ニンゲン夢主の名前
地底観光ツアー
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夜更けに駆ける人影の姿がある。月が照らし出したのは、昨日のパーティの主役であるフリスクだ。バリアが壊れた当日は、観光ツアーのほかに、外交目的のパーティも企画されていたのだ。
あちらこちらと引っ張りだこのフリスクだったが、いまなお続く喧騒から抜け出し、パーティ用の衣装から動きやすい格好に着替えて準備完了。パピルスが車を出してくれたので、地底の入口まで送ってもらい、あとは歩き慣れた地底の道程を駆け抜ける。
昨日、上の空だったのはミシェルだけではない。フリスクも、仕事がなければすぐにでも確認に走りたかったのだ。
とっくに深夜だったが、咎めるものはいない。保護者代わりのトリエルは既にお酒に酔って再起不能。介抱に巻き込まれ友達のことを思うと胸が痛むが、いまは優先すべき事項があった。
「……アズ! アズリエル!!」
フリスク、自分の考えを確認するように遺跡の扉を何度も叩く。
偶然、遺跡の中に入った子どもは、この中できっとアズリエルに会った。バリアが破壊されたあの日以降、一度も会うことのなかったアズリエル。短い間だけど、忘れない。忘れられない友達だ。
当初のフリスクはフラウィの居場所がわからず探し歩いた。最終的に遺跡にいることが判明して安心したが、彼はあまり地上に興味を示さない。人目につかない遺跡の奥に閉じこもって交流を拒み、煩わしげに息を吐く。しかし、たまに訪れるフリスクはバリアの消えた世界を見上げる彼の姿を度々目撃していた。腹の底を見透かさせないためなのかもしれないが、フラウィ自身、自分の変化に戸惑ってるように見えた。
フリスクが距離感を誤らなければ、フラウィは話し相手として許容してくれた。ガス抜きとしてたまに会いに行っては、他愛ない話を交わして去る。そんな月日を重ねて、フリスクは彼のことを慮り、遺跡を立ち入り禁止にすることを決めた。
けれど。本当は、フラウィにだって地上を見てほしかった。彼の親友が話しただろう地上の生活も。すこしずつ友好関係を築いているニンゲンとモンスターたちの営みも。叶うことなら、一緒に地上の生活を楽しんでほしかったのだ。
フラウィ自身も、地上への展望はあるはずだ。
だから、いつだって地底から空を見上げているんだ。
「……キミ、思いやりの心も忘れたの? いま何時だと思ってる?」
遺跡のドアの隙間から顔を覗かせたのは、アズリエルではなく、フラウィだった。
「フラウィ! ここに、女の子が来たよね」
「さあね。地上の賑わいがうるさいから寝てたよ。来客があったかどうかなんて知らないね」
「それに……、ここにアズリエルがいたんでしょ?」
「はあ? キミの目は節穴? 目の前にいるのが誰かわかってないの?」
「――その子がしてた包帯に、アズリエルの毛が挟まってたの」
「……あいつ…………」
悪態をつくフラウィは、諦めたように嘆息する。
「どうでもいいけどさ、中入ったら? キミに森の寒さはつらいんじゃない?」
「うん。お邪魔するね」
「どうぞ、ご自由に。……ま、キミは許可がなくてもいつも勝手に入ってくるけどね」
ホームの暖炉には、暖かな炎が生き生きとしていた。かつて住んでいたトリエルも、火の不始末はしない。タマシイを六つ吸収したフラウィなら、火の魔法も使っていたが、ここにいるのはそのフラウィではない。
アズゴアと、トリエルと、それからアズリエル。
フリスクが知る限り、火の魔法を使うのはその三人だ。見ていないだけで、グリルビーも、当時学生だったモンスターも使えるのかもしれないが。わざわざ立ち入り禁止の遺跡の中に入ってまで火の魔法を使うとは思い難い。つまり。
「これ、」
「……大体は、キミの考えてる通りさ」
