森
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この小説の夢小説設定イビト山に登って落ちた成人済女性(ニンゲン)。
ある目的のために地底を冒険することになる。
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その後も、時間を忘れてひたすら青攻撃の特訓に励んでいたら、しびれを切らしたような出で立ちのパピルスがやってきた。
「ちょっと! いつまで遊んでるのッ! 兄ちゃん!」
「あ、パピルスだー」
「あ、パピルスだー、では! ぬぁぁいっ! オレさまがパズルをよういして、このさきでまっているというのに!」
「あ……、ごめん」
「じゃあ、兄ちゃん! かくにんするけど」
「うん?」
つかつかと歩き寄ったパピルスは、なぜかフリスクの前に立った。膝を曲げ、耳打ちするように顔を接近させているので、呼ばれたサンズは不思議そうに相槌を打つ。たしかにサンズに呼びかけたのに、パピルスの眼差しはフリスクに注がれていた。ちぐはぐな行動の意図が読めず、口を挟まずに動向を見守る。
「さっきのニンゲン!」
「えっ」
「へ?」
今度はフリスクと私が反応する番だった。果たして、私たちのどちらを指す言葉だろうか。続く言葉を待つ間に、緊迫感が増す。
「オレ、あいつのこと、しってるっけ?」
「いや……。オイラに聞かれても……」
当然のようにサンズは困惑し、私も不可思議な発言に首を傾げる。少なくとも、私は遺跡から森に出て初めて、スケルトンのモンスターに会った。だから、パピルスの言葉は新手のナンパのようにも聞こえる。たぶん、パピルスにその気はないのだろうけれど。
「自分でわかんないのか?」
「いやいや、いやいや、いや! わかんないわけないでしょ!」
パピルスはお馴染みの大声で強めに否定を重ねる。
「兄ちゃんがわかってるか、かくにんしただけ!」
そして、堂々と宣言した。
「オレは、じぶんがなにをはあくし、なにをはあくしてないか、ちゃんとはあくしてる! ……ということを、はあくしているのだ!」
とてもややこしいことを言われている気がする。
「あれ? なんできさまが兄ちゃんのパーカー着てるの? あれっ、兄ちゃんはニンゲンのコート着てる……」
「あー……、ええと……」
まさか突然パーカーの話題を振られると思わなかったので生返事をしてしまう。しかし、あなたの青攻撃に備えて練習していました、とは言い出せないし、墓穴を掘るわけにもいかない。言葉を探せないまま、無情に時間だけが過ぎていく。
「わかった! いまは取り替えっこが流行ってるんだねッ」
何も言えないままでいると、パピルスは自分で納得する答えを見つけたみたい。神妙な眼差しで首元をのスカーフに手を回している。
「じゃあ、オレさまはこれあげるッ」
「えっ」
「オレさまはこのつぎのエリアでまってるから、まよわずきてねっ!」
「と、取り替えっこは? パピルス? パピルスー!?」
私の手に半ば強引に渡されたのは、彼の真っ赤なスカーフだ。持ち主に返そうとしたけれど、思い切りが良すぎる彼は既に背中さえ見えないほど遠くに姿を消していた。
「もらっても困るよ? さ、サンズ……、これどうすれば!?」
思わずそばにいるサンズに問いかけるけれど、彼の返答はあっさりしていた。
「そのままもらっておけばいいんじゃないか?」
「だって、この寒さだし……」
「スケルトンは寒さを感じないぜ」
「あ……、そう言えば言ってたね。……いや、でも、取り替えっこが出来てないし、そもそも流行ってないよね!? 誤解を訂正しなきゃ」
パピルスは悪いモンスターではないみたいだし、勘違いされたままでいるのは居心地が悪い。そうと決まれば、と一歩を踏み出す頃には、近くにサンズの姿はなかった。
「あれ? サンズは?」
「先に行っちゃったみたい」
「はやいねえ……」
