ある寒い朝のこと
「はい、ほのちゃん」
「…何よこれ」
ブラックコーヒーでも一気飲みしたかのような、とっても渋い表情で、ほのちゃんは僕を見た。うーん、どうしたのだろう?別にほのちゃんが嫌がるようなことはしていないはずなんだけど。だって僕が彼女に差し出したのはグレーのマフラー。小さくたんぽぽの刺繍までしてある、ほのちゃん専用、特別仕様だ。
そう、つまり僕はほのちゃんに対して、いま差し出しているそれをプレゼントしようという魂胆なのだ。彼女はそこそこ身体が弱く、よく風邪をひいては寝込むのだ(そういうときはもちろん僕が、プリントやその他諸々を届けている)。それに加えて最近は寒さが増しているから、きっと防寒具が必要だろう。そう考えた僕は、薄めのグレーの素敵なマフラーを買い、丹精込めてたんぽぽの刺繍を施したというわけである。
「貴方、熱でもあるのかしら。残念だけれど、私なんかにそんなものを渡されても、返せるものは何ひとつないわよ」
「そんなことは気にしなくていいのさ。僕が渡したいだけだからね。ほら、ここのたんぽぽの刺繍、頑張ったんだよ」
「…えっ、これって」
すこしだけ、ほのちゃんの目が驚いたように見開かれた。そう、僕は考えなしにたんぽぽの刺繍を施したわけではない。事前のリサーチはしっかりしていたのだ。…どういうことかというと、ほのちゃんの持っているスマホのケースには、たんぽぽのイラストが描かれている。それをあらかじめ知っていたから、ほのちゃんの好きな花はたんぽぽなのだと分かり、マフラーにその刺繍をすることができたのだ。我ながらよくぞ考えたものだと少し自負しているよ。
「私のスマホケース、見てたのね。…とても素敵な蚤取り眼をお持ちで」
「あれっ、これ、褒められてるのかい?嬉しいなあ」
そんなわけがないでしょう。そんな言葉とともに、ぺしっと通学鞄でお腹辺りをはたかれてしまった。いててて…今日も少し調子に乗りすぎたかな。僕はほんのちょっぴり、ちょーっぴりだけ反省しながら、すたすたと前を歩くほのちゃんに追いつくために、いつもより少しだけ早足で歩みをすすめた。
「…ありがと」
消え入りそうな声だった。風でも吹いていたら、吹き飛ばされていってしまいそうなくらいの儚い声。だけど、それは再び僕を調子に乗らせるには充分すぎる台詞で。
「こちらこそ。僕の愛のプレゼント、君が受け取ってくれて本当に嬉しいよ。僕達って両思いだったんだね?」
本日二度目の鞄アタックを受けることになったのは、たぶん仕方のないことだったんだろうなと思う。
ちなみに、二度目だからなのか、かなり痛かった。いやあ、反省、反省。
「…何よこれ」
ブラックコーヒーでも一気飲みしたかのような、とっても渋い表情で、ほのちゃんは僕を見た。うーん、どうしたのだろう?別にほのちゃんが嫌がるようなことはしていないはずなんだけど。だって僕が彼女に差し出したのはグレーのマフラー。小さくたんぽぽの刺繍までしてある、ほのちゃん専用、特別仕様だ。
そう、つまり僕はほのちゃんに対して、いま差し出しているそれをプレゼントしようという魂胆なのだ。彼女はそこそこ身体が弱く、よく風邪をひいては寝込むのだ(そういうときはもちろん僕が、プリントやその他諸々を届けている)。それに加えて最近は寒さが増しているから、きっと防寒具が必要だろう。そう考えた僕は、薄めのグレーの素敵なマフラーを買い、丹精込めてたんぽぽの刺繍を施したというわけである。
「貴方、熱でもあるのかしら。残念だけれど、私なんかにそんなものを渡されても、返せるものは何ひとつないわよ」
「そんなことは気にしなくていいのさ。僕が渡したいだけだからね。ほら、ここのたんぽぽの刺繍、頑張ったんだよ」
「…えっ、これって」
すこしだけ、ほのちゃんの目が驚いたように見開かれた。そう、僕は考えなしにたんぽぽの刺繍を施したわけではない。事前のリサーチはしっかりしていたのだ。…どういうことかというと、ほのちゃんの持っているスマホのケースには、たんぽぽのイラストが描かれている。それをあらかじめ知っていたから、ほのちゃんの好きな花はたんぽぽなのだと分かり、マフラーにその刺繍をすることができたのだ。我ながらよくぞ考えたものだと少し自負しているよ。
「私のスマホケース、見てたのね。…とても素敵な蚤取り眼をお持ちで」
「あれっ、これ、褒められてるのかい?嬉しいなあ」
そんなわけがないでしょう。そんな言葉とともに、ぺしっと通学鞄でお腹辺りをはたかれてしまった。いててて…今日も少し調子に乗りすぎたかな。僕はほんのちょっぴり、ちょーっぴりだけ反省しながら、すたすたと前を歩くほのちゃんに追いつくために、いつもより少しだけ早足で歩みをすすめた。
「…ありがと」
消え入りそうな声だった。風でも吹いていたら、吹き飛ばされていってしまいそうなくらいの儚い声。だけど、それは再び僕を調子に乗らせるには充分すぎる台詞で。
「こちらこそ。僕の愛のプレゼント、君が受け取ってくれて本当に嬉しいよ。僕達って両思いだったんだね?」
本日二度目の鞄アタックを受けることになったのは、たぶん仕方のないことだったんだろうなと思う。
ちなみに、二度目だからなのか、かなり痛かった。いやあ、反省、反省。
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