肉体と精神は年齢が違う。
彼の本当の年齢は白ひげとそう変わらないのだ。
「おっ!起きてきたのか!!」
「おはようエース」
この船の最年少の彼は俺からしたら孫に当たるのだろうか。
「どうした?」
「いや、なんでもない。掃除してるのか?」
「おう、今日は2番隊が担当だ」
「エース隊長~サボってないで掃除してくださいよ~」
「わかってるって!!」
じゃ、とブラシ片手に駆けてくエースを見送り、空を見上げた。
「なぁサッチ」
「ん?」
「次の島にはいつ着くんだ?」
「次は……確か結構かかるぞ」
「ん、わかった」
太智は笑った。
「なんでんな事聞くんだよ」
「次の島で降りるからね」
「……は?」
サッチは目を丸くする。
「この船にいたらいいじゃねぇかよ」
「船員でもないのに長々といたらおかしいじゃないか」
肩を竦める太智を見たらきっとマルコは大慌てするだろう。
昨日みたいに必死に太智に抱き付いてそのうち泣き落としを始めるんじゃないか。
サッチが黙り込むと、船内に続く扉が開いてマルコが現れた。
何時も通りの気怠そうな感じだが付き合いの長い者や深い者はどこかソワソワしてる事に気付くだろう。
「サッチ君」
「君ってなんだよ、気持ち悪いなぁ」
「さっきの話は秘密だからな?」
いいな?と優しい目に見つめられれば嫌だとは言えない。
マルコに挨拶をして歩いていく太智の後ろ姿を見つめ、ため息を吐いた。
「ありゃ…敵わねぇかもな」
年上の余裕のある優しい瞳。
オヤジと似たその瞳を思い出し、もう1つ溜め息を吐いた。
「はよ、ヒヨコちゃん」
「おはよう、それよりヒヨコちゃんはやめてくれ…もうそんな歳じゃねえよい」
恥ずかしそうに顔を背けたマルコに笑う。
「悪い、ついな。マルコは可愛い子供だから」
「子供…」
繰り返し呟いたマルコを不思議そうに見ていると、イゾウが現れた。
「よう太智」
「ああイゾウか、おはよう」
「頼みがあるんだけど…いいか?」
「頼み?」
頷いたイゾウは悪い顔だった。
その顔を見たマルコは眉間に皺を寄せた。
「何考えてやがる」
「なあに、マルコの幼少期の話が聞きたいだけさ」
ニヤリと笑ったイゾウに対しマルコの口元は引き攣った。
「お!!それいいじゃねぇか!!」
「おれも聞きたいな」
「おれもおれも!」
ワラワラとどこからか集まって来た奴等にマルコは目をキッと吊り上げた。
「お前ら!!」
「まぁまぁ、いいじゃん」
「おれが嫌なんだよ!」
バカヤロウ!!と言って船内にマルコは戻って行った。
「あーあ、怒っちまった」
「ほっといたら機嫌治るでしょ」
「そうだな」
イゾウやビスタ、ハルタは呑気に言った。
太智は苦笑するとサッチを見た。
「なぁ、ココアある?」
「ん?あるけど…飲むのか?」
「ん~とりあえず淹れさせてくれ」
「話は聞かせてくれないのか?」
見上げてくるハルタの頭を撫でる。
「そうだな…1つだけ聞かせてやる」
「なんだ?」
「小さなヒヨコだったマルコは俺に何か聞くとき、ハルタみたいに見上げてくるんだ。真ん丸な目で。それがもー可愛くってさあ!!!」
急にテンションが上がった太智に驚く。
「か、可愛い?」
「どっちかと言うとふてぶてしいガキだったんじゃ…」
「あんまり話したら嫌われるから、終わり」
サッチに行こうと声をかけて2人も船内に消えた。
「マルコが嫌うなんて無さそうだけどな」
「うん」
ビスタの言葉にハルタは頷いた。
「はぁ~」
つい怒鳴ってしまった。
挙げ句にバカヤロウだなんて…
ベッドの上にちょこんと膝を抱えてマルコは座っていた。
膝の間に頭を埋めると、扉がノックされた。
「入るよ」
聞こえてきた声にビクリとする。
ギッと床を鳴らしながら彼は近づいてくる。
「マルコ」
名前を呼ばれて顔を上げると、太智が笑っていた。
「ほら」
渡されたマグカップにはココアが入っていた。
「サッチにマルコはコーヒーしか飲まないって言われたけど、ココア淹れちまった」
そう言って靴を脱いでベッドに上がる。
上がって来た太智をチラリと見る。
「どうした?」
「怒って…ないのか?」
「俺が?怒るのはマルコの方だろ?」
嫌な事された方が怒るのは当たり前。
笑ってコーヒーを飲んだ太智に胸がキュッとした。
昔から変わらない優しいその性格に涙が出そうになる。
「マルコ、おいで」
ぽんぽんと自分の足の間を叩きマルコを呼ぶ。
素直に近寄ってくるマルコは変わらない。
たった1年だが思いっきり甘えさせて、育て、暮らしてきたのだ。
太智はフと微笑んで頭を撫でた。
「別に何にも言ってないから、安心してくれ」
「わかってるよい。太智はおれの嫌な事はしない」
「おう、しないぜ?」
その言葉と同じにギュッと抱き締められる。
昔は大きく感じた体も今は大きいと思わない。
(やっと追い付けた)
嬉しくなって体を委ねた。
受け止めてくれると同じにクスリと笑ったのを感じた。
恥ずかしくなって頬に熱が集まる。
昔はこんな事当たり前だったのに。
どんどん早くなる鼓動にマルコは焦る。
(なんだよ、これ)
バッと太智から体を離すと、ジッと彼を見て口をパクパクさせた。
「どうした?」
「お、オヤジに呼ばれてるの忘れてたよい!!」
ベッドから降りて駆けていくマルコを太智は笑いながら見ていた。
「はっ、はっ…」
全速力で船内を駆け抜け、船尾まで来た。
(さっきのはいったい…)
まだ体に残る太智の温もりに頬がまた熱くなる。
座り込んで呼吸を整えていると、後ろから足音がした。
「よっ、マルコ」
声をかけて来たのはサッチだった。
「機嫌は治ったか?」
「……お前が来て最悪だ」
「なんでだよ!!」
ニヤニヤ笑いながら近づいて来ていたサッチを睨む。
「太智だったら良かったか?」
「な、何言ってやがる!!」
普段は動揺しないマルコが挙動不審になりサッチはおや?っと首を傾ける。
太智は親だと繰り返すマルコにサッチはニィと笑った。
(もしや…親から恋愛対象に変わったな?)
あれだけ会いたいと請い願っていたのだ。
いつしか恋愛に変わる事もある。
寧ろ今まで親に対する親愛のつもりでいた方がサッチには不思議だった。
どっからどう見ても恋するおっさんだったのだから。
それが太智に会って爆発したようだ。
「マルコ」
「…なんだよ」
「俺は応援すっからな!!!」
「はぁ?急になんだよ」
怪訝そうに見てくるマルコに対し、サッチは1人で納得したように頷いていた。
(さてさて、これからどうなるか)
END 変わる想い