波乱の幕開け
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殺風景な部屋。石造りの冷たい壁。ランプの明かりを消し、窓から入る月花のみが光源となった部屋は寂しさを増していた。部屋の主である青年は、団服のまま寝台にごろりと横になり、静かに目を閉じていた。
肩につくかつかないか位の少し長めの艶やかな白銀の髪。陶器のように滑らかで雪のように白い白磁の肌。形のよい薄桃色の唇。均整のとれた、だが男にしては華奢でほっそりとした肢体。きらりと月明かりに煌めく白銀は、光の角度によって桜色に見える。
中性的な美貌は、天使のようだと評されるほど整いすぎるほどに整っていた。………そう。中身が如何に傲岸不遜唯我独尊、何様俺様レイ様であっても、何度でも騙されるくらいレイは本当に美しいのだ。
「……………………五月蠅い」
たとえ、その可愛らしい薄桃の唇から零れ落ちる言葉が、博識すぎるほどの豊富な知識、明晰な頭脳、ボキャブラリーを駆使した罵詈雑言であったとしても。頭脳明晰、所作の端々さえも絵になるほど優雅で、懐にいれたものにだけ甘い、そんな性格を知ってしまうと途端にその憎まれ口さえも可愛らしく見えて離れられなくなる。そんな魅力があった。
話は戻るが、レイは憂いげに目を細め、ゆっくりと起き上がると、そっと窓へと歩み寄る。白銀の髪に桜の瞳の絶世の美人は窓から眼下に広がる景色を見下ろし、疲れたように目を細めた。
「なるほど、騒がしいわけだ」
眼下には神田が門の上にいる姿が見受けられる。門の下には15,6の子供らしき姿。AKUMAがァア!!とぎゃんぎゃん騒ぐ門番。あまりの騒がしさにうんざりしたように頭を振る。飛び下りる姿に目を細め、ため息をつくとレイは姿を消した。
ガンッ
「騒ぐな喧しい…」
レイは神田とアレンの間に滑り込むと、足で六幻をとめた。一瞬にして間合いに入り込まれた二人は大きく目を見開く。
「邪魔すんじゃねぇ!どけ!!」
「……――誰に向かって刃を向けているんだ“六幻”」
レイの瞳が紅に光る
発動が強制的に解かれ、その刃先は持ち主の意思とは無関係にレイからそらされた
甘く柔らかな、だが抗い難い絶対的な支配力を持った声
レイはひとつため息をつくとアレンを一瞥した。呆然とレイを見つめていたアレンはびくりと肩を跳ね上げる。
「――…貴様」
「は、はいっ!!////」
顔が赤いのは何故だろうか。と一瞬頭をよぎるがどうでもいいかと頭のなかで疑問を一蹴し、レイは続けた。
「入団を示す紹介状はあるか?」
「!あります!あのっクロス元帥からの紹介状があるはずです!!コムイってひと宛に!!」
「「「……………………」」」
「………ほぅ」
「そこの君!僕の机調べ「無論、自分の後始末は自分でつけるんだろうな?」……はい(泣)」
レイの美しい顔がひくりとひきつり、声が冷たくなる。ため息をつき視線を巡らせると、未だイラついているようすの神田に困ったように眉根をよせた。
「そう怒るな。…機嫌を直せ」
「うるせぇ(怒)」
「後で鍛練に付き合ってやろう。そこで好きなだけ発散してくれ」
「ふん…」
くるりと振り返りアレンに目をやる。アレンは相変わらずレイに見とれていたが、つかつかとより近くまで歩み寄られると焦ったようにより真っ赤になった。レイは気にせず、頬に手を伸ばして砂埃を払ってやる。
「仲間がすまない。大事ないか?」
「え、ぅあ…はい…////(ほ…本当に…綺麗な方だ…////)」
レイはアレンの左手にそっと白魚のようなその手を重ねた。リィンとどこか遠くで鈴の音のような音が聞こえ、ハッとすると発動が解けていた。
(対AKUMA武器の発動が…!?)
