1日目
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食事を終えて、片付けも済んだ頃には、アズリエルはすっかり落ち着いていた。胃袋を掴んだのかもしれない。企業様々である。
腹ごなしに天体観測に誘ってみると、彼は大喜び。寒くないように上着を……と思ったけど、サイズが彼に合わない。子ども用の上着がないので、仕方なくブランケットを肩にかけて防寒対策とする。
ベランダに繋がる窓は乾いた音を立てて滑り、室内に外気が混ざる。急激な温度変化に身震いしている私の隣を通り抜け、アズリエルはベランダに出た。彼は素足を晒したまま。部屋に戻るときには足を拭いてあげないといけないな。
「これって、望遠鏡!?」
「うん。それは望遠鏡で合ってる。でもごめんね、私のモノじゃないから使い方わからないんだ」
突っ掛けを履いて後を追うと、どうやらアズリエルは望遠鏡に惹かれたらしい。天体を観測するための機材。地底での生活を思えば、憧れは相当なものなのではないか、と推測が立つ。
「そっかあ、じゃあ触らないほうがいいね」
「……今度、持ち主に使い方を聞いておくよ」
「えっ、いいの? レイが迷惑じゃなかったら……、お願いしていい?」
「もちろん!」
謙虚なアズリエルのお願いに胸を打たれながら、私は友人への連絡を心に決めた。
「それで……今日は皆既月食なんだけど……、見える?」
空を仰げば、遠くに赤い月が見える。だけど、アズリエルは月を見たことがあったかな。昔語りでは夕日のフレーズは聞いたことがあるけど、万が一月を見たことがなかったら、あれがいつもの月だと誤解されちゃうかもしれない。
「遠くに赤く浮かんでるのが月なんだけど……」
「うん、見えるよ」
「いま、が……ちょうど皆既食の時間帯で……月の色、いつもと違うんだ。いまは赤いけど、もうすこし観察していたら、徐々にいつもの色に戻る……はず」
持ち込んだスマートフォンを操作しながら、検索結果を読み上げる。専門的なことはわからずとも、手軽に情報が得られるのが携帯端末の良いところだ。こうして、予期せぬ事態に陥ってもなんとかカバーできる。文明に感謝。
「フフ。それじゃあ、ボクってすごくラッキーなんだね」
「え?」
「いつもと違うおつきさまを最初に見られたから!」
屈託なく笑うアズリエルは、いままでで一番嬉しそうだ。やはり、知らない場所に来て不安もあったのだろう。彼に起きた出来事を一部でも知る立場として、可能な限り彼には幸せでいてもらいたい。
しかし、この場で話すのは無粋だ。しっかり胸に留めておこう。
「ふふ、そうだね」
どうしてアズリエルがこの世界、しかも私の部屋にいたのかはわからないけれど。そう難しく捉える必要はなくて、案外、単純な話なのかも。
楽観的に考えたくなるほど、二人きりの天体観測は楽しかった。
腹ごなしに天体観測に誘ってみると、彼は大喜び。寒くないように上着を……と思ったけど、サイズが彼に合わない。子ども用の上着がないので、仕方なくブランケットを肩にかけて防寒対策とする。
ベランダに繋がる窓は乾いた音を立てて滑り、室内に外気が混ざる。急激な温度変化に身震いしている私の隣を通り抜け、アズリエルはベランダに出た。彼は素足を晒したまま。部屋に戻るときには足を拭いてあげないといけないな。
「これって、望遠鏡!?」
「うん。それは望遠鏡で合ってる。でもごめんね、私のモノじゃないから使い方わからないんだ」
突っ掛けを履いて後を追うと、どうやらアズリエルは望遠鏡に惹かれたらしい。天体を観測するための機材。地底での生活を思えば、憧れは相当なものなのではないか、と推測が立つ。
「そっかあ、じゃあ触らないほうがいいね」
「……今度、持ち主に使い方を聞いておくよ」
「えっ、いいの? レイが迷惑じゃなかったら……、お願いしていい?」
「もちろん!」
謙虚なアズリエルのお願いに胸を打たれながら、私は友人への連絡を心に決めた。
「それで……今日は皆既月食なんだけど……、見える?」
空を仰げば、遠くに赤い月が見える。だけど、アズリエルは月を見たことがあったかな。昔語りでは夕日のフレーズは聞いたことがあるけど、万が一月を見たことがなかったら、あれがいつもの月だと誤解されちゃうかもしれない。
「遠くに赤く浮かんでるのが月なんだけど……」
「うん、見えるよ」
「いま、が……ちょうど皆既食の時間帯で……月の色、いつもと違うんだ。いまは赤いけど、もうすこし観察していたら、徐々にいつもの色に戻る……はず」
持ち込んだスマートフォンを操作しながら、検索結果を読み上げる。専門的なことはわからずとも、手軽に情報が得られるのが携帯端末の良いところだ。こうして、予期せぬ事態に陥ってもなんとかカバーできる。文明に感謝。
「フフ。それじゃあ、ボクってすごくラッキーなんだね」
「え?」
「いつもと違うおつきさまを最初に見られたから!」
屈託なく笑うアズリエルは、いままでで一番嬉しそうだ。やはり、知らない場所に来て不安もあったのだろう。彼に起きた出来事を一部でも知る立場として、可能な限り彼には幸せでいてもらいたい。
しかし、この場で話すのは無粋だ。しっかり胸に留めておこう。
「ふふ、そうだね」
どうしてアズリエルがこの世界、しかも私の部屋にいたのかはわからないけれど。そう難しく捉える必要はなくて、案外、単純な話なのかも。
楽観的に考えたくなるほど、二人きりの天体観測は楽しかった。