「アズリエルが、いるの……?」
「いないよ。いまはね」
「……どういうこと?」
「聞きたいなら話してあげようか? ボクを地上に連れ出そうとしないって約束するならね」
フリスクは沈黙を返す。フリスクは、叶うことならフラウィとも地上に行きたいのだ。当のフラウィが断るから、その意思を尊重しているだけで。
フラウィはフリスクが約束を交わしたとしても、果たせないとわかっている。その上で持ちかけたのだ。悪辣ではあるが、身を守る術と思えば致し方ないと捉えられる。
「ちなみに……、ああ、これは気になったから聞くけど! そいつはあいつの話をしてたの?」
「あいつ?」
「……泣き虫のアズリエルの話だよ」
「――ううん。言わなかったよ。ちょっと……誘導尋問みたいなことには……なったけど……」
フラウィは軽蔑するような眼差しを向ける。フリスクは慣れたもので、涼しい顔で流した。
「それなら、あいつの落ち度だな」
「ね、フラウィ。質問に答えたから、さっきの話を聞かせてよ」
「オマエ、地上に戻ってから強かになったな」
「そうでもないよ」
「……ま、どうでもいいけどさ」
口ではそう言ったが、話してくれるらしい。
「ボクも仕掛けは知らないよ。ただ、バリアが壊された日になると、身体がアズリエルに戻るんだ」
暖炉の火は、都度表情を変える。そのせいで、橙色に照らされたフリスクの表情は、フラウィには読めなかった。
「あいつ、べつに忘れたわけじゃないよ」
記憶はそのままだとフラウィは語る。都合よく記憶喪失になってるわけではない、と。
「でもここから出ようとしないんだ。どういう意図なのかは知らないけど」
他人のような素振りでフラウィは話す。
「……言っておくけど、ボクがあいつになってるとき、身体の自由が効かないんだ。迷惑な話さ」
淡々と話すフラウィの言葉には、感情が宿っていなかった。
「日も跨いで、証明のしようもないから、信じなくても無理は――」
「ううん、信じる」
フリスクはフラウィを見据えて言い切る。いつか、地底を一日で踏破したときと同じように、純粋な眼差しが注がれていた。ひたむきな心根が視線に乗っているようだ。地上を見てきたわりに、かつてのままのようだ、とフラウィは錯覚に陥る。
「そ。物好きだね」
「よく言われる」
「よく言うよ」
他愛ない応酬は、互いの口許を緩めた。
「今日のところは帰るけど、また来るね」
「別に、オマエがどうなろうと構わないけど、地上の治安はどうなの? この時間に帰る気?」
「……泊めてって言ったら、泊めてくれるの?」
「いやだね」
「でしょ? 大丈夫だよ」
「ま、それならいいや。話したら疲れた。しばらく来ないでね」
ぴしゃりと言い放って、フラウィは地中に潜って姿を消す。それが別れの合図。フラウィ自身は否定するだろうが、心配してくれているのだ。
「いまは難しくても、いつか……」
胸の前で拳を握り、フリスクは決意を新たにして遺跡のドアをくぐる。後ろ手にドアを閉めると、思わず白い息が漏れた。森の空気は冷たいから、早々に抜けてしまわないと体温が奪われてしまう。
「……、サンズ?」
「よう。用 は済んだかい」
白い並木道に佇むのは、トリエルを介抱していた友達のひとりだ。返ってきた軽快な口調に、フリスクは相好を崩す。
「うん。いましがた」
「そんじゃ行くか」
「近道?」
「ああ」
「廃業したホテルのレストランまでお願いできる?」
フリスクが指定したのは、コアにも都にも繋がるエレベーターが残されている廃ホテルだ。そのレストランと言えば、かつてサンズに誘われて行った場所でもある。
「フリスクからメシの誘いは珍しいな」
「ふふ、実は無事にツアーが終わったらみんなで乾杯しようと思って。こっそり忍び込んでお酒持ち込んだんだ」