なんだかんだで弟想いなんだろう。微笑ましく思いながら、滑る氷から先へと進む。スノーフルのまちがあるほうを目指して。
そうして辿り着いた先には、雪面に足跡がくっきりと残った、パズルと思しき謎の空間が広がっていた。
「えっと?」
「きたか! いいかくごだ! しかしここはとおさん……」
こころなしか、パピルスはうれしそうに見える。
「わが兄とともに、パズルをしかけてやったッ!」
パズルがお披露目できて相当うれしいのだろう。
「このパズルはなかなか……、ショッキングだ!」
発言と裏腹に、パピルスの眉尻は下がり、楽しそうに笑っている。
「なにしろそのなも……」
「その名も?」
「『とうめいビリビリめいろ』!」
合いの手を入れると、パピルスは歓喜を滲ませた声色で言葉を返す。
「このめいろのかべにふれると……、このオーブから、きょうりょくなでんげきがはっせいするッ! どうだ、すばらしいだろう!」
「えっ、透明で見えない壁なのに、ぶつかったらペナルティがあるの?」
「そのとおりだ、ニンゲン!」
「いきなり難易度が跳ね上がってない?」
きょとん、と目をまあるくしたパピルスは不思議そうだ。実は光の反射や屈折の加減で道がわかるのかな。だとしたら助かるんだけれど。
「それにしても、きさま、よいセンスをしているな! そのスカーフなんて、オレさまごのみだ……!」
「え。だってこれパピルスから……」
取り替えっこと称して一方的に渡されたものだよ。そう告げようとしたけれど、いまのパピルスには声が届いていないみたい。それならば、と、気付かれない程度に身体を動かして、そのパズルの様相を確認する。見る角度を変えても、透明な壁は見えてこない。
迷路の脱出方法に、一方の手を壁について壁沿いに進んでゴールを目指すものがあるけれど。そもそも、肝心の壁に触ったらアウトだなんて、解法潰しもいいところだ。
「……あれっ? 説明、もう一回言ってもらっていい?」
「いいだろうッ!」
今度は声が届いた。パズル関連の質問をすると、喜んでいる様子が伝わってくる。それが微笑ましい。腕を組んで胸を反らせたパピルスは、満更でもない様子で、もう一度同じ説明を聞かせてくれた。
「このめいろのかべにふれると、このオーブから、きょうりょくなでんげきがはっせいするッ!」
「えっと……。ねえ、パピルス。そのオーブを、一旦雪の上に置いてもらっていい? 威力が知りたいんだ」
「フッ……、おじけついたようだな、むりもない……。きさまにとって、これは、あくむのはじまり……。ぞんぶんにおそれるがいい!」
楽しそうなパピルスがオーブを置いたのを確認し、サンズに合図を送る。気の抜けるような返事だったけれど、無事に伝わったらしい。遮蔽物がないように見えるパズルの果てで、サンズが自然な動作で腕を伸ばす。私には見えないけれど、きっといま、壁に触れているのだろう。
その瞬間、空気が震撼した。大気を焼いた電撃は、そのまま雪の一部を焦がして溶かす。威力は十分だと、ここに証明された。
「じゃあ、このめいろにちょうせんする?」
「ええっと……、」
「そのオーブ……、ニンゲンが持たないとイミないんじゃないの?」
「ああ、そっか」
返事に悩んでいると、サンズが助け船を出してくれる。……助け船だよね、たぶん。
言動からもよくわかるけれど、パピルスはパズルを解いてほしそうにしている。元気いっぱいなパピルスの表情が曇るとことは、あまり見たくない。だからって、丸焦げも御免だ。
戦わず、逃げもせず、このパズルを突破する方法を模索して、思考を回転させる。できれば誰も傷付かない方法がいい。そのためなら、嘘だって方便だ。そして閃いた案を実行すべく、迷わず声を張り上げる。納得したパピルスがオーブを拾う前に、彼の動きを止めることが出来た。
「じゃあ、私がそっちに受け取りに行こうか?」
「ステキなこころがけだぞ、ニンゲン! リハーサルというヤツだな? きさま、エンターテイナーのりかいもあるんだね!」
