二人目のニンゲンの物語
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金色の花畑。地上からの光が射すその場所にいた子を見かけて、フリスクは思わず声を上げた。
「アズリエル!」
「………… フリスク。 ボクの事は心配しないで」
「――、心配しちゃいけないの?」
「誰かが花畑の世話をしなきゃいけないもん」
そういうアズリエルの顔は穏やかに微笑んでいたが。しかしその瞳に映るケツイの色に、フリスクは唇を噛んだ。
少しでも長く、彼と一緒にいたくて色んな話をした。
イビト山の事。一人目のニンゲンの事。 そしてアズリエルの事。
話題が尽きたフリスクは、少し悩んだ後、アズリエルに一つの質問をした。
「他のニンゲンの話を聞いていい?」
「……そんなの聞いて楽しいの?」
こくり。
頷くフリスクを見て、アズリエルは少し考える。
――あの子の事は話してもいいのかもしれない。
その考えが脳裏を過ぎった後、アズリエルは如雨露を地面に置き、その場に座った。
「そうだね……少し長くなるから座ろうか」
「うん!」
喜んで座るフリスクに思わず笑みが零れる。見るからに話を待ちわびるように揺れるその姿はとてもじゃないが、沢山の魂を取り込んで自分と戦った姿とは別人だ。
「これはみんなが知らない、遺跡のモンスターですら忘れてしまった物語。ボクだけが知っている物語。地下世界に落ちてしまった二人目のニンゲンの物語だ」
そうしてアズリエルの口から語られる物語に、 フリスクはじっと耳を傾けた。
◇◇◇
その子供も、自分の親友やフリスクと同じようにイビト山からこの世界にやってきたらしい。
名前は…………確か、オパールって言ってたっけ。
その子は家族で山に登ったらしい。好きなリボンをつけてもらって妹が離さなかった切る事の出来ない玩具のナイフを預かって――妹を守って地下世界へとやってきたらしい。
「キミはその時も私と同じように挨拶したの?」
「したよ」
挨拶――仲良しカプセルの件は言った。もちろんフラウィの時だ。それに怯えきった彼女は遺跡の中を走り回り、モンスターに怯えては逃げた。
モンスターもはじめは友好的に接しようと思った。何せ、相対した時、瞳は恐怖の色に染まっていたのだから。
モンスターはまず遠くから声を掛けて安心させようとした。それでも、彼女は逃げ回って逃げ回って――モンスターが彼女に近付けたのは、彼女が動けなくなってからだ。
近づいたモンスターが揃って首を横に振る。何もかも遅すぎた。彼女は飲まず食わずで何日も動き回って、その身体はかなり衰弱していた。
「――君はそれでいいのかい?」
モンスターが過ぎ去った後、フラウィはオパールに近付いた。
窪んだ瞳、削げ落ちたような頬、乾いた唇。腕や足は痩せ細り、皮膚は乾いて粉が吹いている。それでも、彼女の水色の瞳はフラウィを見た瞬間、光が宿る。
「……こ……、で」
「ボクがこわいかい?」
瞼がゆっくり落ちて、再び緩慢な動きで開く。もう動く事も辛い様だ。
「最期の言葉位は聞いてあげるよ。何か言いたい事はある?」
「――キミ······、だ、……れ?」
「ボク? この間も言ったじゃないか。 ボクは――」
「は、······じゃ······、ヤ……の……」
フラウィは口を閉ざした。
今際の縁にいるこの子供は花のフラウィを通して、誰を見ている?