残念ながら、モンスターと人間の交流パーティの支度に時間を取られたので、乾杯する暇はなかった。今回を逃せば、次の機会がいつになるかはわからない。フリスクの生活の基盤は地上なのだ。
次への楽しみにとっておくのも悪くはないが、どうせなら、企画に携わったもの同士で労いたかった。
地底のモンスターたちとの交渉。ニンゲン側への影響も考えて参加人数を絞り、スケジュールの決定。リハーサルもしたし、モンスターたちの意向も汲んだ。大変だったが充実した日々が終わった寂しさと、蓄積した疲労を吹き飛ばすべく、密かに用意したお酒。それを、いま飲まずしてどうする。
「ワルガキめ」
「一杯付き合ってくれる?」
サンズが評した言葉を流し、意地悪な笑みを浮かべてフリスクは問いかけを口にする。もう子どもではない、という否定は飲み込んだ。サンズにとっては、いつまでも子どもに見えているのだろう。トリエルが、いつまでもフリスクをそう呼ぶように。こそばゆいが、悪い気はしない。
だが、否定こそ飲み込んだものの、大人だからこそ飲酒ができるというもの。かつて、子どもであったフリスクにはできなかったことだ。
バリアが壊れてからの日々には、ロードもリセットも存在しない。おかげでフリスクは成長し、ニンゲンとモンスターとの関係も日に日に進展している。良いところに目を向ければ、幸せはどこにでも転がっているのだ。
――いまは難しくても、いつか。いつかは、アズリエルにもフラウィにも、地上を満喫してほしい。
そのために、まずは地盤を固めなければ。モンスターとニンゲンが偏見なく手を取り合える、そんな居場所を築きたい。その中のどこかに、落ち着ける場所があってほしい。
フリスクは決心する。自分なりの方法で、彼らを連れていきたい、と。
「いいぜ。ケチャップもつけてくれるんならな」
「そう言うと思って用意してあるよ」
「そりゃどーも。ま、一杯だけだぜ?」
「充分」
どうやら、用意した酒は無駄にならずに済みそうだ。胸を撫で下ろしたフリスクはサンズの近道に身を委ねる。
酒の肴はいろいろありすぎて絞れない。だからまずは功労者である互いを労るところから始めよう。
あちらこちらと引っ張りだこのフリスクだったが、いまなお続く喧騒から抜け出し、パーティ用の衣装から動きやすい格好に着替えて準備完了。パピルスが車を出してくれたので、地底の入口まで送ってもらい、あとは歩き慣れた地底の道程を駆け抜ける。
昨日、上の空だったのはミシェルだけではない。フリスクも、仕事がなければすぐにでも確認に走りたかったのだ。
とっくに深夜だったが、咎めるものはいない。保護者代わりのトリエルは既にお酒に酔って再起不能。介抱に巻き込まれ友達のことを思うと胸が痛むが、いまは優先すべき事項があった。
「……アズ! アズリエル!!」
フリスク、自分の考えを確認するように遺跡の扉を何度も叩く。
偶然、遺跡の中に入った子どもは、この中できっとアズリエルに会った。バリアが破壊されたあの日以降、一度も会うことのなかったアズリエル。短い間だけど、忘れない。忘れられない友達だ。
当初のフリスクはフラウィの居場所がわからず探し歩いた。最終的に遺跡にいることが判明して安心したが、彼はあまり地上に興味を示さない。人目につかない遺跡の奥に閉じこもって交流を拒み、煩わしげに息を吐く。しかし、たまに訪れるフリスクはバリアの消えた世界を見上げる彼の姿を度々目撃していた。腹の底を見透かさせないためなのかもしれないが、フラウィ自身、自分の変化に戸惑ってるように見えた。
フリスクが距離感を誤らなければ、フラウィは話し相手として許容してくれた。ガス抜きとしてたまに会いに行っては、他愛ない話を交わして去る。そんな月日を重ねて、フリスクは彼のことを慮り、遺跡を立ち入り禁止にすることを決めた。