うまく納得してくれたパピルスに笑いかけ、そばにいるフリスクに耳打ちする。
「何があるかわからないから、フリスクはここで待っててね」
「スフィアおねーちゃん、大丈夫?」
「うん、オーブはパピルスのほうにあるし……、それに……」
刻まれた足跡に視線を落とす。もしかしたら、壁に触れることなく突破できるかもしれない。けれど、これは直感に近い。
パピルスが用意したパズルと、この足跡にはなんの関係もないのかもしれない。それに、もしもパピルスがこの足跡を残していたのなら、うっかりさんにもほどがある。これは狡猾な罠で、足跡の通りに進んだらペナルティがあるのかも。
危険性が捨てきれない以上、むざむざとフリスクを行かせるわけにはいかない。安全な道を確保して、被害を食い止めないと。
恐る恐る、一歩を踏み出す。刻まれた足跡に、慎重に自分の靴底を重ねる。踏み固められた雪にそっと体重を乗せても、遠くのオーブは無反応だった。最初の一歩は、問題なく突破できたみたい。
つい緩みそうになる警戒心を引き締め、手より先に足を踏み出して、着実に進んでいく。
結果から言えば拍子抜けしそうなほど、楽に突破できてしまった。
「すごい! おのれ! ちょこざいなッ!」
パピルスからも、褒め言葉らしきものを賜った。
「こんなにあっさりクリアするとは!」
「いや、まあ……道標があったから……」
足跡には気付いていないのかもしれない。言っていいのか悩んでいると、間髪入れずパピルスが口を開く。
「まあよい! つぎのパズルはそうはいくまい! なにしろわが兄、サンズのさくひんだからな!」
パピルスが兄のことをどう思っているのかわかりそうな発言だった。でも、サンズのパズルが一体どんなものなのか、うまく想像ができない。思考を働かせていると、足下にちいさな衝撃がぶつかる。視線を落とすと、フリスクの頭頂部が目に飛び込んできた。私のすぐ後をついてきたみたい。
「おねーちゃん!」
「フリスク……、ひとりにしてごめんね。雪道は平気だった?」
私の謝罪を聞いて首を横に振ったフリスクは、問い掛けには元気よく頷いた。
「――きさまたち……」
和気藹々と会話を続けていると、私たちを凝視するパピルスの視線に遅れて気が付く。さっきも待ちくたびれたと怒っていたし、さすがに今回の件で気が変わってしまったかもしれない。
「ごめん、パピルス! えっと、パズルの話だったよね……?」
慌ててパピルスに向き直る。しかし彼は怒りが収まらないのか、身体の震えが止まらない。怒り心頭なのかもしれない。
もしも、パピルスがあのオーブを私たちのどちらかに押しつけた上で壁に触れてしまったら一巻の終わり。無傷ではいられない。どうしよう。最悪の事態に身体が竦む。指先は悴んで、まるで血潮が凍ってしまったかのよう。
オーブを押しつけられる前に拾って、遠くに投げる? でも、そんな時間的余裕はない。考える度に空回り。焦燥が胸を刺す。
「大丈夫だよ、おねーちゃん」
「……フリスク?」
はっとして声の主に視線を向ける。いつの間にか、視野が狭まっていたみたい。フリスクの小さな手は、私の手をしっかりと握っていた。伝わってくるささやかな熱が、向けられる微笑みが、言葉以上に私を落ち着かせてくれる。
そうだ。信じることにしたじゃないか。
ちいさなてのひらを握り返して、パピルスの言葉を待つ。
「――すっごくなかよしなんだね!」
パピルスが紡いだのは、身構えていた私からすれば肩透かしのようなセリフだった。腕を組んだパピルスは、しきりに頷く。
「そんなきさまたちも、わが兄サンズのパズルには、まちがいなく、とほうにくれる!」
楽しそうに、言葉はさらに続けられる。
「オレならまちがいなく、とほうにくれる! ニャハハハハ!」
パズルはあっさりと突破されたのに、パピルスは怒るどころかうれしそうだ。言いたいことを言って、彼は単身で先へと進んでいく。すっかり彼のペースに乗せられていた。
「スカーフ、返せなかったなあ。……ねえ、サンズ。これ、渡してもらえないかな?」