「(イノセンスだな。傷は中々…まぁコムイがいるからいいか)こいつを切ることは俺が許さん。こいつはエクソシストだ。武器の声がする。…いいな」
「っち…」
「っ!?」
神田にぐいっと手を引かれ、片腕で抱きすくめられる。発動が解けようが、相変わらず六幻の刃は白髪の少年に向けたままだ。
「何をする。離せ」
「うるせぇ」
「何がうるせぇ、だ。この俺が命じているんだ。"離せ"」
否応なく拘束していた腕が解かれる。レイはするりと抜け出すと、はぁ…と特大のため息をついた。すぅ、と息を吸うと滔々と一息に話始めた。
「この俺がAKUMAでは無いと言ったんだ。人の話を少しは素直に聞けんのかこの唐変木。それから庇うのは勝手だが己の馬鹿力を考えろ。折れる。痛い。人を気遣う心を少しは覚えたらどうだこの甲斐性無し男。いや、そもそも庇って貰う必要なんざ1ミクロンたりともないわけだが。この点に関しては謝らんしとことん言わせてもらうぞ」
ぽかーんとするアレン。それどころじゃないんだよレイさぁぁんとさめざめ涙を流す門番。むすっとして面白くなさそうな顔で大人しく話を聞いている神田。余程痛かったらしく細い腕を擦りながら、米神に青筋をたててくどくど説教を垂れるレイ。
カオスである。
まぁ今回悪いのは言うことを聞かなかった神田なので、神田自身自業自得なのだが。因みに見守っていた科学班のメンバーもいつものことだと止めるものはいない。
〈か、開もーん!!!〉
そうこうしているうちに響いた門番の声に、レイは小さく舌打ちする。そんなレイにそっと近づく影が…
ぱこっ
「おしまいっ」
レイの頭に振り下ろされたボードを、神田の手が受け止める。リナリーは気にした様子もなく、ぐいぐいとレイの手を引く。
「もう!早く行かないと閉まっちゃうわよ。あと、神田。レイを独占するの禁止!」
「チッ」
神田は仏頂面で眉間に皺を寄せたままそっぽを向く。三人はリナリーに促されるままに教団の中へと入った。レイは手を繋いでぐいぐい引っ張って歩くリナリーの頭を優しく撫でると、やんわりとその手を離した。
「リナリー、俺はユウと鍛練に行く。後で茶でも一緒しようか。…貴様、名は」
「あ、アレン・ウォーカーです!」
「アレン…ふん。覚えておく。俺は白桜レイ、日本人だ。レイでいい。」
すっと差し出されたたおやかな手を凝視する。おずおずとその手を取って握手すると、天使のような、しかし不遜な表情ゆえに少し冷たく感じられたその面差しが、ふにゃんと笑顔を浮かべた。
「∞¥@〒◇*#???!!!/////」
アレンは声にならない声をあげて赤面し悶えた。それをキョトンとした顔で見つめると、レイはリナリーに軽く手をふってその場を離れる。「お茶するの楽しみに待ってるからねー」との声に小さく笑みがこぼれる。
向かう先は、数歩離れた神田のもと。
「先はありがとう。礼を言う」
「………なんのことだかな」
ボードから庇ってくれたことへの礼に、そっけなく返す神田。レイもなれた様子でそれ以上踏み込むことはない。
と、歩き出した二人に……正確には神田に声をかけるものがいた。アレンだ。
「あ、神田」
「あ゙??」
「…って名前でしたよね…?よろしく…」
「呪われてるやつと握手なんかするかよ」
冷たくバッサリとそう斬り捨て、神田はさっさと歩いていく。そのとなりを歩きながら、レイはぼそっと呟いた。
「俺はつい先程あれと握手をしたわけだが。お前の理論でいくと俺とも今後接触を絶つわけか」
「っ!?」
ばっと神田は己より少し目線がしたにある幼馴染を見た。レイは隣の素っ気なく見えるが実は過保護すぎる程過保護な幼馴染をちらと一瞥する。
「あの態度は人としてダメだ」
「……………………」
「生理的に仲良くなれないのなら近寄らないようにしろ。任務で一緒になるのは仕方ないから大人になれ。好きになれとも、嫌いになれとも言わん。だが、あの態度は子供でも分かる。ダメだ」
「……………………………………あぁ」
素直に返事をした神田に、満足そうにレイは鼻を鳴らし、連れだって修練場へと歩いていった。
因みに、アレンはレイに対する愛が振りきれてヤンデレ気味の変態紳士SECOMと化してしまうのだが、それはまた別の話。