けれど。本当は、フラウィにだって地上を見てほしかった。彼の親友が話しただろう地上の生活も。すこしずつ友好関係を築いているニンゲンとモンスターたちの営みも。叶うことなら、一緒に地上の生活を楽しんでほしかったのだ。
フラウィ自身も、地上への展望はあるはずだ。
だから、いつだって地底から空を見上げているんだ。
「……キミ、思いやりの心も忘れたの? いま何時だと思ってる?」
遺跡のドアの隙間から顔を覗かせたのは、アズリエルではなく、フラウィだった。
「フラウィ! ここに、女の子が来たよね」
「さあね。地上の賑わいがうるさいから寝てたよ。来客があったかどうかなんて知らないね」
「それに……、ここにアズリエルがいたんでしょ?」
「はあ? キミの目は節穴? 目の前にいるのが誰かわかってないの?」
「――その子がしてた包帯に、アズリエルの毛が挟まってたの」
「……あいつ…………」
悪態をつくフラウィは、諦めたように嘆息する。
「どうでもいいけどさ、中入ったら? キミに森の寒さはつらいんじゃない?」
「うん。お邪魔するね」
「どうぞ、ご自由に。……ま、キミは許可がなくてもいつも勝手に入ってくるけどね」
ホームの暖炉には、暖かな炎が生き生きとしていた。かつて住んでいたトリエルも、火の不始末はしない。タマシイを六つ吸収したフラウィなら、火の魔法も使っていたが、ここにいるのはそのフラウィではない。
アズゴアと、トリエルと、それからアズリエル。
フリスクが知る限り、火の魔法を使うのはその三人だ。見ていないだけで、グリルビーも、当時学生だったモンスターも使えるのかもしれないが。わざわざ立ち入り禁止の遺跡の中に入ってまで火の魔法を使うとは思い難い。つまり。
「これ、」
「……大体は、キミの考えてる通りさ」
「アズリエルが、いるの……?」
「いないよ。いまはね」
「……どういうこと?」
「聞きたいなら話してあげようか? ボクを地上に連れ出そうとしないって約束するならね」
フリスクは沈黙を返す。フリスクは、叶うことならフラウィとも地上に行きたいのだ。当のフラウィが断るから、その意思を尊重しているだけで。
フラウィはフリスクが約束を交わしたとしても、果たせないとわかっている。その上で持ちかけたのだ。悪辣ではあるが、身を守る術と思えば致し方ないと捉えられる。
「ちなみに……、ああ、これは気になったから聞くけど! そいつはあいつの話をしてたの?」
「あいつ?」
「……泣き虫のアズリエルの話だよ」
「――ううん。言わなかったよ。ちょっと……誘導尋問みたいなことには……なったけど……」
フラウィは軽蔑するような眼差しを向ける。フリスクは慣れたもので、涼しい顔で流した。
「それなら、あいつの落ち度だな」
「ね、フラウィ。質問に答えたから、さっきの話を聞かせてよ」
「オマエ、地上に戻ってから強かになったな」
「そうでもないよ」
「……ま、どうでもいいけどさ」
口ではそう言ったが、話してくれるらしい。
「ボクも仕掛けは知らないよ。ただ、バリアが壊された日になると、身体がアズリエルに戻るんだ」
暖炉の火は、都度表情を変える。そのせいで、橙色に照らされたフリスクの表情は、フラウィには読めなかった。
「あいつ、べつに忘れたわけじゃないよ」
記憶はそのままだとフラウィは語る。都合よく記憶喪失になってるわけではない、と。
「でもここから出ようとしないんだ。どういう意図なのかは知らないけど」
他人のような素振りでフラウィは話す。
「……言っておくけど、ボクがあいつになってるとき、身体の自由が効かないんだ。迷惑な話さ」
淡々と話すフラウィの言葉には、感情が宿っていなかった。
「日も跨いで、証明のしようもないから、信じなくても無理は――」
「ううん、信じる」