ヤギという言葉を何とか聞き取れたフラウィは、しばらく考え、口を開いた。
「……アズリエル。オレの名前はアズリエル・ドリーマー」
「そ、 ......か」
そこでオパールは、口を閉じる。そのまま験が閉じて終わりかと思えば、彼女はにこりと笑ってたどたどしく唇を動かした。
「――、――――――」
それが二人目のニンゲン、オパールの人生だった。
「きっと、いつか……夢と希望は世界を救う――それが、オパールの最期の言葉だった。今になって思うよ。オパールはいつか、フリスクのようなニンゲンが来るのを知っていたのかもしれない」
そこで、アズリエルは一息つく。フリスクから言われるであろう質問を予測して先に答えを言う。
「二人目のニンゲンが来たことをトリエルは知らなかった。トリエルがオパールを見付けたのは、彼女が死んだ後。彼女はそれを悲しんだ。それからだよ。トリエルが毎日遺跡内を巡回しはじめたのは」
フリスクはその話を聞き終えた後、立ち上がる。
「行くのかい?」
「うん。……君は行かないの?」
「言ったでしょ。花の世話をしなきゃいけないって。……やる事、出来たんでしょ?」
アズリエルの言葉に頷く。 フリスクの瞳にはケツイが漲っていた。
◇◇◇
地上に出たフリスクはアズゴアの提案の元、モンスターとニンゲンの架け橋となり、様々な所へ顔を出していた。
忙しなく動く毎日に目が回りそうになりながらも、フリスクは目の前の事に精一杯対応していく。
そんな中、フリスクの元に一組の来客が現れた。
孫に車椅子を押され、現れたその老人は、フリスクを見るなり、唇を噛む。
「……私の姉も、イビト山から落ちたの」
「――! その人の名前は……?」
フリスクの質問に、老婆は小さな声でオパール、と呟いた。
瞠目する。それは、アズリエルから聞いた二人目のニンゲンの話だ。
フリスクは一旦離席して自室に戻る。
――これは、彼女に返すべきだ。
箱をひっくり返して見付けたそれを手に老婆達の元へ戻る。そして、手に持ったそれを彼女に差し出した。
「これ、」
「地下世界で見つけたものです」
「……ねぇ、さん」
玩具のナイフと色褪せたリボンを受け取った老婆はゆっくりと指でなぞる。
……違ったらどうしよう。
そんな心配は無用だった。 老婆の瞳が揺らいだのを見た瞬間、渡して良かったと心の底から安堵する。
「――オパール達は私を助けてくれました」
「……そうなんですね」
会話が途絶える。 綯い交ぜになった表情でリボンと玩具を見つめる老婆をフリスクはただ見つめる。 沈黙の帳が永遠に続くと思われたその時、椅子を押していた女性が口を開いた。
「――お話、聞かせてもらえませんか。知ってる範囲の事でいいんです」
フリスクも老婆も驚いて女性を見る。女性は笑顔で老婆を覗き込む。
「いいよね?」
「――ええ。 姉さんの話聞きたいわ」
「……聞いて、後悔するかもしれませんよ」
「知らない方が後悔するわ」
老婆の表情は揺れていなかった。水色の澄んだ瞳の中に、確かなケツイをフリスクは読み取った。
アズリエルから聞いた事、自分が体験した話をする為に、フリスクはそっと老婆の手を取って語り出した。
「――これは、沢山のニンゲンが紡いだ夢と希望が世界を救った話です」
話は物語となり、紡がれ続かれる。だから、当事者の私はこの話を語り継がねばならない。
この物語はそう、名付けるのであればアンダーテイル。地下世界の、夢と希望の物語だ。
230719 投稿
□■□
作者さんからの補足
・夢主のデフォルト名(=オパール)の石言葉に忍耐という言葉がある。
・オパールにはいろんな色があって、青色のオパールはコモンオパールっていう分類で、パステルブルーからスカイブルーまで色の幅があるそうです。
補足その2
・水色のタマシイの特性→忍耐 ですが、オパールは「誰かほかの人間が助けてくれる」と信じて、逃げの一択で助けを忍耐強く待って、衰弱した流れ。忍耐の精神が悪い方向に進んだ結果です。
・ほかの人間にそういう作用があるかは分かりませんが、死に際にいたオパールはタマシイの本質? というか、その精神体? のような物が見えてました。なので、死に際のオパールはフラフィがアズリエルに見えていました。
・オパール、じつは不思議な力が使えます。公式はわかりませんが、彼女の年齢、じつは設定があって、6歳でした。
