参ったピヨった
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
青雉に拾われて1年経った。
今ではクザンと名前呼びも許された仲だ。
この1年間、みっちり知識を詰め込まれねっちょり鍛えられた。
そしてクザンに拾われた男として俺は海軍から注目を浴びていた。
一番はこの前准尉を倒してしまった事だ。
海軍大将であるクザンに鍛えられそこから派生してサカズキさんやボルサリーノさん、ガープさんやさらにはなんとトップのセンゴクさんにも鍛えられたのだ。
ヒナさんやスモーカーさん、おつるさんにも鍛えられた。
強くならない訳がない(と俺は思ってる)
海軍でもない只の人間が海軍本部に住み上の人に可愛がられ准尉の人を倒したのだ。
注目を浴びない訳がない。
「そろそろ、なのかな」
昔に比べて強くなった。
知識もついた。
人も…傷付けた。
「ここにいたのか」
突然声をかけられ振り返る。
「クザン…仕事は?」
「休憩」
「またかよ」
フッと笑うと、クザンは頬を掻いた。
「またってなによまたって」
「何時もサボってないか?」
「そんなことない。おれだってちゃんと仕事してる」
「たまにじゃねーかよ」
そう言って互いに笑ったがフとクザンの表情が真剣なモノに変わった。
「今最も‘ひとつなぎの大秘宝’に近い男はだーれだ」
「突然なんだよ。白ひげだろ?」
「その船が結構近くに来てるみたいでさ~」
クザンは太智をジッ見る。
「一度見ておくといい」
「え?1人で?」
「あ~おれも行く」
頭をポリポリと掻きながら彼は言った。
クザンの青チャリに乗せられて見に来た白ひげ海賊団。
船首が鯨のモビー・ディック号。
「すげぇ…」
思わず感嘆の言葉が溢れた。
「あらら、気付かれた」
「え?わっ!?」
どこからか取り出した帽子を深々と被せられる。
外すなと言われたのと第三者の声が聞こえたのは同時だった。
「一体なにしに来たんだよい」
敵意の籠った男の声がした。
「ちょっと遊びに来ただけじゃないか」
「遊びに…?ふざけてんのか?っておい!止まりやがれ!」
進むのをやめないクザンに男が怒る。
少し気になってチラッと見上げたら蒼い炎が目に入った。
不思議に思って見ていると、突然の浮遊感が襲った。
「なっ!?」
太智を抱えたクザンが船に飛び乗っていたのだ。
着地した感覚と共に感じたのは明らかな敵意と向けられてるであろう武器の気配。
「イッテェ…なにしに来やがった」
低い声が聞こえ、下ろされる。
「別に戦いに来たわけじゃないからさ~そんなに睨まないでくれない?」
「だから、何しに来たのか聞いてるんだよ!」
明らかな威嚇を含んだ声色に溜め息を吐いた。
「ほんとに、俺達何しに来たんだよ…」
「え?だから見に行こうって言ったじゃない」
「俺が聞きたいのは、何で見に行こうってなったのかだよバカ!」
怒って帽子を取り、クザンを睨む。
「お前…」
「あ?」
指を差され振り返る。
白ひげ海賊団が息を飲んだのが解った。
「オメェ…名前はなんだ」
「…俺?」
「そう、お前!!」
手配書で見たことある白ひげ海賊団の船長に問われ、頭を傾けるとリーゼントの男に肩を掴まれた。
「山本太智」
「ほんとに太智なんだな!!?」
「そうだけど…」
え、俺達知り合いじゃないよね?
訳が解らなくて彼をジッと見ていると、蒼い鳥が飛んできた。
(マル…コ?)
いや、解らない。
彼とは限らない。
この世界にいるのかも解らないのだから。
だけど視線が外せなくてジッと見つめているとソレは男に変わった。
「オヤジ、お前ら、一体何してんだよい。今青雉が「マルコ!!あれ!!」
「あ?」
(マルコ…?)
黒髪の青年が彼をマルコと呼び、マルコと呼ばれた彼は指差された俺を見た。
「………………」
俺を見た瞬間、彼は固まった。
キッと睨みつけられ、殺意を向けられたが、急にシュンと項垂れた。
「ぐほっ!!」
かと思えば突然タックルをかまされた。
「お前、なに「太智!!だよな?」
船縁に背中を打ち付けながら睨み付けると潤んだ目と視線が合う。
「おれだよ!マルコだよ!」
そう言った男の頬を両手で包み込む。
精悍な顔付きに見覚えはない。
だけど、彼が俺の知るマルコなら、面影がない訳でもない…気がする。
固まる太智にマルコは不安になる。
(おれはあの時から随分と成長したから、解らないのかもしれない)
落ち込みかけたとき「ヒヨコちゃん…?」と柔らかい声が聞こえた。
「そう!」
「…え、待って成長し過ぎじゃない」
「もう何十年も経ってるよい!おれもおっさんになる歳だ…」
「そうか…そうだよな」
笑った太智に優しく包まれる。
「マルコ…また会えて良かった」
「……っ」
泣きそうになり、彼の服をギュッと掴んだ。
「ねぇ太智ちゃん、周り見てね?」
クザンの声にハッとして周りを見た。
「あ~マルコ、一旦離れようか」
「…よい」
恥ずかしそうに離れたマルコと2人立ち上がる。
「もしかして太智の探したい人って…」
「うん、マルコ」
クザンを見上げ、頷く。
「あららららら……マジかよ」
クザンは頭を抱えた。