「オイラはパス。兄弟ならあんたが話してくれたほうが喜ぶぜ」
「うう……、あんまり先延ばしにしたくないんだけれど」
「ま、慌てなくてもすぐ会えるさ。……そうだろ?」
「? まあ、パピルスの口振りだとそうみたいだね」
「……うん。きっと、すぐ再会できるよ」
寒さのせいか、フリスクは口数が少ない。サンズのパーカーだけだとやっぱりこの気温の中を過ごすのは難しいのかも。
「ありがとな……。おかげで、あいつすごく楽しそうだ」
「あはは、うん、楽しそうなのはよくわかるよ……」
「パピルス、元気いっぱいだもんね」
「そうそう、パピルスが着てるコスチュームだけど……」
「うん?」
「2週間前のコスプレパーティ用に作ったんだ。それ以来、ずっとあれしか着てなくてさ……」
「2週間前……。それ、私はどんな気持ちで聞けばいい?」
「本人曰く『戦闘用ボディ』らしいんだけど」
「もしもーし、サンズさーん?」
「……笑えば、いいんじゃないかな……?」
「ええ……?」
フリスクにも匙を投げられて途方に暮れる。スケルトンの兄弟は非常にマイペースみたい。うん、よく似てる。
「ほんと……、パピルスってイケてるよな?」
「サンズって、弟さんのこと大好きなんだね」
サンズは否定も肯定もしなかったけれど。同意したらうれしそうに笑っていた。
そのままサンズとは別れてパピルスが去った方角へ。でも、既にパピルスの姿はなかった。
「それにしても、ここは広いねえ……。……あれ?」
初めて会うモンスターがそこに立っていた。垂れた耳の影響で顔がよく見えない。
「おっかしいなぁ……。なぁんで、ぜんぜん売れないかな。つめたぁいスイーツを食べるにはうってつけの気候なのに……」
なんだかおかしな発言が聞こえた気がする。たしかに暖房の効いた部屋で食べる冷たいスイーツは格別だけれど、この気候の中で防寒対策もなしに食べるのはつらいと思う。その点、スケルトンだったら、やっぱり寒さを感じないのかな?
「おッ! おきゃくさんだ!」
「わっ! こ、こんにちは!」
しょげていたように見えたそのモンスターは、明るく挨拶をしてくる。どんなモンスターだろう、と思って観察すると、そのひとはウサギによく似ていた。ニンゲンと違って、寒いところでも平気なのかもしれない。
「いらっしゃい! 「ナイスクリーム」おひとつ、いかが?」
「ナイスクリーム……?」
「そう、舌にヒンヤリ、ココロはホッコリ。おいしいフローズンスイーツだよ! いまだけ、たったの15G!」
「あ……、じゃあ買います」
「はい、どーぞ! ステキないちにちを!」
「ありがとうございます」
「しばらくここにいるから、宣伝してね!」
ナイスクリームを受け取ったけれど、さすがにいま食べるのはよそう。ゆきだるまとおなじスペースへ、大事に仕舞い込む。
もしかしたら、ゆきだるまはこのスイーツも知らないのかもしれない。見せたら喜んでくれるかな。そんなことを考えながら進んでいく。道の先には別れたサンズがいて、予期せぬ場所で再会が叶った。
「……あれっ、パズルはいいの?」
「用意は済んでるぜ」
「そうなんだ。じゃあ、ここでは……、えっと……、ナイスクリームを買いに?」
「いや。オイラもおやつビジネス始めてみたよ」
「……おやつビジネス?」
「「フライドスノー」。 5Gポッキリだ」
「ちょっと気になる名前だね、暖かそう。5Gならほしいかも」
「……ボクは遠慮しとくね」
「そう? じゃあおひとつくださいな」
けれど、サンズから返ってきたのは沈黙。
「え? サンズ? どうしたの?」
「オイラ 5Gっていった?」
「えっ、うん、言ってたよ」
「50Gの間違いだ」
「えっ、そこ間違える!? あー……でも手持ちがないや……。気になるけれど、商売なら仕方ないよね。今度、機会があったら買わせてもらうよ」
「ま、だよね。それでもまだ安すぎだ」
「値上がりの予定があるってこと?」
「さあ?」
「えー……?」