フリスクはフラウィを見据えて言い切る。いつか、地底を一日で踏破したときと同じように、純粋な眼差しが注がれていた。ひたむきな心根が視線に乗っているようだ。地上を見てきたわりに、かつてのままのようだ、とフラウィは錯覚に陥る。
「そ。物好きだね」
「よく言われる」
「よく言うよ」
他愛ない応酬は、互いの口許を緩めた。
「今日のところは帰るけど、また来るね」
「別に、オマエがどうなろうと構わないけど、地上の治安はどうなの? この時間に帰る気?」
「……泊めてって言ったら、泊めてくれるの?」
「いやだね」
「でしょ? 大丈夫だよ」
「ま、それならいいや。話したら疲れた。しばらく来ないでね」
ぴしゃりと言い放って、フラウィは地中に潜って姿を消す。それが別れの合図。フラウィ自身は否定するだろうが、心配してくれているのだ。
「いまは難しくても、いつか……」
胸の前で拳を握り、フリスクは決意を新たにして遺跡のドアをくぐる。後ろ手にドアを閉めると、思わず白い息が漏れた。森の空気は冷たいから、早々に抜けてしまわないと体温が奪われてしまう。
「……、サンズ?」
「よう。
白い並木道に佇むのは、トリエルを介抱していた友達のひとりだ。返ってきた軽快な口調に、フリスクは相好を崩す。
「うん。いましがた」
「そんじゃ行くか」
「近道?」
「ああ」
「廃業したホテルのレストランまでお願いできる?」
フリスクが指定したのは、コアにも都にも繋がるエレベーターが残されている廃ホテルだ。そのレストランと言えば、かつてサンズに誘われて行った場所でもある。
「フリスクからメシの誘いは珍しいな」
「ふふ、実は無事にツアーが終わったらみんなで乾杯しようと思って。こっそり忍び込んでお酒持ち込んだんだ」
残念ながら、モンスターと人間の交流パーティの支度に時間を取られたので、乾杯する暇はなかった。今回を逃せば、次の機会がいつになるかはわからない。フリスクの生活の基盤は地上なのだ。
次への楽しみにとっておくのも悪くはないが、どうせなら、企画に携わったもの同士で労いたかった。
地底のモンスターたちとの交渉。ニンゲン側への影響も考えて参加人数を絞り、スケジュールの決定。リハーサルもしたし、モンスターたちの意向も汲んだ。大変だったが充実した日々が終わった寂しさと、蓄積した疲労を吹き飛ばすべく、密かに用意したお酒。それを、いま飲まずしてどうする。
「ワルガキめ」
「一杯付き合ってくれる?」
サンズが評した言葉を流し、意地悪な笑みを浮かべてフリスクは問いかけを口にする。もう子どもではない、という否定は飲み込んだ。サンズにとっては、いつまでも子どもに見えているのだろう。トリエルが、いつまでもフリスクをそう呼ぶように。こそばゆいが、悪い気はしない。
だが、否定こそ飲み込んだものの、大人だからこそ飲酒ができるというもの。かつて、子どもであったフリスクにはできなかったことだ。
バリアが壊れてからの日々には、ロードもリセットも存在しない。おかげでフリスクは成長し、ニンゲンとモンスターとの関係も日に日に進展している。良いところに目を向ければ、幸せはどこにでも転がっているのだ。
――いまは難しくても、いつか。いつかは、アズリエルにもフラウィにも、地上を満喫してほしい。
そのために、まずは地盤を固めなければ。モンスターとニンゲンが偏見なく手を取り合える、そんな居場所を築きたい。その中のどこかに、落ち着ける場所があってほしい。
フリスクは決心する。自分なりの方法で、彼らを連れていきたい、と。
「いいぜ。ケチャップもつけてくれるんならな」
「そう言うと思って用意してあるよ」
「そりゃどーも。ま、一杯だけだぜ?」
「充分」
どうやら、用意した酒は無駄にならずに済みそうだ。胸を撫で下ろしたフリスクはサンズの近道に身を委ねる。
酒の肴はいろいろありすぎて絞れない。だからまずは功労者である互いを労るところから始めよう。