「なんでそんなに落ち込んでんの?」
「だってねぇ…まさか探し人が白ひげ海賊団の人間だなんて…」
はぁ~と溜め息を吐いたクザンに苦笑した。
「俺も知らなかったんだよ」
「連れてこなきゃ良かった…」
「探し人が見つかったんだから喜んでくれよ。それにそろそろ出ていこうと思ってたし」
「え?マジ?」
その言葉にクザンが目を見開いた。
「駄目駄目駄目」
「え、なんで」
「おれが寂しいから」
「………今までお世話になりました」
「ちょっと!!」
慌ててクザンは太智の肩を掴んだ。
「ほんとに言ってるの?」
「あぁ」
「殺されるかもしれないよ?」
「一度死んでんだ、悔いはない」
ジッと彼を見詰める。
「俺はこの世界に来て、あんたに拾ってもらって感謝してる。けど、何れいるかも解らないアイツを捜しに行くつもりだったんだ。それが目の前にいるんだ」
太智はクザンに手を出した。
「今まで良くしてくれてありがとう」
「…………はぁ~も~寂しくなるな」
そう言って手を握ってくれた。
「なにかあったらすぐに戻って来るんだよ!!」
「解った」
「他の連中には…上手く言っとくよ。あ~ガープさんが怖いなぁ…」
そう言って背を向けたクザンに頭を下げた。
(今までありがとうございました)
そういった意味を込めて。
「太智」
振り返るとマルコが眉を八の字にしてこっちを見ていた。
「ところで何でこっちの世界に、今まで海軍に居たってなんだよい。それに一度死んだって…」
「あ~その話をしないといけないんだよなぁ…」
「おれもその話、聞かせてもらおうか」
白ひげ海賊団船長、エドワード・ニューゲートは笑った。
「勿論、貴方には話すつもりです」
太智は彼を真っ直ぐに見返した。
あの後船内に移動し、隊長と呼ばれる人達と船長の前で俺は話した。
マルコが帰ってから今日出会うまでの事を。
「……信じがてぇ話だな」
「でしょうね」
「だが、おれぁ信じる」
「え?」
ニィと白ひげは笑った。
「おれの息子がお前を信じてんだ。親のおれが信じなくてどうすんだ」
グラララと笑った彼をきょとんと見る。
「マルコのお父さん?」
「この船の奴等は全員息子だ」
(ちょー子沢山)
呆気にとられていると、隣に来たマルコがコソッと血の繋がりはないことを教えてくれた。
しかし、血の繋がりもないのにここまで絆を深めれるのは凄い事だ。
(いい海賊団だな)
太智は微笑み、白ひげを見た。
「白ひげさん」
「なんだ?」
「マルコの事頼みます」
子供を送り出す親の様に、優しく笑った。
「頼むって…あんたどっか行くのかよ」
黒髪の青年、エースが不思議そうに聞いてくる。
「行く宛の無い旅もいいかなってお「ヤダよい!!」
至近距離のタックルを受けて倒れ込んだ。
ぎゅうぎゅうと力一杯抱き付いてくるマルコに内蔵が出そうになる。
「ちょ、苦しいぞヒヨコちゃん」
「わ、悪い」
謝ったものの、彼は離れない。
「あんなマルコ初めてだ…」
「あぁ…」
じーっと見てくる面々に苦笑する。
「ヒヨコちゃん、皆見てるぞ」
「…よい」
「なぁなぁ、そのヒヨコちゃんってなんなんだ?」
興味津々に聞いてくるリーゼントの男、サッチを見る。
「マルコが小さい時にそう呼んでたんだ」
「小さい時にねぇ…今はおっさんじゃないか」
和服を着た男、イゾウはそう言った。
「俺の肉体はマルコやあんた達と同じくらいの年齢だろうけど、精神だけで言ったら白ひげさんと似たり寄ったりじゃないかな」
「え…」
固まった紳士そうな男、ビスタを見る。
「俺は一度死んでコッチに来てるって言っただろ?」
「なるほどね…」
他の人と話す間もマルコは離れない。
「あ~ちょっと2人で話していいですか?」
「あぁ」
白ひげに頭を下げ、マルコを見た。
「部屋に案内してくれないか?」
「よい」
スクッと立ち上がった彼に手を引かれ、その場を離れた。
マルコに連れられて彼の部屋に入る。
比較的殺風景な部屋だが机の上には紙、本棚には大量の本が目立つ。
「椅子1つしかないからベッドに座ってくれ」
「ん」
マルコに言われてベッドに座る。
マルコは椅子を引き寄せて太智の前に座った。
「今まで元気にしてたか?」
「ああ、太智の世界から帰って来たときオヤジに保護されていて今に至る。太智は?」
「俺は家族に囲まれて、平和に暮らして、平和に死んださ」
「家族…」
微笑んだ太智とは反対にマルコは眉間に皺を寄せる。
「家族って言っても、親戚連中だけどな。そうゆう話がなかった訳じゃないけど結婚はしなかったんだよな~」
ハーと溜め息を吐いた太智にマルコは目を丸くする。
「何でだよ」
「ん~俺の家族はマルコだから。マルコ以外と家族するのに違和感を感じたんだよ」
変だろ?と笑う太智にきょとんとした後、マルコの顔はみるみる赤くなった。
「そそそそ、それって!!」
「ん?」
「いや、なんでも…ない」
きょろきょろと忙しなく視線を動かすマルコを不思議そうに見る。
「マルコ」
「よい!?」
「大好きなお前が元気そうで良かった」
フワッと見せた笑みは昔と変わらなくて、思わず泣きそうになった。
(大好きな笑顔、大好きな貴方)
(可愛い子供のヒヨコちゃん)
END 再会