アズリエル
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洗面所には、いままで縁のなかった小さなプラカップが鎮座している。近くには、子ども用の歯ブラシが立てかけられ、見慣れてしまったなあ、と独りごちた。アズリエルの年齢が掴めないから、念のために買った子ども用の甘い香りつきの歯磨き粉チューブもある。時々使ってくれてるみたい。背伸びしたいのか、私が使ってる歯磨き粉を使う頻度のほうが高いようだけど。
ちなみに、アズリエルの話だと、大人用の歯磨き粉はモンスターあめに近い味わいらしい。それって食べてない? 大丈夫?
「ナル? 時間、大丈夫?」
「ん、ああ、大丈夫、まだ間に合うよ」
アズリエルに任せると、コップのふちから零れそうなほど水を汲むから、代わりに私が適度な量まで注ぐのが習慣になって。それなら、いっそのこと歯磨きのタイミングを揃えたほうがいいと気付いてから随分経つ。
「じゃあ、行こっか」
「うん!」
バッグを掴んだ私を真似するように、アズは地域指定の膨らんだゴミ袋を持って、玄関の扉を開ける。いつからか、出勤前のごみ捨ても一緒に行くことになった。彼曰く、こうするともっと長く一緒にいられて『効率的』とのこと。効率的かどうかはともかく、出勤前の癒し時間が長引くのは私にとっても助かる。
収集場所までの距離をゆっくりと踏破して、無防備な頭を一撫で。仕事中にだって堪能したいモフモフを、いまこの場でしっかりチャージする。
「じゃあ、戸締りはお願いね。気をつけて帰るのよ」
朝陽に照らされて、アズリエルの胸元で合鍵がきらりと輝く。白銀の煌めきを持ち上げて、彼は得意げに笑ってみせた。
「ナル、いってらっしゃい!」
見送りは屈託のない笑顔。もう、すっかり虜だった。本当なら抱き締めてあげたいくらいだけど、手を洗ってないから、と遠慮してしまう優しい子だから。
出勤時間だと言うのに周囲に人の姿はない。閑散とした道路に感謝しながら、額に口付けを落とす。
「――うん、いってきます!」
照れ笑いに変わった表情を噛み締めて背を向ける。今日も頑張れそうだ。
ちなみに、アズリエルの話だと、大人用の歯磨き粉はモンスターあめに近い味わいらしい。それって食べてない? 大丈夫?
「ナル? 時間、大丈夫?」
「ん、ああ、大丈夫、まだ間に合うよ」
アズリエルに任せると、コップのふちから零れそうなほど水を汲むから、代わりに私が適度な量まで注ぐのが習慣になって。それなら、いっそのこと歯磨きのタイミングを揃えたほうがいいと気付いてから随分経つ。
「じゃあ、行こっか」
「うん!」
バッグを掴んだ私を真似するように、アズは地域指定の膨らんだゴミ袋を持って、玄関の扉を開ける。いつからか、出勤前のごみ捨ても一緒に行くことになった。彼曰く、こうするともっと長く一緒にいられて『効率的』とのこと。効率的かどうかはともかく、出勤前の癒し時間が長引くのは私にとっても助かる。
収集場所までの距離をゆっくりと踏破して、無防備な頭を一撫で。仕事中にだって堪能したいモフモフを、いまこの場でしっかりチャージする。
「じゃあ、戸締りはお願いね。気をつけて帰るのよ」
朝陽に照らされて、アズリエルの胸元で合鍵がきらりと輝く。白銀の煌めきを持ち上げて、彼は得意げに笑ってみせた。
「ナル、いってらっしゃい!」
見送りは屈託のない笑顔。もう、すっかり虜だった。本当なら抱き締めてあげたいくらいだけど、手を洗ってないから、と遠慮してしまう優しい子だから。
出勤時間だと言うのに周囲に人の姿はない。閑散とした道路に感謝しながら、額に口付けを落とす。
「――うん、いってきます!」
照れ笑いに変わった表情を噛み締めて背を向ける。今日も頑張れそうだ。