オパールは未来の事が断片的に分かるので、希望を持って彼岸へと旅立ちました。オパールの最期の言葉がそれですね。そこまで力は強くなく、本人も無自覚のため、自分の死については見ていなかったようです。ちなみに妹さんにはその力はありません。
・ちなみに彼女の遺体は、ホームの手前にある木の下にあります。
トリエルが毎日通るルートに遺体を埋め、目印としてでっかい木がそこにある事によって、トリエル自身ケツイを漲らせてたらいいな、と思っています。
・初期プロットだと、6人の色のタマシイの人生をアズリエルが語るお話でした。ただ、それを実行すると、短編で終わらない事に気づいたので、遺跡から出たことのない2人目の人間だけをピックアップして書きました。
・最後、フリスクが箱をひっくり返して装備品を見つけましたが、他の子の装備品もそこに入ってます。きっと、妹さんに話したら、ほかの人間の遺族にも装備品返しに行くのかな…… ほんと蛇足の話です。
・アズリエルと一緒に地上に行った√では、彼が語り手となって、フリスクと一緒に装備品を返す旅もしていたかもしれませんね。
「アズリエル!」
「………… フリスク。 ボクの事は心配しないで」
「――、心配しちゃいけないの?」
「誰かが花畑の世話をしなきゃいけないもん」
そういうアズリエルの顔は穏やかに微笑んでいたが。しかしその瞳に映るケツイの色に、フリスクは唇を噛んだ。
少しでも長く、彼と一緒にいたくて色んな話をした。
イビト山の事。一人目のニンゲンの事。 そしてアズリエルの事。
話題が尽きたフリスクは、少し悩んだ後、アズリエルに一つの質問をした。
「他のニンゲンの話を聞いていい?」
「……そんなの聞いて楽しいの?」
こくり。
頷くフリスクを見て、アズリエルは少し考える。
――あの子の事は話してもいいのかもしれない。
その考えが脳裏を過ぎった後、アズリエルは如雨露を地面に置き、その場に座った。
「そうだね……少し長くなるから座ろうか」
「うん!」
喜んで座るフリスクに思わず笑みが零れる。見るからに話を待ちわびるように揺れるその姿はとてもじゃないが、沢山の魂を取り込んで自分と戦った姿とは別人だ。
「これはみんなが知らない、遺跡のモンスターですら忘れてしまった物語。ボクだけが知っている物語。地下世界に落ちてしまった二人目のニンゲンの物語だ」
そうしてアズリエルの口から語られる物語に、 フリスクはじっと耳を傾けた。
◇◇◇
その子供も、自分の親友やフリスクと同じようにイビト山からこの世界にやってきたらしい。
名前は…………確か、オパールって言ってたっけ。
その子は家族で山に登ったらしい。好きなリボンをつけてもらって妹が離さなかった切る事の出来ない玩具のナイフを預かって――妹を守って地下世界へとやってきたらしい。
「キミはその時も私と同じように挨拶したの?」
「したよ」
挨拶――仲良しカプセルの件は言った。もちろんフラウィの時だ。それに怯えきった彼女は遺跡の中を走り回り、モンスターに怯えては逃げた。
モンスターもはじめは友好的に接しようと思った。何せ、相対した時、瞳は恐怖の色に染まっていたのだから。
モンスターはまず遠くから声を掛けて安心させようとした。それでも、彼女は逃げ回って逃げ回って――モンスターが彼女に近付けたのは、彼女が動けなくなってからだ。
近づいたモンスターが揃って首を横に振る。何もかも遅すぎた。彼女は飲まず食わずで何日も動き回って、その身体はかなり衰弱していた。
「――君はそれでいいのかい?」
モンスターが過ぎ去った後、フラウィはオパールに近付いた。
窪んだ瞳、削げ落ちたような頬、乾いた唇。腕や足は痩せ細り、皮膚は乾いて粉が吹いている。それでも、彼女の水色の瞳はフラウィを見た瞬間、光が宿る。
「……こ……、で」
「ボクがこわいかい?」
瞼がゆっくり落ちて、再び緩慢な動きで開く。もう動く事も辛い様だ。
「最期の言葉位は聞いてあげるよ。何か言いたい事はある?」
「――キミ······、だ、……れ?」
「ボク? この間も言ったじゃないか。 ボクは――」
「は、······じゃ······、ヤ……の……」
フラウィは口を閉ざした。
今際の縁にいるこの子供は花のフラウィを通して、誰を見ている?