サンズの発言は気になったけれど、フリスクがあまり興味を示していないので私もあまり気にしないことにした。フリスクは商売に関して、意外と冷静な目を持っているのかもしれない。
私が子どもだったら、フライドスノーが気になりすぎて雪原を転げ回って駄々をこねていたに違いない。50Gは手が届かないほど高い値段設定じゃないのがまたずるい。私が大人で良かった。
胸を撫で下ろしながら突き進んでいくと、小屋が見えてきた。ワンボーを思い出して身体が硬直するけれど、どうやら留守らしい。安堵したついでに観察すると、向かって左側に(ダーリン)、反対側には(ハニー)の記載がある。パートナーなのかもしれない。いまはいないみたいだけれど、この先で出会う可能性もあるので、知らず緊張する。
ただ、不可思議なのが、小屋と小屋の間に立っている看板だ。サンズの言葉に従って読んだけれど、書かれている意味は正直よくわからなかった。わからないなりに、『始末』の文字が不安を増長させる。
「この……、ニオイのキケンレベルって……、なに……?」
脳裏に過るのは武器を持った大きなイヌのモンスターと、ワンボー。ふたりともイヌだったから、この小屋で警備を担当しているモンスターもイヌなのかもしれない。イヌの嗅覚がニンゲンよりもはるかに優れているのは有名な話だ。
そして、キケンレベルが『みどり』なのに赤文字で記されているのがまた頭を混乱させる。
「あ……、そういえば青攻撃の特訓が途中だった!」
ややこしい看板の内容には留意することにして。いまは、来る可能性の高い青攻撃への備えが必要だ。
「フリスク、続き、お願いしていい? その……パピルスに怒られない程度に……」
「うん、いいよ!」
こうして、私たちは広い雪原を舞台に青攻撃への特訓を再開したのである。
もう何度目になるかわからない青攻撃の特訓は、徐々に実を結びつつあった。よく考えたら、この地底に信号は見当たらないし。
「……フリスクはすごいね」
「そう?」
当の本人はわかっているのかいないのか、表情を変えずに短い言葉で応える。
「私ね、遺跡の中で諦めかけたんだ。……話し合いだけじゃ解決できないこともあるって。どんなに傷付けたくないって、戦いを止めようって訴えても、頑なな意志の前じゃ意味ないって」
トリエルの意志は固く、強く、どちらかが折れるまで決して終わらない戦いなんだと思い知らされた。
「でもね、フリスクは最後まで諦めなかった。強い決意を持って、立ち向かって、自分の意志を貫いた。……それ、簡単なことじゃないよ」
身体は小さい。けれど、それは志には関係がない。フリスクが秘めた覚悟と決意は強靱で、立派だった。
「私の旅の目的は、トリエルに話した通りだけれど。もしも、この渡し主が見つかっても、地上に行く方法は探さなきゃいけないし、まだ旅は続きそうだよね。思ってたより長い旅になるかも。……だから、頼もしいフリスクが一緒で良かった。ありがとう」
「……ううん、ボクのほうこそ。スフィアが一緒で心強いなって思ってる。ありがとう!」
「ふふ、お互いに支え合ってるならステキな関係だね?」
「うん!」
合間にスノーフルの名物らしいスノーボールゲームもしてみた。
コースは曲がりくねっていて、ゴールの穴まではそこそこ距離がある。途中には先程見た滑る氷も敷設されていて、中々に白熱する。旗の色にはバリエーションがあるみたい。フリスクと協力して雪玉をゴールに入れるのは大層盛り上がった。随分と凝った作りの遊びで恐れ入る。モンスターたちもよく遊んでいるのかな。オワライチョウとか、ヒョー坊とか。
風にはためく青い旗を見て、目まぐるしい出来事に想いを馳せた。危険もあったけれど、いまは好奇心が勝る。パピルスのパズルとか、まだ見ぬ地底の景色だとか。
「じゃあ、そろそろ行こう!」
フリスクが差し出した手は、ほんのりと熱を帯びて温かい。なんの根拠もないけれど、大丈夫と言ってもらえたような気がして、明るい気持ちで雪を踏みしめた。