参ったピヨった
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ドスン―
大きめの物音でパチリと目覚めた。
会社員である自分にとって至福の日曜日。
毎日昼過ぎまで寝るのが好きだ。
今は何時だと時計を見ると午前7時。
いつもより遅め、休日にしては早めの時間に響いた物が落ちる音。
気のせいか、声まで聞こえた気もする。
(気のせい気のせい)
そう思ってみたものの、リビングでは何かごそごそと音がする。
泥棒か何かか。
面倒くさいと訴える頭を振り、手近にあった鞄(5kg)を持った。
もし泥棒なら撃退様に。
寝室とリビングは薄水色のカーテンでしか仕切ってないのでそれを捲ればリビングの様子が分かる。
(………ヒヨコがいる)
ピョコピョコとソファーから金の何かが見えている。
するとそれはひょっこり顔を出した。
「………」
「………」
ソレは小さな子供だった。
髪はどうなってるのかよく解らないが綺麗な金、頬は子供特有の丸みを帯びている可愛らしい少年。
(俺…遂に人拐いでもしたのか?)
んーと唸りながらとりあえず鞄を置く。
俺が動いた事に驚いたのか、少年はビクッと体を揺らした。
「えっと…俺の名前は太智。山本太智」
「………」
「君の名前は?」
ジッと見てくる少年の瞳には怯えが含まれており、とりあえず名乗ってみた。
しかし返事は無く、彼はこちらをジッと見つめるだけだ。
下手に動けば彼を余計怖がらすかもしれない。
「とりあえず、座るな?」
そう言って床に座り彼をジッと見る。
金の髪や日本人離れしたその顔立ちから外人の子供なのだろう。
(もしかしたらこっちの言葉が解らないのか?)
そして先程の物音。
それは彼がこの部屋に現れたからだろう。
そして、ここはどこだろうとキョロキョロ視線を動かす辺り、彼は誰かに連れて来られた可能性が高い。
んーと考えるが何も思い付かない。
とりあえず、腹が減っては戦は出来ぬ。
「なあ、ヒヨコちゃん」
「………?」
「あぁ、君の事」
怪訝そうな表情をするが、如何せんこっちは彼の名前が分からないのであまり気にしない。
「俺さ腹減ったから飯作りたいの。で、今からそっちに移動するから」
キッチンを指差し、太智は笑う。
何も反応しない少年に苦笑した時、彼はゆっくり頷いた。
「!?俺の言ってる事…わかる?」
その問いにも少年は頷いた。
言葉が通じるだけマシだと思い笑いながら立ち上がる。
(言葉が通じるのは助かるな)
そう思いながら冷蔵庫から適当に材料を出す。
一応自炊は出来るが基本は面倒くさがり。
(目玉焼きにトーストでいいか)
フライパンを取り出し卵を焼きはじめる。
蓋をしてトースターにパンを入れると食器棚から皿とマグカップを取り出す。
ウォータードリップで抽出していたコーヒーをマグカップに淹れ、白い皿にレタスとハムに以前作っていたポテトサラダを乗せる。
出来上がった目玉焼きを皿に乗せ、焼き上がったパンにバターを塗れば一先ず完成。
出来上がった朝食‘2人分‘とコーヒーとココアの入ったマグカップを持ち、少年がいるソファーの前にあるテーブルにそれらを置く。
「ヒヨコちゃん、お腹空いてない?」
「………」
キラキラとした目が朝食に注がれるがそれ以外彼は何も反応しない。
途端、ぐ~っと少年のお腹が鳴り、頬が赤く染まった。
「体に悪いものは入ってないぜ?」
一通り口に含み少年を見る。
しかし、返ってきたのはそれがどうした、と言いたげな視線。
「それ、ヒヨコちゃんの分だぜ?」
「!?」
驚いた少年は朝食と太智を交互に見た。
そしてゆっくり、会ってから初めて声を出した。
「食べて…いいの?」
「!?……勿論」
笑ってやると彼は皿の横にあったフォークを握った。
「熱いから、ちゃんと冷ませよ」
コクコク頷いた少年はちゃんと冷ましながら朝食を食べ始めた。
うん、一歩前進。
朝食を食べ終え、コーヒーを飲みながら少年を見る。
彼はえらくココアを気に入ったようで嬉しそうに飲んでいる。
「なぁ、ヒヨコちゃん」
「?」
こてんと首を傾けた少年を怖がらせない様に笑う。
「そろそろ名前聞いてもいいか?」
太智の言葉に少年は視線を泳がした後、ジッと太智を見た。
「ま…る」
「まる?」
「マルコ、だよい」
少し笑った少年マルコに見えない様に笑った。
(さて、これからどうしよう)
END ヒヨコちゃん
1/15ページ