ちょっとだけ、ひとやすみ。

「ねえ、君。」と、まるっきりいつものような調子を装って、僕は声をかけた。虚勢で包み隠したこの言葉の真意を、今にも汲み取られてしまいそうで怖かった。
いままで僕はいろいろな人と話してきたけれど、ここまで緊張してしまうのは初めてかもしれない。…いや、どうだったかな。
苦しいほど鮮明に目に映る君を見ていると、どうしてか涙が出てきそうで、きゅっと唇を噛んだ。笑顔を作った。
「良ければお茶でもしないかい?もちろんお金は僕に出させて…」「結構よ」僕よりずっと高くて甘い声で、驚くほど鋭く僕の言葉を遮られた。
あのね、とため息をつきながら、君は言った。「私は貴方に興味がないのよ。だから、私に構うのは時間の無駄。それってお互いのためにならないわ。どこかへ行って頂戴」
「僕は君に興味があるのさ」僕は食い下がってみる。「だって君は、美しいからね」きっとどこかで、君が僕を受け入れてくれることを期待していたのだろう。そんなはずはないのに。
「貴方ってば、人を見る目がないのね」呆れ返った顔を見せた君は、僕ではなく遠くの景色に視線を向けた。そして、すたすたと歩き出した。「どこへ行くんだい」僕は後ろについて歩いた。
君は僕の問いには応えず、遠くを見たまま「私に本当に興味があるのならば、私の興味を引きつけることね」と、蚊の鳴くような小さな声でそれだけ言って、去っていった。
どうしてか僕は、その場からしばらく動けなかった。
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