ヤギという言葉を何とか聞き取れたフラウィは、しばらく考え、口を開いた。
「……アズリエル。オレの名前はアズリエル・ドリーマー」
「そ、 ......か」
そこでオパールは、口を閉じる。そのまま験が閉じて終わりかと思えば、彼女はにこりと笑ってたどたどしく唇を動かした。
「――、――――――」
それが二人目のニンゲン、オパールの人生だった。
「きっと、いつか……夢と希望は世界を救う――それが、オパールの最期の言葉だった。今になって思うよ。オパールはいつか、フリスクのようなニンゲンが来るのを知っていたのかもしれない」
そこで、アズリエルは一息つく。フリスクから言われるであろう質問を予測して先に答えを言う。
「二人目のニンゲンが来たことをトリエルは知らなかった。トリエルがオパールを見付けたのは、彼女が死んだ後。彼女はそれを悲しんだ。それからだよ。トリエルが毎日遺跡内を巡回しはじめたのは」
フリスクはその話を聞き終えた後、立ち上がる。
「行くのかい?」
「うん。……君は行かないの?」
「言ったでしょ。花の世話をしなきゃいけないって。……やる事、出来たんでしょ?」
アズリエルの言葉に頷く。 フリスクの瞳にはケツイが漲っていた。
◇◇◇
地上に出たフリスクはアズゴアの提案の元、モンスターとニンゲンの架け橋となり、様々な所へ顔を出していた。
忙しなく動く毎日に目が回りそうになりながらも、フリスクは目の前の事に精一杯対応していく。
そんな中、フリスクの元に一組の来客が現れた。
孫に車椅子を押され、現れたその老人は、フリスクを見るなり、唇を噛む。
「……私の姉も、イビト山から落ちたの」
「――! その人の名前は……?」
フリスクの質問に、老婆は小さな声でオパール、と呟いた。
瞠目する。それは、アズリエルから聞いた二人目のニンゲンの話だ。
フリスクは一旦離席して自室に戻る。
――これは、彼女に返すべきだ。
箱をひっくり返して見付けたそれを手に老婆達の元へ戻る。そして、手に持ったそれを彼女に差し出した。
「これ、」
「地下世界で見つけたものです」
「……ねぇ、さん」
玩具のナイフと色褪せたリボンを受け取った老婆はゆっくりと指でなぞる。
……違ったらどうしよう。
そんな心配は無用だった。 老婆の瞳が揺らいだのを見た瞬間、渡して良かったと心の底から安堵する。
「――オパール達は私を助けてくれました」
「……そうなんですね」
会話が途絶える。 綯い交ぜになった表情でリボンと玩具を見つめる老婆をフリスクはただ見つめる。 沈黙の帳が永遠に続くと思われたその時、椅子を押していた女性が口を開いた。
「――お話、聞かせてもらえませんか。知ってる範囲の事でいいんです」
フリスクも老婆も驚いて女性を見る。女性は笑顔で老婆を覗き込む。
「いいよね?」
「――ええ。 姉さんの話聞きたいわ」
「……聞いて、後悔するかもしれませんよ」
「知らない方が後悔するわ」
老婆の表情は揺れていなかった。水色の澄んだ瞳の中に、確かなケツイをフリスクは読み取った。
アズリエルから聞いた事、自分が体験した話をする為に、フリスクはそっと老婆の手を取って語り出した。
「――これは、沢山のニンゲンが紡いだ夢と希望が世界を救った話です」
話は物語となり、紡がれ続かれる。だから、当事者の私はこの話を語り継がねばならない。
この物語はそう、名付けるのであればアンダーテイル。地下世界の、夢と希望の物語だ。
230719 投稿
□■□
作者さんからの補足
・夢主のデフォルト名(=オパール)の石言葉に忍耐という言葉がある。
・オパールにはいろんな色があって、青色のオパールはコモンオパールっていう分類で、パステルブルーからスカイブルーまで色の幅があるそうです。
補足その2
・水色のタマシイの特性→忍耐 ですが、オパールは「誰かほかの人間が助けてくれる」と信じて、逃げの一択で助けを忍耐強く待って、衰弱した流れ。忍耐の精神が悪い方向に進んだ結果です。
・ほかの人間にそういう作用があるかは分かりませんが、死に際にいたオパールはタマシイの本質? というか、その精神体? のような物が見えてました。なので、死に際のオパールはフラフィがアズリエルに見えていました。
・オパール、じつは不思議な力が使えます。公式はわかりませんが、彼女の年齢、じつは設定があって、6歳でした。
オパールは未来の事が断片的に分かるので、希望を持って彼岸へと旅立ちました。オパールの最期の言葉がそれですね。そこまで力は強くなく、本人も無自覚のため、自分の死については見ていなかったようです。ちなみに妹さんにはその力はありません。
・ちなみに彼女の遺体は、ホームの手前にある木の下にあります。
トリエルが毎日通るルートに遺体を埋め、目印としてでっかい木がそこにある事によって、トリエル自身ケツイを漲らせてたらいいな、と思っています。
・初期プロットだと、6人の色のタマシイの人生をアズリエルが語るお話でした。ただ、それを実行すると、短編で終わらない事に気づいたので、遺跡から出たことのない2人目の人間だけをピックアップして書きました。
・最後、フリスクが箱をひっくり返して装備品を見つけましたが、他の子の装備品もそこに入ってます。きっと、妹さんに話したら、ほかの人間の遺族にも装備品返しに行くのかな…… ほんと蛇足の話です。
・アズリエルと一緒に地上に行った√では、彼が語り手となって、フリスクと一緒に装備品を返す旅もしていたかもしれませんね。
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